ダービーダン方式の至宝 Dynaformer(7)
ダービーダン方式で誕生した名牝 Memories of Silver は、ビヴァリーD.S(米G1・芝9.5f)、クイーンエリザベス二世チャレンジCS(米G1・芝9f)など7つの重賞を制覇。後者で樹立した1分45秒80というステークスレコードは現在も破られていません。
繁殖牝馬としても非凡な才能を示し、娘の Winter Memories(父 El Prado)は現在、アメリカの牝馬芝戦線で注目を集める存在となっています。芦毛がトレードマークの同馬はダービーダンファームの生産馬(正確にはフィリップスレーシングパートナーシップ)。2歳時の昨年はBCジュヴェナイルフィリーズターフ(G1)で2着と敗れたものの、今年に入ってからアパラチアンS(G3)、サンズポイントS(G2)、レイクジョージS(G2)と重賞3連勝。
http://www.pedigreequery.com/winter+memories
7月27日、ニューヨーク州のサラトガ競馬場で行われたレイクジョージS(米G2・芝8.5f)は、後方から大外を進出して直線で突き抜けるというモノが違うレースぶりで、まるで Zenyatta のようでした。偶然ですが両馬とも母に Roberto と Ribot の組み合わせがあります。
http://www.youtube.com/watch?v=poZrlkBK0hs
通算成績は7戦5勝。圧倒的な1番人気に推された前走のレイクプラシッドS(G2)は、内に押し込められる窮屈なレースを強いられ、しかも外に出そうとするときに進路をカットされるなど、スムーズな競馬ができず4着に敗れました。これは参考外の1戦なので、次走は巻き返してくるものと思われます。
順調に行けば、秋はキーンランドのクイーンエリザベス二世チャレンジCS(米G1・芝9f)を経てチャーチルダウンズのBCフィリー&メアターフ(米G1・芝11f)でしょうか。
クイーンエリザベス二世チャレンジCSは、ダービーダンファーム生産馬やダービーダン血統ときわめて相性がよく、84年のレース創設以来、計10頭が勝っています。先に記したとおり Winter Memories の母 Memories of Silver は96年にステークスレコードで優勝しました。
87年 Graceful Darby ★
88年 Love You By Heart ★
90年 Plenty of Grace ★
93年 Tribulation ★
96年 Memories of Silver ★
97年 Ryafan ☆
00年 Collect the Cash ◆
02年 Riskaverse ◆
03年 Film Maker ◆
10年 Harmonious ◆
★…ダービーダン生産馬
☆…ダービーダン血統
◆…Dynaformer 産駒
Winter Memories はダービーダンファームの生産馬ですから、このレースと相性がいいはずです。
もし仮に、続くBCフィリー&メアターフに Blue Bunting(英1000ギニー、愛オークス、ヨークシャーオークス)が出てくれば、ダービーダン血統同士の決戦となります。連載の冒頭に記したように、欧州3歳最強牝馬の Blue Bunting は Dynaformer を父に持ちます。Winter Memories よりも力は相当上でしょう。ただ、Winter Memories は成長力と底力に秀でた血統で、地元の利もあります。一発があっても不思議はありません。もし対決が実現するならば、個人的に今年のブリーダーズCのなかで最も楽しみなレースとなります。(この項終わり)
http://www.pedigreequery.com/blue+bunting
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血 統 屋 http://www.miesque.com/
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度々お邪魔します。
ダービーダン・シリーズの記事、お疲れ様でした。
オチはWinter Memoriesになるだろうと予想していましたが、内容は予想以上に多岐にわたり、大変面白かったです。youtubeの映像も勉強になりました。いつか日本馬と対戦できるのを期待しています。
日本のロベルト系はサイアーラインとしてはアーネストリーを出したグラスワンダーが一歩リードで、社台グループの手厚いサポートのあるシンボリクリスエス、タニノギムレットが続く感じでしょうか。ウオッカの前例があるだけにタニノギムレットの牡馬はどうも物足りない感じがしますが、クレスコグランドあたりが秋に飛躍してくれると面白いですね。血統的にも奥が深そうなので期待しています。
投稿: TACO | 2011年9月 5日 (月) 21:34
ありがとうございます。Winter Memories はレイクプラシッドS(G2)で当然勝つだろうと思っていたところ、負けてしまい、話の持って行き方としてどうしようかと悩んだのですが、そのまま書くことにしました。
ロベルト系はたまに出す大物に系統の存続が掛かっているので、アベレージは低くとも一発に期待したいところです。まだ時間は残されているので気長に待ちたいですね。
投稿: 栗山求 | 2011年9月 6日 (火) 08:01