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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2011年8月14日 (日)

消えた名種牡馬 Cacique

8月13日(土)に英ニューバリー競馬場で行われたジェフリーフリーアS(G3・芝13f61yds)は、3番人気の Census が勝ちました。
http://www.pedigreequery.com/census6

2着の Brown Panther はマイケル・オーウェン氏(元イングランド代表のサッカー選手)の持ち馬。こちらが勝っていればそこそこ大きなニュースバリューだったかもしれません。

ただ、Census の勝利も、血統的には目を惹く結果です。同馬の父 Cacique にとって、Mutual Trust(ジャンプラ賞-仏G1、ポールドムーサック賞-仏G3)に次ぐ2頭目の重賞勝ち馬となりました。
http://www.pedigreequery.com/cacique9

2頭が属する3歳世代は Cacique の初年度産駒。出走を果たしたものはわずか16頭です。種牡馬として人気がなかったわけではありません。なぜなら Cacique は現役時代にマンノウォーS(米G1)やマンハッタンH(米G1)などを制した一流馬で、なおかつ名種牡馬 Dansili(ハービンジャー、Rail Link などの父)の全弟にあたり、兄弟には4頭のG1馬がいるという超良血馬だからです。種牡馬としては引く手あまたでした。この華々しいファミリーについては昨年2月26日のエントリー「もう1頭のスーパー牝馬 Hasili」に詳述しておりますのでご参照ください。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/02/hasili-2836.html

産駒数が少ない理由は“受胎率の低さ”です。現2歳世代はさらに頭数が少なく、わずか数頭。結局、昨年秋に種牡馬生活をリタイアしました。繋養されていたバンステッドマナースタッドには、もともと全兄の Dansili がいたのですが、10年からは全弟の Champs Elysees がスタッドイン。同じ血統の種牡馬は3頭もいらないということで、受胎率に問題を抱える Cacique が切られたということでしょう。

Cacique 産駒は Mutual Trust と Census だけではありません。競走馬となったわずかな初年度産駒から、Slumber(英G3チェスターヴァーズ-3着、英G3ハンプトンコートS-3着)、Dominant(英G3ヨークS-3着)などが出ています。全兄 Dansili に負けない活躍ぶりです。これだけの能力を持った種牡馬が、ごくわずかな産駒しか残せず姿を消したというのはもったいないですね。

スーパー牝馬 Hasili を母に持つ名馬たちが、種牡馬や繁殖牝馬として成功し、現代のサラブレッドに大きな痕跡を刻むことになったとしたら、Census の血は希少性が高いので価値が上がるかもしれません。

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      血 統 屋 http://www.miesque.com/
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コメント

栗山さん今晩は
海外競馬のお話しで気になる事があるので質問させてください
つい先日、フランスでディープ産駒のAquamarineがデビュー2連勝を飾ったらしいのですが、血統背景を見ると、Alzao3×2という強烈なクロスが生じてます
このAlzao3×2のクロスは、競走馬として成長するにあたり今後、何かしらの弊害が生まれる事は考えられますでしょうか?
それと、Alzaoの類似するクロスで、過去に活躍したサラブレッドが居れば教えて頂きたいです。

こんにちは。Aquamarine はスミヨン騎手がかなり褒めているので、この秋が楽しみになりましたね。
http://www.pedigreequery.com/aquamarine12

Alzao 3×2はたしかに強烈ですが、サラブレッドの歴史のなかでは有名な配合パターンで、Flying Fox(1899年の英三冠馬)と Ksar(凱旋門賞2回、仏ダービー)がまったく同じ位置のクロス(父の母、母の父)から誕生しています。
http://www.pedigreequery.com/flying+fox4
http://www.pedigreequery.com/ksar

この2頭にはもうひとつ共通点があります。Flying Fox を現役生活の途中で手に入れ、引退後に種牡馬としてフランスに導入したのは、19世紀末から同国で華々しい成功を収めた名生産者エドモン・ブランです。また、Ksar を1歳時にセリで購買したのも同じエドモン・ブランです。Flying Fox は Teddy の2代父で、Ksar は Tourbillon の父です。
http://www.pedigreequery.com/teddy
http://www.pedigreequery.com/tourbillon

Aquamarine に今後、このクロスに起因する何らかのマイナス点が浮上するかどうかは分かりません。一般的に強すぎるクロスはあまりいい結果をもたらしませんが、Flying Fox や Ksar の例のように、サラブレッド史に名を刻む名馬が誕生することもあります。薬になるか毒になるか、それはクロスさせる血の質、周辺血脈の構成を含めて考える必要があり、一言でいえばケースバイケースです。

サラブレ買いました!
これからも執筆が増えればと思います。
サラブレは愛読誌なので。

受胎率が悪いという欠点はあるものの、それ以外は
文句のつけようのない種牡馬を購入して、チャレンジ
してくれる牧場はないですかね。
格安で手にいれられるかもしれないし。

>馬好き様

ありがとうございます。今後も地道に頑張ります。

>にいはら様

そうですね。どこかで供用しながら、受胎率改善の治療を施す、といった感じですかね。もっとも、詳しい事情については分からないので、それすら許されない何かがあったという可能性もあります。

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