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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2011年9月

2011年9月22日 (木)

トウショウボーイの再来? アドマイヤムーン

■日曜阪神5Rの新馬戦(芝1400m)は、人気薄のトミーバローズ(10番人気)が好位から抜け出しました。
http://www.youtube.com/watch?v=sWkaE7RXzgo

稽古内容が平凡だったため予想では手が回りませんでした。アドマイヤムーン産駒の素軽さは分かっているつもりでしたが、こういう馬まで新馬戦を勝ってしまうというのは感心するしかありません。これで芝新馬戦の連対率は36.8%(19戦7連対)、芝1200~1500mに限れば54.5%(11戦6連対)です。このレンジでは要注意です。

「アドマイヤムーン×ブライアンズタイム」は本馬を含めて2頭がデビューし、いずれも勝利を挙げています。母モンテドーターは未勝利馬ですが、その半兄にサニングデール(高松宮記念など重賞5勝)がいます。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009103708/

アドマイヤムーン産駒は幅広い配合パターンから勝ち馬を送り出しています。函館2歳S(G3)を勝ったファインチョイスは、母が「タイキシャトル×Capote」というスピード血統。こうしたタイプから2歳戦の活躍馬が出ることに関しては意外性はありません。

しかし、アドマイヤムーンの非凡な点は、Roberto、Graustark、Sadler's Wells、チャイナロックなど、重厚な血を抱えたやや鈍重とも思える牝馬からポンポンと勝ち馬を送り出していること。抜群の素軽さですね。社台系と比べると見劣りが否めない日高の牝馬が中心となってこの成績ですから立派です。もしこの先、何頭かのG1ホースを送り出すようならトウショウボーイの再来でしょう。

■日曜阪神2Rの未勝利戦(芝1800m)は、好位追走のミルドリーム(1番人気)が着実に伸びて差し切りました。
http://www.youtube.com/watch?v=tVwrnzhP92c

2歳世代のシンボリクリスエス産駒は、母馬の質が過去最高レベルなので、シーズン開始前から相当いい結果が出るのではないかと予測されていました。現在、9勝を挙げ、トップのダイワメジャーとフジキセキ(いずれも10勝)を1勝差で追いかけています。やはり今年はひと味違います。

ダームドゥラックが2勝を挙げているので、勝ち上がった馬は8頭。そのうち6頭が「シンボリクリスエス×サンデーサイレンス」です。繁殖牝馬のレベルアップは、サンデーサイレンスを父に持つ良血牝馬が大量に集まったことに起因しているので、この結果は妥当なものでしょう。6頭の母馬には、アドマイヤグルーヴ、ダンスインザムード、スティンガー、エアウイングスが含まれています。これだけ見ても圧倒的です。

ミルドリームの母ミルフィオリは名種牡馬フジキセキの全妹。その母ミルレーサーは、息子のフジキセキだけでなく、娘たちがいずれも繁殖牝馬として優れた成績を残しているので、名牝系として発展しそうな雰囲気があります。母馬としてのミルフィオリは前途洋洋でしょう。初子のミルドリームがしっかり走ったので、今後の動向が注目されます。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106003/

ミルドリームのデビュー戦はエネアドの2着。このレースは、3着トランドネージュを含む上位3頭が4着以下を8馬身ちぎりました。2着ミルドリーム、3着トランドネージュは2戦目に勝ち上がり、6着だったタニセンヴォイスが2着ですから、レースレベルはかなり高かったと推察されます。勝ったエネアドの強さを間接的に証明したといえるでしょう。

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      血 統 屋 http://www.miesque.com/
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2011年9月21日 (水)

グランデッツァ8馬身差圧勝

土曜札幌1Rの未勝利戦(芝1800m)は、グランデッツァ(1番人気)が軽く気合をつけた程度で後続を8馬身引き離しました。
http://www.youtube.com/watch?v=hvK5auo9EPM

単勝支持率82.2%(!)。どう考えても負けようがないメンバー構成だったとはいえこの数字は凄いですね。今年のJRAでこれを超える数字は見当たりません。

初戦はダッシュがつかず後方に置かれ、運が悪いことに上がり勝負となったため、位置取りの悪さが敗戦に直結しました。苦もなく3番手につけられた今回はその時点で勝負アリ、です。やや脚長の体型で、大きく柔らかいフットワーク。小回りコースよりは直線の長いコースに向くでしょう。走りっぷりを見ていてなぜかサクラユタカオーの若いころの姿がオーバーラップしました。古馬になって毎日王冠と天皇賞・秋を日本レコードで連勝した中距離王者です。同じ栗毛ということもありますが雰囲気が似ています。

桜花賞馬マルセリーナの半弟で、母マルバイユはアスタルテ賞(仏G1)など3つのマイル重賞を制した名牝です。『競馬王のPOG本』では「競合覚悟で上位指名すべき5頭」と「栗山ノート」にリストアップし、血統屋の電子書籍『種牡馬別好配合馬リスト アグネスタキオン編』でも牡馬のトップに据えました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009105989/

母マルバイユはマルセリーナとグランデッツァを連続して出したことにより、社台ファームを代表する名繁殖牝馬の1頭に躍り出ました。その豊かなスピードはアメリカ血統だけでなくヨーロッパ血統にも由来しており、ベースとして支えているのが Hyperion なので、大レース向きのしっかりとした底力を伝えています。2代母 Hambye には Ribot のクロスもあります。こういう血はアグネスタキオンと合いますね。

姉マルセリーナ(父ディープインパクト)は Burghclere≒Welsh Flame 3×4で、弟グランデッツァは Alcide≒Electric Flash 5×5。Welsh Flame は Electric Flash の娘なので、2頭とも似たようなポイントを強化しています。

           ┌ Donatello
         ┌○┤ ┌ Hyperion
Alcide ―――――┤ └〇┘
         └ Chenille

           ┌ Donatello
         ┌○┘
Electric Flash ―┤ ┌ Hyperion
         └○┤
           └ Chenille

アグネスタキオン産駒における Alcide 周辺の強化は、鈍重さを帯びるリスクを抱えるので、全体の血脈の質を十分吟味する必要があります。構わず走ったということはマルバイユのスピードの質が優れていることの証明でしょう。走るアグネスタキオン産駒は脚部不安の危険性をつねにはらんでいるので、来年のクラシックを見据えて大事に行ってほしいものです。

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2011年9月20日 (火)

ローズSはホエールキャプチャ

■ローズS(G2・芝1800m)の800m通過は49秒3ですから超スローペース。逃げ馬の直後で折り合った〇ホエールキャプチャ(1番人気)が最内から抜け出し、マイネイサベル(10番人気)の追撃をクビ差抑えました。
http://www.youtube.com/watch?v=NIB8TowoRXs

馬体重はプラス6キロ。太くもなく細くもなくいい感じで仕上がっていました。デビュー以来ずっと1~3着を確保している安定感はすばらしいですね。レース上手で末脚もしっかり、強い精神力にも恵まれています。配合については2月13日のエントリー「クイーンCはホエールキャプチャ」をご覧ください。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2011/02/post-6544.html

2着マイネイサベル(10番人気)はメンバー中最速の上がり33秒3。切れ味勝負では分が悪いイメージがあったので驚きました。馬が成長しているのでしょう。

オークス馬▲エリンコート(3番人気)は10着。春の3連勝は勢いに乗っていましたが、休みが入ってリセットされてしまった感じです。デュランダル産駒は古馬になってから上昇するものが目立つので、またリズムがかみ合ってくれば上昇してくるでしょう。オークス2着のピュアブリーゼも先日の紫苑S(OP)で12着と大敗しており、人気薄で大駆けした2頭は秋シーズンのスタートがうまく行っていません。

◎マルセリーナ(2番人気)は6着。馬体重が16キロ増えて余裕残しだったことに加え、道中で行きたがってスタミナを消耗したことが敗因でしょう。馬体重については一度使えば絞れるので心配はいりませんが、問題は行きたがる気性ですね。今回は超スローペースだったとはいえ、ほかの馬が折り合うなかでこの馬だけが力んだ走りをしていました。前走のオークスでも終始そうした走りをしていたので、癖になっているのではないか――と、これは杞憂かもしれませんが少しばかり心配です。秋華賞は今回のような超スローペースになることはまずありません。内回りコースに替わることはプラスとはいえないものの、折り合いさえつけば巻き返せるでしょう。速い流れのほうが良さそうなので、現状ではマイルがベストかもしれません。

■エルムS(G3・ダ1700m)は◎ランフォルセ(1番人気)が重賞初制覇。2着オーロマイスター(8番人気)が無印だったので予想は不的中でした。予想文を転載します。
http://www.youtube.com/watch?v=-YbpiKN3hh8

「◎ランフォルセは『シンボリクリスエス×マキアヴェリアン』という組み合わせで、兄弟にノーザンリバー(アーリントンC)、ノットアローン(ラジオNIKKEI賞-2着)、モンローブロンド(ファンタジーS-2着)、甥にロジユニヴァース(日本ダービー)がいる良血。これらはすべてサンデー系なので芝向きに出たが、本馬はパワー型のシンボリクリスエスを父に持つのでダート向きに出た。今年に入って本格化しており、滞在競馬のダ1700mでこの馬を負かせる馬はおそらくスマートファルコン、フリオーソ、エスポワールシチーぐらいだろう。ここは相手探し。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006103254/

その相手探しで失敗してしまいました……。オーロマイスターは放牧を挟んでいいときの状態に戻っていましたね。近走内容と59キロの斤量で安易に切ってしまったのが悔やまれます。南部杯(今年は東京競馬場で行われます)2連覇に向けて視界良好です。

勝ったランフォルセは出遅れ癖があるので、小回りコースでは今回のように外を回って徐々に上昇していくという競馬になってしまいます。距離ロスを考えると強い勝ち方です。

母ソニンクにとってはノーザンリバーに次いで2頭目の重賞勝ち馬。予想文にも記しましたが、ソニンクの孫にはロジユニヴァースがいます。繁殖牝馬として発揮する高い能力は、名牝の誉れ高い2代母 Sonic Lady (ムーランドロンシャン賞、サセックスS、愛1000ギニー)からもたらされたものが大きいと思います。Sonic Lady は13歳の若さで死亡したため、牝馬を2頭しか残すことができませんでした。ソニンクはそのうちの1頭です。

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2011年9月19日 (月)

セントライト記念はフェイトフルウォー

4コーナーで内側の馬に張られ、△フェイトフルウォー(6番人気)は外に飛ばされる不利を受けました。ここでひるむどころか猛獣のように闘争心を掻き立てるところがステイゴールド産駒ですね。根性が違います。
http://www.youtube.com/watch?v=fdmYXf9jVns

ロイヤルクレストが大逃げを打ち、実質的な先頭集団である3番手グループは1000m通過が59秒フラットぐらい。この位置取りでも例年より少し速いぐらいです。この集団は、前との差を詰めるために3ハロン標識の前から動き始めていたので、長くいい脚を使わないと勝てない展開でした。勝ったフェイトフルウォーの上がり3ハロンは34秒0。馬場が良かったとはいえ、勝ち時計が2分10秒3でこの上がりは優秀です。今年は絶対的な横綱がいるので楽観的な予測はしづらいのですが、今回の1、2着馬は本番でもいい戦いをするでしょう。

絶対的な横綱オルフェーヴルと、今回勝ったフェイトフルウォーはいずれも「ステイゴールド×メジロマックイーン」という組み合わせ。日本で一番有名なニックスです。オルフェーヴルの全兄ドリームジャーニー、先日のコスモス賞(2歳OP)を勝って2戦2勝としたゴールドシップもこの組み合わせから誕生しています。
http://yoso.netkeiba.com/?pid=profile&yid=266995

このニックスについては、昨年11月20日のエントリー以降、当ブログでも何度か触れており、いちばん最近は7月10日の「『ステイゴールド×メジロマックイーン』のゴールドシップ」です。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2011/07/post-6198.html

『サラブレ』9月号に執筆した「最新金脈ニックス名鑑」では、冒頭最も大きなスペースを割いて「ステイゴールド×メジロマックイーン」を取り上げています。ちなみに同誌は Amazon でも取り扱っており、バックナンバーもお買い求めいただけます。

フェイトフルウォーの母フェートデュヴァンは、芝2600m戦を勝ったステイヤーでした。2代母の父 Nijinsky はステイゴールドと相性抜群で、ほかにこの組み合わせを持つ馬にはシルクメビウス、アルコセニョーラ、マイネレーツェル、ナカヤマナイトなどがいます。距離延長は歓迎で、しかも速い上がりに対応できるので、本番ではライスシャワーのような存在になりうる可能性を秘めています。ステイゴールド産駒は成長力があるのでこれからの楽しみが大きい馬です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008102708/

◎トーセンラー(3番人気)は2着。不運が重なって春は散々でしたが、立ち直ればこれぐらいやれる馬です。時計の速い決着には向いています。

『netkeiba.ocm』「No.1予想」に提供した予想は、△◎▲で馬単13980円、3連単56160円的中。連単系マルチに買い目を設定しているので高配当が的中しました。
http://yoso.netkeiba.com/?pid=profile&yid=266995

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2011年9月18日 (日)

ディープインパクト産駒 Barocci が仏G3で2着

9月17日、仏ロンシャン競馬場で行われたプランスドランジュ賞(G3・芝2000m)で、ディープインパクト産駒の Barocci(牡3歳)が2着と健闘しました。
http://www.youtube.com/watch?v=yLTBNnjNrSE

今年の春、準重賞のオムニウムII賞(芝1600m)を制した際に当ブログで取り上げたことがあります。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2011/04/barocci-601b.html

その後、重賞ばかり使って4、6、5、7着。勝負になっていないわけではないけれど馬券には絡まず、という微妙な成績でした。今回は横一線の2着争いからわずかに抜け出たという内容で、スミヨン騎手が距離ロスを抑えて上手く乗ったという印象です。
http://www.pedigreequery.com/barocci2

プランスドランジュ賞が日本のどのレースに該当するかというと、適当なものが浮かばず困るのですが、強いて挙げれば朝日チャレンジCや鳴尾記念あたりでしょうか。年の前半に活躍して後半尻すぼみになるよりも、この時期に浮上してくるほうが来年に繋がります。

その10日前、仏サンクルー競馬場でディープインパクト産駒の2歳牝馬 Beauty Parlour がデビュー戦を8馬身差で圧勝しました。この馬は Barocci の全妹です。08年に社台ファームで誕生した Barocci は、その年のうちに母バステットとともにフランスへ渡りました。母は翌春ディープインパクトの牝馬を出産。これが Beauty Parlour です。
http://www.pedigreequery.com/beauty+parlour3

芝とオールウェザーの中距離戦において、日本産馬の実力は世界のトップクラスと比べて遜色ないレベルにあります。ステイゴールド産駒のナカヤマフェスタ(凱旋門賞-2着)や、ネオユニヴァース産駒のヴィクトワールピサ(ドバイワールドC)の活躍がそれを証明しています。先日フランスで行われたフォワ賞(G2)でもマンハッタンカフェ産駒のヒルノダムールが僅差の2着でした。ディープインパクトは日本のトップ種牡馬であり、その産駒が仮に海外で通用しなかったとしたら、逆にそのほうが意外です。

とはいえ、日本とヨーロッパの馬場には大きな隔たりがあるので、ヨーロッパにおける主流血統を交配牝馬から取り入れて、その産駒が問題なく走るということであれば、日本とヨーロッパの距離はさらに縮まります。Barocci と Beauty Parlour の兄妹は Storm Cat 系の Giants Causeway を母の父に持ちます。日本の馬場ではちょっとどうかなという血統構成ではありますが、力のいるヨーロッパの深い芝ではこの種のパワー血統が頼りになります。このほか、ヨーロッパに根を下ろしている主流血統には Danzig や Sadler's Wells などがあり、こうした血とうまくフィットするかどうかがディープインパクトの海外戦略にとって重要ポイントとなるでしょう。現段階ではうまく行っているのではないかと思います。

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      血 統 屋 http://www.miesque.com/
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2011年9月17日 (土)

父譲りの切れ味で完勝、レッドアーヴィング

■日曜札幌5Rの新馬戦(芝1800m)は、4番手追走の▲レッドアーヴィング(1番人気)が直線で鮮やかに突き抜けました。
http://www.youtube.com/watch?v=fVyDWlNFKAY

好調アドマイヤムーン産駒は、先々週までの時点で1600m以上では連対率6.3%(16戦1連対)。したがって、2倍を切る1番人気でもやや不安があったのですが、杞憂に終わりました。

アドマイヤムーン自身は現役時代に2400mをこなしたので、もともと産駒に距離の壁などないのかもしれませんし、母エンプレスティアラの全弟ゴールデンハインドは、函館芝2600mでレコード勝ちするなど、全5勝のうち4勝を2400m以上で挙げました。距離をこなせる素地はありましたね。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106100/

そもそも今回はスローペースの上がり勝負で、むしろ瞬発力が問われるレースでした。アドマイヤムーン産駒の最大の長所は瞬発力。ゴール前でピリッとしたいい脚を使います。レッドアーヴィングは、母の父クロフネ、2代母ゴールドティアラ(南部杯-G1)ですから、芝向きの切れ味という面では心もとない血統です。そうした血を抱えながら、ラスト2ハロン11秒4-11秒6という決め手勝負をスパッと抜け出してきたわけですから、アドマイヤムーンが伝える瞬発力は優秀だと思います。このあたりはサンデーサイレンスの影響でしょうか。

今年の新種牡馬戦線は、ダイワメジャーとアドマイヤムーンの2頭が抜け出しており、現時点で両馬とも8勝を挙げています。出走数はダイワメジャーの90回に対し、アドマイヤムーンは半分以下の34回なので、勝率ではアドマイヤムーンの圧勝です。持ち前の瞬発力を活かしてゴール前でしっかり競り勝っていることが分かります。ただ、2着を比べてみると、ダイワメジャーの19回に対し、アドマイヤムーンは3回。連対率ベースではほとんど差がありません(30.0%と32.4%)。夏競馬が終わって間もない段階なので、これから秋競馬が進んでいけば、傾向も変わってくるかもしれません。引き続き注視していきたいですね。

これまでにデビューしたアドマイヤムーン産駒は、良くも悪くもローカル向きの軽いスピードタイプが多かったと思います。中央開催の中距離レースに対応できそうなレッドアーヴィングのような馬をどれだけ出せるか、という点がこれからの課題となるでしょう。

■日曜中山6Rの新馬戦(ダ1800m)は、中団追走の★ブラックビーン(6番人気)が3コーナーから大外をマクって進出し、4コーナーで先頭に立つとそのまま押し切りました。
http://www.youtube.com/watch?v=SNfMKVXTSEs

これぞダートホース、という豪快な勝ち方でした。2代母は20番人気でエリザベス女王杯(G1)を勝ったサンドピアリス、母サンドコロネットはタマモストロング(ダート重賞4勝)の半姉。これにワイルドラッシュを掛けて本馬は誕生しました。血統表のどこを切り取ってもパワー満点です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009103361/

ワイルドラッシュはトランセンドを筆頭にコンスタントに活躍馬を送り出しており、その多くはダート馬です。昨年あたりまではセールで落札される産駒の価格も安く、実力と価格のアンバランスさからお買い得といえる種牡馬だったのですが、今年に入ってからさすがに価格が上がってきて、実力相応の評価をされるようになりました。10、11年と、中央地方を総合したダート重賞の勝利数は全種牡馬中トップです。

5月14日のエントリー「羽田盃はクラーベセクレタ」に記したとおり、ワイルドラッシュ産駒の大物は、Flower Bowl-Graustark(=His Majesty)の母子を強化した配合が目につきます。前出のトランセンドや、クラーベセクレタ、クリールパッション、ヒシウォーシイなどがそうです。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2011/05/post-5ff1.html

ブラックビーンは母方にチャイナロックが入ります。Flower Bowl とチャイナロックはいずれも Hyperion と Son-in-Law で構成されており、底力の強化には有効な血です。

           ┌ Hyperion
         ┌○┘ ┌ Son-in-Law
Flower Bowl ―――┤ ┌〇┘
         └○┘

           ┌ Hyperion
         ┌○┘ ┌ Son-in-Law
チャイナロック ―┤ ┌〇┘
         └○┘

しっかり乗り込んではいたものの、時計的にはそれほど目立つものではなかったので、配合的に注目という★しか打てませんでした。ダート路線で注目したい1頭です。

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      血 統 屋 http://www.miesque.com/
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2011年9月16日 (金)

アドマイヤベルナと配合が似ているバウンダリーワン

土曜中山5Rの新馬戦(芝1200m)は、◎バウンダリーワン(1番人気)が2番手から抜け出しました。
http://www.youtube.com/watch?v=-tS8KvAS2pI

予想は◎▲△で馬単810円、3連単3510円的中。『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想文を転載します。

「◎バウンダリーワンは『ファルブラヴ×アドマイヤベガ』という組み合わせ。『ファルブラヴ×サンデー』は新馬戦の強さに定評があるが、サンデーの息子アドマイヤベガを母の父に持つパターンも悪くないだろう。サクラハゴロモの牝系にファルブラヴ、という配合はアドマイヤベルナ(6月の1000万特別でエクスペディションに5馬身差圧勝)と同じ。稽古でも動いているのでこの条件ならスピード押し切れそう。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009102909/

先週のファルブラヴ産駒は、エーシンヴァーゴウがセントウルS(G2)を勝つなど土日で4勝を挙げる好調ぶり。今年は2歳戦でも頑張っており、函館2歳S(G3)2着のアイムユアーズ、小倉2歳S(G3)3着のハギノコメントなどが出ています。

予想文にも書いたとおり、バウンダリーワンはアドマイヤベルナと配合構成がよく似ています。同馬は6月の三木特別(1000万下・芝2000m)で終い流しながら1分58秒2の好タイムで逃げ切りました。5馬身差の2着は、その後3連勝して重賞を狙おうかという位置まで出世してきたエクスペディションですから強いと思います。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007103288/
http://www.youtube.com/watch?v=28J-FA0KI7Q

          ┌ ファルブラヴ
          │   ┌ サンデーサイレンス
バウンダリーワン ―┤ ┌〇┤ ┌ トニービン
          └○┤ └○┘
            └ サクラハゴロモ

          ┌ ファルブラヴ
アドマイヤベルナ ―┤ ┌ サンデーサイレンス
          └○┤ ┌ トニービン
            └〇┤
              └ サクラハゴロモ

近い世代にファウブラヴ、サンデーサイレンス、トニービン、サクラハゴロモが入るという共通があります。サクラハゴロモは名種牡馬サクラバクシンオーの母です。バウンダリーワンとアドマイヤベルナは、母方にサンデーサイレンスとトニービンが入っても、ファルブラヴの一本調子な特徴は消えていません。

ちなみにバウンダリーワンは、今年のPOGで人気を集めたピュアソウル(父ディープンパクト、母ヒストリックスター)とも配合構成が似ています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106275/

          ┌ ファルブラヴ
バウンダリーワン ―┤   ┌ サンデーサイレンス
          │ ┌〇┤
          └○┘ └ ベガ

            ┌ サンデーサイレンス
          ┌〇┘
ピュアソウル ―――┤ ┌ ファルブラヴ
          └〇┤
            └ ベガ

ピュアソウルにも一本調子なところが伝わっているのかどうか、気になるところです。あるいは父ディープインパクトの柔らかな切れ味が特長として勝るか、その中間あたりに落ち着くか……。このあたりは実際に走ってみなければ分かりません。先日入厩したそうなので、京都開催あたりでデビューするはずです。

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      血 統 屋 http://www.miesque.com/
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2011年9月15日 (木)

Halo≒Sir Ivor 3×4で切れるタガノミュルザンヌ

■土曜阪神4Rの新馬戦(ダ1400m)は、3番手追走の◎ヴィンテージイヤー(1番人気)が直線で抜け出し、後続に5馬身差をつけました。
http://www.youtube.com/watch?v=7WSt4bF0M1o

予想は◎▲★で馬単400円、3連単2250円的中。『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想文を転載します。

「◎ヴィンテージイヤーは『メイショウボーラー×スターボロー』という組み合わせ。母の父スターボローは“ブダベストの弾丸”の異名をとる快速馬オーヴァードーズの父でもある。母ボンヌマールは、スターボローのスプリント能力に加えてデザートワイン≒バラダ3×3を持っているので、産駒に安定してスピードを供給できる繁殖牝馬だと思われる。父メイショウボーラーとの配合では、パワーとスピード、仕上がりの早さが感じられるので新馬戦には強いはず。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009100673/

まさに完勝でした。父メイショウボーラーはタイキシャトルの代表産駒で、現役時代にフェブラリーS(G1・ダ1600m)など5つの重賞を制しました。うち2つが芝重賞であるように、芝・ダート兼用タイプでしたが、どちらで走っても一本調子なところがあったので、種牡馬としては7:3ぐらいでダート向きかなという気がします。

今年の2歳世代が初年度産駒で、これが2頭目の勝ち馬となります。勝ち上がったもう1頭は、函館芝1800mを逃げ切ったトミケンユークアイ。決め手不要の舞台なら強いということでしょう。

■土曜阪神5Rの新馬戦(芝1400m)は、中団に控えた▲タガノミュルザンヌ(3番人気)が直線で大外を鋭く突き抜けました。
http://www.youtube.com/watch?v=3kh4aWR9tYI

422キロの小柄な馬体ながら、アグネスタキオン産駒らしい鋭い瞬発力を繰り出して完勝。将来性を感じさせる好素材です。

母レディアップステージはアイルランドでプリティーポリーS(G2・芝10f)を制覇。父が Alzao、母の父が Busted の息子なので、ディープインパクトの母ウインドインハーヘアによく似た配合です。

            ┌ Alzao
レディアップステージ ―┤   ┌ Busted
            │ ┌〇┘
            └○┘

            ┌ Alzao
ウインドインハーヘア ―┤ ┌ Busted
            └○┘

したがって、タガノミュルザンヌ自身は、ニュービギニング、リルダヴァル、ダノンパッション(いずれもウインドインハーヘアの牝系で父がアグネスタキオン)と配合構成がよく似ています。Halo≒Sir Ivor が生じるので切れますね。

レディアップステージがこれまでに産んだ2頭、フライングブイ(父ブライアンズタイム)とバロンルージュ(父アグネスタキオン)はいずれも未勝利馬。2頭とも一度も馬券に絡んだことがないという惨憺たる成績でした。タガノミュルザンヌは馬のデキがよかったのでしょう。脚を溜めれば確実に伸びるタイプだと思われるので、距離はもっと延びたほうがいいと思います。

◎アンチュラス(1番人気)はテンションが高く、掛かり気味に追走して末脚を失ってしまいました。全姉イングリッドもメンタル面にややデリケートな面を抱えています。脚力は十分なので、落ち着いて走ればすぐにでも勝ち上がれるでしょう。

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2011年9月14日 (水)

「一口馬主好配合馬ピックアップ」で東サラ、シルク診断開始

おかげさまでご好評をいただいております「一口馬主好配合馬ピックアップ」は、9月12日から東京サラブレッドクラブとシルクホースクラブの診断を開始いたしました。
http://www.miesque.com/c00006.html

現在、望田潤さんの東サラ、栗山求のシルク分をアップロードしています。望田潤さんのシルク、栗山求の東サラは準備が整い次第アップロードいたしますので、よろしくお願いいたします。
http://www.miesque.com/

東西でキングカメハメハ産駒が重賞制覇

■日曜中山11Rの京成杯オータムH(G3・芝1600m)は、◎フィフスペトル(2番人気)が直線半ばで抜け出しました。
http://www.youtube.com/watch?v=KW4xoaf-61o

『netkeiba.com』の「No.1予想」に提供した予想は、2着アプリコットフィズ(7番人気)がヌケだったので、◎が1着だったものの不的中。予想文を転載します。

「◎フィフスペトルは『キングカメハメハ×バーリ』という組み合わせ。キングカメハメハはトゥールビヨン-ジェベルのラインが母方の構成要素の核となっているので、ここを強化した配合は好ましい。本馬の母の父バーリは英マイルG1を2勝した名馬で、ジェベル5×5。母ライラックレーンはネヴァーベンド≒ナンティシャス3×3という相似な血のクロスを持ち、本馬はミルリーフ≒リヴァーマン5×3。よくできた配合で潜在能力の高さを感じさせる。これまでに獲得した重賞は函館2歳S(G3)のみだが、さらにタイトルを上積みできるポテンシャルを秘めていると思われる。中山芝1600mは朝日杯フューチュリティS(G1)で2着となり、東風S(OP)を完勝した舞台。今回はチャンスだろう。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006102859/

母ライラックレーンの血統は、Bahri≒Balletomane 1×2と表現したくなるほどです。こうした特殊な凝縮を持つ牝馬は、母として、あるいは2代母としておもしろいですね。個人的にも好きなパターンで、フィフスペトルについてはデビュー戦から高く評価してきました。次走は10月22日の富士S(G3・芝1600m)か、10月2日のポートアイランドS(OP・阪神芝1600m)でしょうか。ようやく波に乗ってきたので、もっとタイトルを上積みしてほしいところです。

2着アプリコットフィズにはやられました。当ブログで何度も取り上げたことがあるように、もともと高く評価してきた馬なのですが、今年に入ってから二桁着順が続き、もう競走意欲を失っているのかもしれないと侮っていました。嬉しい復活です。

■土曜阪神11Rの朝日チャレンジC(G3・芝2000m)は、◎ミッキードリーム(1番人気)がしぶとく伸びて差し切りました。
http://www.youtube.com/watch?v=or6KQFFSZjo

予想は◎△▲で馬単3540円、3連単12590円的中。『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想文を転載します。

「◎ミッキードリームは『キングカメハメハ×サンデーサイレンス』。どちらかといえば外回りコースが合う組み合わせだが、本馬はサクラバクシンオーの近親で先行力もあるので内回りコースも問題ない。開幕週なので好位勢には有利な競馬となりそう。4歳キンカメ軍団の遅れてきた有力馬として秋の重賞戦線で活躍が期待できる。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007103315/

昨年の毎日杯(G3・芝2000m)でダノンシャンティの2着となった経験があり、1000万クラスから3連勝といっても元のクラスに戻っただけです。キングカメハメハ産駒は先週、この馬とフィフスペトルで重賞2勝と好調でした。

関西の芝2000m前後の路線は、エクスペディションやアドマイヤベルナなど、楽しみな新鋭が多いですね。こういう活きのいい馬たちがどんどん重賞に出てくれば盛り上がります。

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競馬王 2011年11月号
『競馬王11月号』の特集は「この秋、WIN5を複数回当てる」。開始から既にWIN5を3回的中させている松代和也氏の「少点数に絞る極意」、Mr. WIN5の伊吹雅也氏が、気になる疑問を最強データとともに解析する「WIN5 今秋の狙い方」、穴馬選定に困った時のリーサルウェポン、棟広良隆氏&六本木一彦氏の「WIN5は『穴馬名鑑』に乗れ!」、オッズから勝ち馬を導き出す柏手重宝氏の「1億の波動(ワオ!)」、亀谷敬正氏&藤代三郎氏が上位人気の取捨を極める「迷い続ける馬券術」、夏競馬期間中WIN5を6戦3勝している秘訣を探る「赤木一騎の次なる作戦」など、この秋、一度ならず二度、三度とWIN5を的中させるための術が凝縮されています!! また「大穴の騎手心理」では、世界を股にかけるトップジョッキー・蛯名正義騎手をゲストにお迎えしました。その他、今井雅宏氏の「新指数・ハイラップ指数大解剖」や、久保和功氏の「京大式・推定3ハロン」など、盛り沢山の内容となっています!!