ラジオNIKKEI賞はフレールジャック
ディープインパクト産駒はこれで重賞5勝目となりますが、不思議なことに1番人気での勝利はありません。ラジオNIKKEI賞(G3・芝1800m)を勝った▲フレールジャックは2番人気でした。
http://www.youtube.com/watch?v=JnzJV-sqBis
ディープインパクト産駒は基本的に人気先行です。実力以上に評価されることが多いと思います。そんな空気のなかで1番人気ではない、ということは戦績的にはっきりと微妙なところがあるわけです。
フレールジャックも例外ではありません。きわめて高い素質の持ち主であることは前2走のレースぶりを見れば明らかです。ただし、500万下の平場を勝ったばかりで、初の長距離輸送、ディープ産駒が最も得意とする京都芝1800mからのコース替わり、遅生まれ(5月25日)、キャリア3戦目、といった懸念材料がありました。
結果的にこれらはすべて杞憂に終わりました。能力の高さがすべての不安を吹っ飛ばしました。当ブログで何度も繰り返しているとおり、ディープインパクト産駒は全般的に晩成傾向があると思うので、まだまだ強くなるでしょう。母方の Nureyev、Blushing Groom はいずれも筋肉質なタイプ。こうした血は細身のディープインパクトに合うと思います。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103261/
フレールジャックの配合については5月10日のエントリー「経験馬相手に初戦楽勝フレールジャック」をご覧ください。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2011/05/post-dbba.html
◎ミヤビファルネーゼ(11番人気)は7着。スタートで後手を踏み、さらに内の馬に寄られて挟まれる形となり、最後方からの競馬。道中も折り合いを欠いて口を割るシーンが見られました。それでも最後は脚を伸ばして3着馬と0秒3差。荒削りながら能力の片鱗は示したと思います。次も人気にならないと思うので続けて狙いたいですね。
ところで、中山で行われたラジオNIKKEI賞、キャリアの浅い素質馬の勝利、というキーワードから96年の優勝馬ビッグバイアモン(父バイアモン)のことを思い出しました。抜群の素質を秘めた馬でしたが、問題がひとつ。前肢の蹄の形が誰の眼にも明らかなほど左右不揃いだったのです。パドックで周回する同馬を見て、こんな肢で競走馬になれるのか、とビックリしました。と同時に、競走生活は長くないだろう、との予感も抱きました。ラジオたんぱ賞(当時のレース名)を1分46秒0のレコードタイムで逃げ切ったのが最後の勝利で、次走の神戸新聞杯(5着)でレース中に故障、そのまま引退という寂しい幕切れ。その非凡な素質は、7歳下の半妹スティルインラブが牝馬三冠馬となったことでも証明されました。しかし、残念ながら種牡馬にはなれませんでした。
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血 統 屋 http://www.miesque.com/
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フレールジャックは、初の長距離輸送で大幅に馬体重を減らし、パドックでもイレ込んで酷い発汗と心配な要素が多かったのですが、まったく問題なく完勝でした。
新馬戦の終了直後、デビューの遅れていたディープ産駒が、バタバタと未勝利戦を勝ちあがっていった時期がありました。
なかには返す刀でプリンシパルS2着に食い込んだムーンリットレイクのような馬もいましたが、もっともファンに強い印象を残したのは、間違いなくフレールジャックでしょう。例えば、netkeibaへの書き込み数も、ムーンリットレイクやテンペルなどを圧倒していたと思います。
特に印象的だったのは、最後の直線の差し脚の強烈さで、1頭だけビデオの速回し映像であるかのような高速回転の鬼脚でした。といっても、極端なピッチ走法というわけでもなく、ストライドの大きさも充分に確保されています。
ディープ産駒のデビュー戦はずいぶん見てきましたが、個人的な衝撃度ではナンバーワンではないかと思います。
2戦目は、不良馬場の上に、引っかかって突進していくディープ産駒の必敗パターンでしたが、これまた難なく楽勝してモノの違いを見せ付けてくれました。
ラジオNIKKEI賞は、除外だけが心配でしたが、いざレースとなると上述のような馬体減に発汗で、これまたディープ産駒の負けパターンでしたが、結果は全て杞憂に終わりました。
まだ気の早い話ですし、すでにG1を制したリアルインパクトやマルセリーナに失礼でもあるのですが、フレールジャックが、ディープの初年度産駒を代表する存在になるのではないかという気がしてなりません。
それはさておくとしても、前日に2勝目をあげたムーンリットレイクとともに、秋にはディープ産駒の新戦力として、大舞台で活躍してくれるものと期待しています。
ところで、ダノンバラードに続きフレールジャックも重賞を勝ったことで、バラードに端を発する母系とディープとの相性は抜群のように思われます。
その他にも、先日未勝利で強い勝ち方をしたディープスノーも同じ母系ですね。
ディープ云々というより、この母系はヘイルトゥリーズン系との相性が飛び抜けて良いというべきでしょうか。
ダノンバラードにもフレールジャックにも、ヘイロー≒サーアイヴァーの相似クロスの継続がありますが、このクロスの継続が有効であるということも、ヘイルトゥリーズン系との相性の良さを示すものかもしれません。
ということで、ディープの2年目の産駒を調べてみたところ、初年度よりも多くの産駒がラインアップされていました。
個人的に最も期待しているのは、バラード直系ではないのですが、その祖母ソアリングから派生した系統でグラスワンダーの近親のディサイファ(ミズナ09)です。ダノンバラードをスマートにしたような体型で、配合的にもダノンバラードの成功パターン(ヘイロー≒サーアイヴァーの継続、サンデー×ミスプロ×バックパサー)を継承しつつ、よりハイインローが豊富で大物感がありそうに思われます。
ロゼッタストーン(ローズボー09)は、馬体派の美野真一氏が某誌でディープ産駒おすすめ10頭に選んでおられましたが、BMSがヌレイエフ産駒で、馬体もフレールジャックの2歳時にどことなく似ていますね。こちらも、ヘイロー≒サーアイヴァーを継続しています。
ヒシナタリー09は、ここまで殆んど情報がありませんが、母にとって帰国後最初の産駒になります。これだけの競走馬ですし、そろそろ活躍する産駒が出てもいいのではないでしょうか。
ヴィルシーナ(ハルーワスウィート09)は、やや小柄ですが非常に美しい体型の牝馬です。母はフレールジャックの半姉にあたりますが、母自身にヘイローのクロスがある上、配合の近いレッドゴッドもあるので、ちょっとクロスがキツイような気もしますが、気性はむしろ大人しいとのこと。このなかでは最も調教が進んでいて、8月の札幌デビューを目標にしているようです。
マーティンボロ(ハルーワソング09)は、フレールジャックの全弟ですが、残念ながら8月の遅生まれなので、来年以降に期待というところでしょうか。
ファミリーバイブル09は、ダノンバラードのイトコですが、今のところ何も情報がありません。BMSサドラーズウェルズは、ディープスノーと同じですね。
ロードハリケーン(レディバラード09)は、ダノンバラードの全弟で、本来は真っ先に取り上げるべきでしょうが、POG本の馬体写真を見て少し失望しているところです。全兄にまるで似ていないのはともかく、サンデー系らしい皮膚の薄さが無く、ディープ産駒らしいスマートさもありません。もし、この馬体でも活躍するようなら、ディープとこの母系との相性は尋常ではないことになりそうですが……
投稿: toku | 2011年7月 4日 (月) 18:18
フレールジャックの勝利のたびにコメントさせていただいております(笑)
現地観戦しておりましたが、イレ込みが想像以上に酷く、馬券的には間違いなく飛ぶパターンでしたが、期待以上の勝ちっぷりでした。
秋は神戸新聞杯から始動とのことですが、いきなりダービー馬との対戦・・期待7割不安3割といったところです(汗)
ただし気性面での改善が今後の課題でしょうね。。
5月末の生まれだし、夏を越しての馬体面・精神面での成長に期待しています。
デビュー2戦が京都1800で今回が中山1800。良馬場も重馬場も見事にこなし、馬場を選ばぬ走りをしてくれました。
あとは東京の1800~2400mあたりで能力全開のレースを見てみたいです。
それからエネアドが先週ゲート試験を合格しました。
デビューは新潟になりそうですが、調教師の評価も上々で、こちらも期待十分ですね。
投稿: こばしゅん | 2011年7月 4日 (月) 18:40
>toku 様
マルセリーナとムーンリットレイクそうですが、当初の予定よりもデビューが遅れたことが結果的に吉と出たような気がしますね。ディープインパクト産駒の場合、体が出来上がらないうちに馬に負荷を掛けすぎると、肉体的なダメージだけでなく精神的なストレスも溜めこみ、闘争心を失うなどの悪影響が出やすいような気がします。フレールジャックはもう必要な賞金は稼ぎましたから、夏の間はじっくり休養に充て、さらなる成長を促してほしいところです。
デイサファはまさに前記のパターンになりつつあります。一頓挫あったようですが、年内には元気な姿を見せてくれると思うので、怪我の功名となる可能性が高いと思います。配合もいいので期待したいですね。
投稿: 栗山求 | 2011年7月 5日 (火) 08:25
>こばしゅん様
フレールジャックは、同馬を取り巻く状況のみを考えたら、自信を持って勝てるとはとてもいえませんでした。今回のメンバーのなかでは能力高さが抜けています。神戸新聞杯は福永騎手が懸念するとおり距離がネックですね。ただ、これは調教などで鍛えればある程度カバーできるので、そんなに心配することもないかなとも思います。こういう新星がターフを賑わすと競馬が楽しいですね。
エネアドは1回使って休むというパターンでしょうか。新潟の外回りコー
スなら実力を発揮できるでしょう。この馬が走らないといろいろ困るので(笑)、なんとか頑張ってほしいものです。
投稿: 栗山求 | 2011年7月 5日 (火) 08:34