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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2011年8月18日 (木)

器用さと瞬発力あり、ベストディール

日曜札幌6Rの新馬戦は、2番手追走の◎ベストディール(2番人気)が残り1ハロンで抜け出しました。
http://www.youtube.com/watch?v=y1gI9REYKpQ

予想は◎△△で馬単2430円、3連単7170円的中。『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想を転載します。

「◎ベストディールは『ディープインパクト×マルシャンドサブル』という組み合わせで、母コマーサントはEPテイラーS(加G1)、プシケ賞(仏G3)などを勝った芝の中距離馬。ディープインパクト産駒は芝1800mの新馬戦で連対率50%(30戦15連対)と圧倒的な成績を挙げている。稽古でもしっかり時計が出ているので好走できるだろう。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009105792/

国枝栄厩舎と蛯名正義騎手のコンビといえば牝馬三冠馬アパパネを思い出します。このコンビの新馬戦は信頼でき、とくに芝新馬戦では過去57.7%という驚異的な連対率(26戦15連対)。国枝調教師が芝新馬戦で蛯名騎手を乗せてきたときには勝負気配と見て間違いありません。

半姉アイアムノココロ(父フジキセキ)は抜群の好馬体を誇りながら体質が弱く、3歳の3月にようやく初出走に漕ぎ着けました。全姉ウィッシュも調教セール出身馬ながらデビューはやはり3歳の3月。上2頭はデビューを果たすまでにモタついたので、2歳夏に新馬勝ちを果たした本馬は、それらと違って素質面でハイレベルなものを持っているような気がします。道中のラップは緩んだものの、最後の2ハロンは11秒6-11秒2。いい切れ味を持っています。

全姉ウィッシュが戦績的にイマイチ(現在6戦未勝利)なので、現役時代に2着の山を築いた母の父 Marchand de Sable や、鈍重さを帯びた2代母の父 Tropular あたりの影響が出ているのかと考え、デビュー前の配合評価では高いポイントは与えなかったのですが、Borealis≒Sirrima 6×5はなかなかおもしろく、本馬にはこの影響がうまく表れたのかもしれません。
http://www.pedigreequery.com/borealis
http://www.pedigreequery.com/sirrima

      ┌ Brumeux
Borealis ―┤ ┌ Hyperion
      └○┤ 
        └ Rose Red(=Sweet Lavender)

      ┌ Hyperion
Sirrima ――┤ ┌ Brumeux
      └○┤
        └〇┐
          └ Sweet Lavender(=Rose Red)

母方はスタミナ豊富なので、気性的な問題さえなければ2000m以上で本領を発揮していくタイプになるかもしれません。スタートのセンスがいいのは姉と同じ。ディープインパクト産駒はこの点に不安を抱えた馬が少なくないので好感が持てます。好位でソツなく競馬を運べる器用さは大きなアドバンテージです。

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      血 統 屋 http://www.miesque.com/
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器用さと瞬発力あり、ベストディールを参照しているブログ:

コメント

ベストディールは、ディープ産駒らしからぬレース運びの上手さでしたね。
ディープ×ヌレイエフ系牝馬というと、フレールジャックがいますが、両馬の母は、ヌレイエフ以外にもブラッシンググルーム、へイルトゥリーズン、ラトロワンヌが共通しています。
ベストディールの母コマーサントは、その他にも、ホーンビームやアリシドンのような重厚な血や、ゼダーンやネバーベンドのようなナスルーラ系の血があります。
特に、コマーサントの血統をさかのぼると、ナスルーラとブランドフォードの血が山盛りで、さらに、ハイペリオン、サンインロー、テディの血も濃厚に持っています(関連の血として、ロイヤルチャージャー、スウィンフォード、ゲインズボローもかなりあります)。上手くいけば切れ味と底力をあわせ持つ馬が期待できそうですが、外れだと特徴に欠ける馬が出来そうで、コマーサントはG1馬ですが、2頭いる全兄弟がパッとしないのは、そのあたりに理由があるのかもしれません。
それから、これはお遊びにすぎませんが、コマーサントの血統表は、ヌレイエフとヘイルトゥリーズンとラランで合わせてサドラーズウェルズだとか、カラムーンにホーンビームにプレシピテーションでトニービンだとか、ついついパズルの組み換えのようなことしたくなる誘惑にかられますね。
以上をふまえて、ベストディールのレースぶりや血統を見ていると、洋芝の得意なストレッチランナーという感じがしてきます。先程のパズル遊びではありませんが、ちょっとトニービンの血を感じさせるところがあり、例えばデビュー戦の内容も、ジャングルポケットの札幌でのデビュー戦を思い出せるところがありました。ジャングルポケットは、トニービン×ヌレイエフですから、コマーサントと相通じるところもあるような気がします。
トニービンとサンデー系の配合は、母馬が名牝で種牡馬を選ばないケース(ベガ、エアグルーヴ、グレースアドマイヤ、エアトゥーレなど)を除くと、フジキセキとディープくらいしか成功していない印象がありますが、ジャングルポケットはサンデー牝馬との相性が抜群です。ヌレイエフとヘイルトゥリーズンは、サドラーズウェルズの例からも相性抜群でしょうし、ヌレイエフとナスキロ(グレビオやロイキロも含めて)も後述の通り相性が良いようです。
ヌレイエフは、サンデーとトニービンの接着剤として優秀なのかもしれませんね。

追伸
もうすこし広げて、サンデー系種牡馬×ヌレイエフ系牝馬についても考えてみました。
この配合の活躍馬のパターンは、(1)母馬がレイズアネイティヴ系の血を持つ、(2)母馬がナスキロの血を持つ、(3)母馬がラトロワンヌの血を持つ、の3つくらいに分類できそうです。
(1)の例は、トーホウアランやアロマカフェなどがあります。
トゥザヴィクトリーの場合は、シャーペンアップですが、祖母がレイズアネイティヴにあるような米国血脈を一通り揃えているので、(1)に準じるものとしてよいでしょう。
ヌレイエフ×レイズアネイティヴ系ということでは、パントレセレブル、ファスリエフ、ファルコ、ストラヴィンスキー、ハートレイク、イーグルカフェなど多くの成功例があります。
(2)の例は、ゴールドアリュール、コンラッド、サンライズベガ、ダイワワイルドボア、アロマカフェなどです。
これは、サドラーズウェルズが、ミルリーフ系とニックスの関係にあることから類推すれば、当然かもしれません。
(3)の例は、ゴールドアリュール、フサイチパンドラ、フレールジャック、コンラッド、サンライズベガなど。
フサイチパンドラの母ロッタレースと、ウルフハウンドが、同じヌレイエフ×バックパサーというのが印象的です。
その他、サンデー系×ヌレイエフ系という形ではダイワワイルドボアくらいしか成功例がないのですが、ヌレイエフとリボーの血を持つ母馬(比較的高い位置で)との配合は、ミエスク、ザグレブ、サリスカ、ジェントルメンなど多くの成功例があります。

ところで、(1)から(3)までの血を合わせると、ヌレイエフ+ヘイルトゥリーズン+レイズアネイティヴ+ナスキロ+ラトロワンヌ≒ガリレオということになります。
サンデー系×ヌレイエフ系の成功のために何が必要かを考えていくと、いまや欧州競馬の絶対君主ともいえるガリレオに辿りつくというのは、非常に興味深いところです。
そして、これらの血の中で、ある意味で異質なのは、ヘイルトゥリーズンではないでしょうか。ヘイルトゥリーズンは、主流血脈としてブレイクするでもなく、傍流血脈として母系に入って存在感を見せるでもなく、時には「特徴に乏しい」とか「存在感に欠ける」と言われることさえあります。
しかし、本当に特徴が乏しいのだとしたら、とにもかくにもここまで血脈を広げてきた理由は何なのでしょうか?
個人的に見聞きした中で、もっともヘイルトゥリーズンの血の特徴をとらえたものとして、ラフィアンの岡田繁幸さんのコメントをあげたいと思います。
岡田さんによれば、ヘイルトゥリーズン系の最大の特徴は、ゴムのように伸縮性のある筋肉なのだそうです。これは、書斎派の研究者たちからは出てこない視点であり、言われてみれば、なるほどと思わざるをえません。このゴムのような伸縮性は、欧州の深い洋芝コースでは良さが殺されてしまいがちですし、米国の硬いダートコースでは単純な馬力のほうが効率的でしょう。サンデー系が、日本の野芝コースで大きく花開いたのは、必然と言えるかもしれません。
近年、タイプは違えども、欧米の競馬の主流は、大きく馬力型へと傾斜を強めています。なにかの雑誌で読んだのですが、最近、米国産馬の欧州の大レースでの勝率がガタ落ちなのだそうです。理由は、あまりにも米国のダート向きに特化した生産が行なわれいるからなのだとか。
他方、欧州競馬も、長きにわたってサドラーズウェルズとダンジグの二極時代が続いています。新しい血を求めて、米国血脈を入れてみたり、ドイツ血脈を漁ってみたりしていますが、米国血脈もドイツ血脈も重たい馬力型である点では同じことではないでしょうか。
これは、先述のとおり、洋芝&ダートの馬場に規定されているため、急には傾向は変わらないでしょう。
しかしながら、笠さんの主張されるとおり、優れた馬というのは、部分的に異質な要素が必要なものです。
いま欧州主流血脈に必要な異質さとは、「軽さ」ではないでしょうか。米国血脈もドイツ血脈も「重さ」という点では、欧州主流血脈と同質にすぎません。そして、その「軽さ」を持つ血こそ、ヘイルトゥリーズンの血なのだと思います。
非常に近い4分の3同血のヌレイエフとサドラーズウェルズを分けるものは、一見するとラトロワンヌ周辺の米国血脈のように思われるのですが、実は影の薄いヘイルトゥリーズンこそ両馬の父系の発展性の差をもたらしたのではないでしょうか。このことは、ヌレイエフ最大の後継馬が、ソヴィエトスターではなくシアトリカルであり、シアトリカル系がヒシアマゾンやコスモバルクなど日本での成功馬を出したことでも証明されているように思われます。また、近年勢いのあるヌレイエフ系種牡馬として、ピヴォタルやパントレセレブルがあげられますが、両馬にはヘイルトゥリーズンこそ無いものの、代わりにサーゲイロードがあります。
以前に栗山さんが「世界最先端の血の潮流は、Halo≒Sir Ivor≒Drone がひとつの軸となっているのではないでしょうか」と述べられましたが、そのこととも相通じるものがありそうな気がしています。
最近、海外に輸出されたサンデー産駒の種牡馬から、ちらほら活躍馬が出ています。
ヘイルトゥリーズンの血は、馬場の問題が変わらない以上、決して主流血脈になることはないでしょう。
しかし、今はドイツ血脈などを漁っている欧米の生産者たちも、いずれサンデー系こそ最も重要な異系血脈と認識する時が来るかもしれません。
サンデーサイレンスの血を保存・発展させてきた日本の生産界が、世界の生産者たちから感謝される日も遠くないなどと言ったら、妄想のしすぎでしょうか。

楽しく読ませていただきました。ベストディールはヨーロッパの血が強いので、洋芝適性は高いと思います。たしかにジャングルポケット的なイメージも感じられますね。

Nureyev は筋肉量が豊富なタイプでパワーがあり、細身で芝向きのサンデーサイレンス、トニービンに対してアクセントになりうる血です。ディープインパクトは小柄で細身の産駒が多いので、Nureyev のような血は悪くないでしょうね。ベストディールはフレールジャックと同じく母方に Nureyev を持ち、Blushing Groom を併せ持っています。3代母の父クリスタルグリッターズ(父 Blushing Groom)は、ダート王アブクマポーロを出すなどパワーがありました。ベストディールの配合で見逃せないのは、こうした血がサポートしていている点ですね。茫洋としたヨーロッパ血統だけで構成されているわけではありません。

サンデー系は、Sadler's Wells やデインヒルのようなパワーはなく、軽さと切れ味が持ち味です。だからこそ、パワー型欧州血統が行きついた先に、それを和らげる手段として“発見”される可能性があると思います。このあたりは6月16日のエントリー「サラブレッドの多様性は馬場の多様性から生まれる」に記したことがありますのでご参照ください。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2011/06/post-f8d0.html

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