ダービーダン方式の至宝 Dynaformer(2)
ダービーダンファームを創設したジョン・W・ガルブレイスは、20世紀のアメリカ競馬における最も偉大なホースマンのひとりに数えられる人物です。
もともとダービーダンファームは、35年に彼の生地であるオハイオ州に作られました。不動産開発事業から得られる莫大な収入を背景に馬産事業を拡大し、40年代に入ると馬産の中心地ケンタッキーに進出。46年に名門アイドルアワーストックファームのブラッドリー大佐が亡くなると、3年後に同牧場の中核部分を購買し、ダービーダンファームと改名しました。オハイオ州にある元祖ダービーダンファームは支場として存続させています。
初期には年度代表馬の Swaps と Sword Dancer や、Sailor、Summer Tan などを種牡馬として繋養しました。やがて彼は海外に眼を向けるようになり、60年代に入ると史上最強クラスのヨーロッパの名馬 Ribot、Sea Bird を相次いでリース契約で導入。彼自身の財力もさることながら、世界最強のアメリカ経済がもたらした豊かさが、最も優秀なサラブレッドの遺伝子を新大陸に移動させたといえるでしょう。
http://www.pedigreequery.com/ribot
http://www.pedigreequery.com/sea-bird
30年代以降、ヨーロッパからアメリカへ次々と優れたサラブレッドが渡りました。Nasrullah、Royal Charger、Mahmoud といったところが代表例で、これらはいずれもアガ・カーン三世殿下の名牝 Mumtaz Mahal の牝系から出ています。“空飛ぶ牝馬”と呼ばれた Mumtaz Mahal は、繁殖牝馬としてもずば抜けたスピードを伝えることに成功し、前記の3頭以外にも多くの名馬をその系統から送り出しました。アメリカ競馬はスピードが第一義ですから、当然、これらの血は大成功を収めました。
http://www.pedigreequery.com/nasrullah
http://www.pedigreequery.com/royal+charger
http://www.pedigreequery.com/mahmoud
一方、ガルブレイスが導入した Ribot と Sea Bird は、いずれも現役時代に凱旋門賞(芝2400m)を制覇しています。ヨーロッパ伝統のスタミナと底力を武器とし、産駒にもそうした特長を伝えました。スピードよりもスタミナを重視した選択の背景には、いずれ自身の生産馬でヨーロッパの大レースを勝ちたいという秘められた野望が存在していたのかもしれません。(続く)
※続きは来週半ばの予定です。
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