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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2011年10月31日 (月)

天皇賞・秋はトーセンジョーダン

レース前半、かなりのペースでレースが展開していることは分かりましたが、1000m通過が「56秒5」とターフビジョンに表示されると場内がドッと湧きました。逃げたシルポートが残り300mで馬群に飲み込まれたあともペースは落ちることなく、馬場中央を突き抜けた△トーセンジョーダン(7番人気)が1分56秒1の日本レコードで快勝しました。
http://www.youtube.com/watch?v=wbCnkopLCkk

1800mの通過1分44秒3は、同距離のコースレコード(1分44秒2=チョウサン)と0秒1しか違いません。2000mの旧レコード(1分57秒2=ウオッカ)が樹立された3年前の当レースは、この距離を1分44秒6で通過したものの、最後の1ハロンで12秒6とラップを落としました。今回は11秒8で締めくくったので大レコードとなりました。

◎ペルーサ(6番人気)は好スタートを決め、後方で折り合いがつきました。個人的には超ハイペースの展開に内心しめしめ……という気分で、直線で大外に持ち出したときには差し切れると思いましたが、惜しくも届かず3着。思いのほか前がしぶとかったですね。

『netkeiba.ocm』の「No.1予想」、『ウマニティ』に提供した予想は△○◎で3連単21万4010円的中。連単系マルチに買い目を設定していたので高配当が的中しました。予想文を転載します。

「◎ペルーサは『ゼンノロブロイ×キャンディストライプス』という組み合わせで、母アルゼンチンスターの全姉に亜チャンピオン牝馬で米G1も制したディフェレントがいる良血。昨年5月の青葉賞(G2)を勝った際は、いずれ日本を背負って立つ名馬になるだろうとの期待感があったが、それを最後に勝ち星がなく現在7連敗中。しかし、たそがれたイメージとは裏腹に今回の休養中にガラリ一変。稽古で抜群の時計を連発している。思えば父ゼンノロブロイも4歳秋に一変し、天皇賞・秋→ジャパンC→有馬記念とG1を3連勝した。ここにきての急上昇は父の軌跡と重なって見える。ゼンノロブロイ産駒は東京芝2000mで連対率48%(23戦11連対)と驚異的な成績を挙げており、ペルーサ自身、昨年の天皇賞・秋でブエナビスタの2着と好走している。この条件はベストに近く、休み明けだからこそ配当面の妙味もある。」

馬体重はプラス14キロ(520キロ)。太いというよりも筋肉の盛り上がりが目立ち、明らかにスケールアップしていました。反動が出なければジャパンCでも勝ち負けに持ち込めそうです。

2着○ダーウシャドウ(2番人気)は直線半ばで前が開かず、外側に進路を変えた不利が痛かったですね。あれがなければ……と惜しまれます。大阪杯でG1馬に伍して2着、前走の毎日王冠では安田記念馬リアルインパクトに先着しているのですから、今回のメンバーに交じっても格下ということはありません。ゴール前の追い比べでは、尾を振って内にモタれ、苦しがっていました。最後の一滴までガソリンを使い切ったような走りだったので、反動がやや心配です。

勝ったトーセンジョーダンはジャングルポケット産駒。スパッと切れるタイプではないだけに瞬発力勝負になるとやや劣勢では、という気がしていました。スピードの持続力が要求される超ハイペースになったことが幸いしました。とはいえ、トップレベルのG1をレコードで制したわけですから、もちろん展開が向いたことだけが勝因ではありません。この馬自身、厳しい流れを追走しながら上がり3ハロンはメンバー中2位の34秒2。地力強化は明らかです。晩成型の血がようやく開花してきたのでしょう。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006103169/

当ブログで再三示しているとおり、配合構成は2年前の天皇賞・秋、マイルCSを制したカンパニーに酷似しています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2001103435/

            ┌ トニービン
          ┌○┤ ┌ Nureyev(≒Sadler's Wells)
トーセンジョーダン ┤ └○┘
          └ エヴリウィスパー(=ブリリアントベリー)

            ┌ トニービン
          ┌○┤ ┌ Sadler's Wells(≒Nureyev)
カンパニー ――――┤ └○┘
          └ ブリリアントベリー(=エヴリウィスパー)

カンパニーは長らくG2大将というポジションでしたが、8歳にして本格化し、G1を勝ちました。配合がよく似たトーセンジョーダンもこれから旬を迎えるのではないでしょうか。フロックではないでしょう。

両馬の2代母クラフティワイフの牝系は、トニービン系と絶好の相性を示しており、トーセンジョーダンとカンパニーのほかにも、レニングラード、バトルバニヤンといった活躍馬が出ています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1999107047/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2004102878/

          ┌ トニービン
レニングラード ――┤
          └ ブリリアントベリー(=エヴリウィスパー)

            ┌ トニービン
          ┌○┘
バトルバニヤン ――┤
          └ クラフティワイフ

非常に分かりやすいニックスなので、トーセンジョーダンは以前POGで指名していました。個人的にも思い入れのある馬です。この秋、ジャングルポケット産駒はアヴェンチュラ(秋華賞)に次いで2頭目のG1制覇となりました。

もともとトニービンとノーザンテーストの組み合わせは東京コースのG1に強く、90年代にはサクラチトセオーとエアグルーヴが天皇賞・秋を勝っています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1990108898/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1993109154/

          ┌ トニービン
サクラチトセオー ―┤ ┌ ノーザンテースト
          └○┘

          ┌ トニービン
エアグルーヴ ―――┤ ┌ ノーザンテースト
          └○┘

これらに加え、トーセンジョーダン、カンパニーを含めてあらためて思うのは、“Hyperion の勝利”である、ということ。トニービンもノーザンテーストも Hyperion が主要な構成要素です。府中の長い直線で底力勝負になったとき、この血は頼りになります。Hyperion については以下のエントリーご参照ください。

★Hyperion 没後50年(前)
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/12/hyperion-a60d.html
★Hyperion 没後50年(後)
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/12/hyperion-4e5d.html
★Hyperion とウォルター・オルストン(1)
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/12/hyperion-7206.html
★Hyperion とウォルター・オルストン(2)
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/12/hyperion-5de0.html
★Hyperion とウォルター・オルストン(3)
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/12/hyperion-58a6.html

周知のとおり、トーセンジョーダンがここに至るまでの道のりは決して平坦なものではありませんでした。裂蹄により二度の長期休養を余儀なくされ、クラシックも棒に振りました。ここまでよく這い上がったものです。サンデーサイレンスを含まない血統なのでいずれ種牡馬となったときに重宝されるでしょう。

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天皇賞・秋はトーセンジョーダンを参照しているブログ:

コメント

三連単的中おめでとうございます!
私は下見を観て、トーセンジョーダンいいなぁと思ったので、この馬からワイドで買ってました♪
エイシンフラッシュも良く見えたのですが、ペースが早かったのでしょうね。

天皇賞は速いタイムでしたね。確かに凄いレコードなんですが、近年の馬場は高速化しすぎな印象を受けてしまいました。最近は条件戦でも凄いタイムが出ていて、自分が競馬を見始めた時は上がり33秒代は滅多に出なくて、良い意味での驚きがあったんですか、最近は当たり前のように出ていて逆に驚いてしまいます。
個人的には馬のレベルが劇的に上がったと思えないですし、馬場が高速化しているのは明らかです。速い馬場自体は日本競馬の特徴なので欧州化して欲しいといった考えは全くありませんが、余りに高速化すると馬の「底力」が見えにくい部分もありますし、そういった優れた特徴を持った種牡馬が軽視されやすい状況が作られ易い気がします。個人的には90年代くらいの馬場で見たいんですよね。
栗山さんは馬場の高速化についてどうお考えですか?聞いてみたいです。

栗山先生こんばんは

天皇賞・秋はトーセンジョーダンとペルーサは予想できたのですが、ダークシャドウは前走のタイムがあまり良くなかったので、予想していませんでした。

ローズキングダムは、やはり力不足なんでしょうか?

このレースの結果、4歳世代が最強世代という声も消えてしまうのでしょうかね。

>キングトップラン様

ありがとうございます。そしておめでとうございます。トーセンジョーダンがらみの馬券はワイドも結構つきましたね。エイシンフラッシュ、わたしは無印だったのですが強いレースぶりでした。もう少しペースが遅かったら突き抜けていたかもしれません。

>ユウ様

以前、これに関するエントリーを2回ほど書いたことがあります。

「馬の故障と高速馬場」
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/06/post-bef1.html
「サラブレッドの多様性は馬場の多様性から生まれる」
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2011/06/post-f8d0.html

日本は高温多湿で洋芝が根付きにくく、しかし開催日数が多いため馬場の耐久力が必要で、その上で出来るかぎり故障を少なくするという、それぞれ矛盾する難問を同時に解決する方策を、馬場造園課の方々は日々研究していらっしゃるのだと思います。もちろんお察しだとは思いますが、より速い馬場を作ってやろう、などと考えているわけでは決してありません。これについては上記のリンクをご参照ください。

耐久力があって故障しづらい馬場、というものを目指した結果、いわゆる高速馬場というものが生まれ、日本の風土では現状それがベストの選択であるとするなら、それはそれでいいのではないかというのが私のスタンスです。ダートのように砂を厚くすれば時計が遅くなる、という単純な問題であれば話は簡単なのですが。1999年頃は現在よりも1.7~1.8倍ほど故障が多かったようです。

>ディープエックス様

こんにちは。惜しい馬券でしたね。今回のローズキングダムはハイペースに巻き込まれたことが第一の敗因ではないでしょうか。それより前の位置取りだったエイシンフラッシュに先着を許しているのは不満ですが、もう少し遅いペースなら上位争いをしていたと思います。ジャパンCで人気急落なら狙っておもしろいと思いますよ。相対的に4歳世代が高い実力を備え、厚い層を誇るのは間違いないと思います。

馬場と多様性について私もひと言。中京競馬場で今、長い直線で坂のあるコースを作っているそうです。
全ての馬に不利がないコースでレースをするのは勿論大事ですが、血統を含めより集約化しそうで怖く感じてしまいます。
一方的かもしれませんが、ダッシュ力やコーナリングの上手さも優れた能力のひとつと考えれば、特定の馬に有利不利が生じるコースもまた良い意味で競馬の多様性ではないんじゃないかな~と思いました。

秋の天皇賞の楽しみは、マイラー路線組とチャンピオン路線組との激突だと思います。私はダイタクヘリオス以来マイラー組に賭けています。サクラチトセオー、アグネスデジタルなどが勝ってくれましたが、一番想い出に残っているのは、ヤマニンゼファーです。前年のヘリオスで残り200mまで夢を見ました。ヤマニンゼファーは父ニホンピロウイナーが成し遂げられなかったマイラーによる天皇賞秋制覇を達成してくれるはずと期待していました。前日、場外で単勝馬券を買い、翌朝目覚めた時に、ますます絶対に勝つという気がして、場外に単勝を買い足しに行きました。こんなことは後にも先にもありません。結果はハナ差の勝利で、本当にうれしかったことを今でも覚えています。今は距離別のレース体系が確立され、マイラーでもそれなりの評価を得ていますが、当時マイラーこそ最強と考えていた私は、本当に溜飲を下げる思いでした。今でも秋天が来るたびに当時のことを思い出します。

>うまポーロ様

わたしもまったく同感です。中京競馬場は全10場のなかで1番人気の勝率が最も低く、荒れる競馬場として知られていました。周知のとおり小回りコースで先行争いが激しく、ペースひとつで着順がガラリと入れ替わるスリリングな競馬が魅力でした。競馬場が新しくなるのは歓迎ですが、こういった特徴まで変わってしまうのはやや淋しさを感じますね。平坦小回り向きの血統は得意分野が削られるわけですから影響大です。

>へろへろへりおす様

あの天皇賞はヤマニンゼファーにとって初距離ということで人気を下げていましたが、わたしも買っていました(連複の軸でした)。配合的に大好きな馬でしたね。その6年前に、やはり同じマイラーのニッポーテイオーが2200mの宝塚記念で名中距離馬スズパレードに敗れたものの、2000mの天皇賞・秋では圧勝しました。強いマイラーであれば2000mはなんとかなるという思いがありました。セキテイリュウオーとの叩き合いは、99年のスペシャルウィークの追い込みとともに、90年代の天皇賞・秋では最も強く印象に残っています。素晴らしいレースでした。

こんにちは。栗山さん。クラフティワイフの血統は勝ち上がり率が高いのは、血統的な要因あるんでしょうか?

ついでにこの母父のクラフティプロスペクターってのは早熟の割に、古馬になっても維持できるように思えるのですが、これもこのボトムラインの特徴の1つですよね?
ってことはクラフティプロスペクターがこの血統の鍵なんでしょうか?

こんにちは。クラフティワイフの系統は非常に優秀ですね。これが単純に勝ち上がり率の高さにつながっているのではないでしょうか。基本的に Mr.Prospector と Secretariat は相性がよく、現代の名馬にも頻繁にこの組み合わせが現れます。Crafty Prospector と Secretariat の組み合わせも、日本における Crafty Prospector の代表産駒であるアグネスデジタルやトキオクラフティーなどに見られますし、さらに La Troienne 牝系の Buckpasser が入るので、血統的には非の打ちどころがないと思います。

この牝系に備わった成長力は、主にノーザンテーストが原動力となっているのではないか、という気がします。もっとも、それについては証明する術がないので、わたしの個人的な推理と仮説でしかないのですが……。

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競馬王 2011年11月号
『競馬王11月号』の特集は「この秋、WIN5を複数回当てる」。開始から既にWIN5を3回的中させている松代和也氏の「少点数に絞る極意」、Mr. WIN5の伊吹雅也氏が、気になる疑問を最強データとともに解析する「WIN5 今秋の狙い方」、穴馬選定に困った時のリーサルウェポン、棟広良隆氏&六本木一彦氏の「WIN5は『穴馬名鑑』に乗れ!」、オッズから勝ち馬を導き出す柏手重宝氏の「1億の波動(ワオ!)」、亀谷敬正氏&藤代三郎氏が上位人気の取捨を極める「迷い続ける馬券術」、夏競馬期間中WIN5を6戦3勝している秘訣を探る「赤木一騎の次なる作戦」など、この秋、一度ならず二度、三度とWIN5を的中させるための術が凝縮されています!! また「大穴の騎手心理」では、世界を股にかけるトップジョッキー・蛯名正義騎手をゲストにお迎えしました。その他、今井雅宏氏の「新指数・ハイラップ指数大解剖」や、久保和功氏の「京大式・推定3ハロン」など、盛り沢山の内容となっています!!