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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2011年6月 8日 (水)

仏ダービーは Reliable Man

仏ダービー(G1・芝2100m)は6月5日、重馬場(soft)のシャンティイ競馬場で行われました。勝った Reliable Man は4月12日にデビューしたばかり。過去25年間で2歳戦を使わずに仏ダービーを制した馬はこれで6頭目ですが、キャリア3戦目はナトルーン(87年)と並んで最短、デビュー55日目はナトルーンの32日目に次いで2番目の記録。フランス版フサイチコンコルド、といったところでしょうか。

内ラチ沿いの最後方近くを追走し、最後の直線で馬群を縫って大外に持ち出し、差し切りました。先行馬が潰れるペースであったとはいえ、キャリアの浅い馬がこのような競馬をするのですから評価できると思います。ここ数年の仏ダービー馬はやや冴えなかったのですが、Reliable Man はちょっと違うかも、という期待を抱かせます。戦績はこれで3戦全勝。ジェラルド・モッセ騎手は15年ぶり3回目の仏ダービー制覇。
http://www.youtube.com/watch?v=V6x6Wawldds

父 Dalakhani、2代父 Darshaan はいずれも仏ダービー馬。したがって今回、3代連続で仏ダービー制覇を成し遂げたことになります。いずれもアラン・ド・ロワイエ=デュプレ調教師の管理馬です。2代母 Fair Salinia は英オークス(G1)など3つのG1を制した名牝ですから、なかなかの良血ですね。
http://www.pedigreequery.com/reliable+man

ちなみに、3代父 Shirley Heights、4代父 Mill Reef は英ダービー馬なので、5代連続のダービー父系でもあります。

Mill Reef(英ダービー)
  ↓
Shirley Heights(英ダービー)
  ↓
Darshaan(仏ダービー)
  ↓
Dalakhani(仏ダービー)
  ↓
Reliable Man(仏ダービー)

2代父 Darshaan はアガ・カーン四世殿下のオーナーブリーディングホース。仏ダービーを制したとき2着だったのは Sadler's Wells です。殿下は Darshaan がことのほかお気に入りで、「わたしが好む多くの美点を持った馬である」と評価し、01年に死亡するまで所有する繁殖牝馬に毎年数多く交配させました。重厚でありながら瞬発力もあるという血です。最近の日本の活躍馬ではダノンシャンティに含まれています。
http://www.pedigreequery.com/darshaan

Darshaan の最高傑作は Dalakhani。凱旋門賞、仏ダービーなど9戦8勝の成績を残し、03年のカルティエ賞年度代表馬に選ばれました。
http://www.pedigreequery.com/dalakhani

昨日のエントリーで Sadler's Wells と Darshaan のニックスについて触れましたが、Dalakhani 産駒もこのパターンはよく走っており、これまでに送り出した4頭のG1馬のうち、Reliable Man を含む3頭が Sadler's Wells を母の父に持っています。そのうちの1頭、コンデュイット(BCターフ2回、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS)は日本に輸入され、10年からビッグレッドファームで種付けを行っています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2005190006/

Reliable Man と英ダービー馬 Pour Moi は血統構成がよく似ています。

          ┌ Darshaan
        ┌○┘
Reliable Man ―┤ ┌ Sadler's Well
        └○┘

          ┌ Sadler's Well
        ┌○┘
Pour Moi ―――┤ ┌ Darshaan
        └○┘

今後もこのパターンから一流馬が出てくることでしょう。

父 Darshaan、2代父 Dalakhani はアガ・カーン四世殿下のオーナーブリーディングホースでしたが、Reliable Man は違います。じつは今回の仏ダービーで1番人気に推されていたのは、殿下が所有する Baraan という馬でした。父は Dalakhani。スタートで出遅れてポツンと最後方に置かれるという最悪の競馬ながら、最後は3着まで追い込みました。
http://www.pedigreequery.com/baraan

寵愛した Darshaan の系統が3代連続で仏ダービーを制覇したのは、おそらく殿下にとっても誇らしいことだったと思います。ご自身の所有馬で成し遂げられればなおよかった、といったところでしょう。

早め先頭で2着に粘った Bubble Chic は、社台スタリオンステーションに繋養されているチチカステナンゴの子。9戦1勝(2着7回)と、どうにも詰めの甘い馬です。
http://www.pedigreequery.com/bubble+chic

今回の仏ダービーは1~3着が Nasrullah 系でした。Northern Dancer 系が圧倒的に強いヨーロッパではかなり珍しいことだと思います。

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      血 統 屋 http://www.miesque.com/
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ディープインパクトを育てた池江元調教師が、ディープの馬体を「ミルリーフそっくり」と評したのは有名ですが、それ以来なんとなくミルリーフ系の馬の画像などをチェックするようになりました。
いろいろ画像を漁るなか、ダラカニの馬体画像には、ちょっとした衝撃を受けました。
何に驚いたかというと、ダラカニの馬体にミルリーフの体型が突如として復活していたからなのです。
体型的には、ネヴァーベンド~ミルリーフ~シャーリーハイツの系統は、非常に紆余曲折があったように感じられます。
これは、ネヴァーベンド~リヴァーマン~アイリッシュリヴァーのラインが、馬体的な要素を比較的忠実に遺伝していったのとは対照的です。
リヴァーマン系が、総じてナスルーラ~ネヴァーベンドらしい馬体を伝えているのに対し、ミルリーフ系は、ミルリーフがまずネヴァーベンドと異質な体型であっただけでなく、シャーリーハイツによって更にまた別の方向へと発展していったように思えます。
シャーリーハイツの場合、ミルリーフ産駒とかネヴァーベンド系とかいうより、母系に蓄積された欧州血脈が、ナスルーラの血を得ることによって活性化した馬だと考えるほうが、実情に近いかもしれません。体型的には、BMSのハーディカヌートの影響が色濃く出ているように思われます。
そうしたことは、日本の馬場への適正の違いからも推察できます。ミルリーフの直仔は、日本でも種牡馬として成功しましたが、シャーリーハイツの仔や孫は、まったく日本の馬場に適応する産駒を出せませんでした。
そのような流れのなかから、ダラカニがミルリーフの体型を復活させたのは、ちょっと不思議な感じもします。父ダルシャーンは、シャーリーハイツ産駒としてはガッチリ型の馬体ですし、BMSのミスワキは、かなりゴツイ馬です。ダルシャーン×ミスワキの組み合せで、ダラカニのようなスマートな体型の馬が出るというのは、両親の馬体の特徴をすり合わせて考えるような馬体論では、説明がつきません。
そういえば、ディープの馬体も、サンデーやアルザオとは全く似ていません。全兄ブラックタイドの、サンデーとアルザオをミックスしたような馬体とは対照的です。
さらに、ヘイルトゥリーズン、ターントゥ、ロイヤルチャージャーと遡っても、ディープの馬体面のルーツは見当たりません。ロイヤルチャージャーは、体型的には、ナスルーラを脚長にしたような感じで、そうした体型はターントゥやヘイルトゥリーズンにも受け継がれましたが、ヘイローはあまり脚長ではなく、それはサンデーも同様です。
そうなると、ディープやミルリーフ、ダラカニの体型のルーツはどこに求めればいいのでしょうか。
また、系統の違うディープとミルリーフの体型的な類似は、なにかしらの理由があるのか、それとも単なる偶然に過ぎないのでしょうか。

ここからは、個人的な妄想に近い話になってしまいますが、画像を漁りながら父系を遡っていくと、どうもファラリスが怪しいのではないかと考えるようになりました。
見れば見るほど、ファラリスのスマートな体型こそ、ディープやミルリーフやダラカニの馬体のルーツではないかと思えてきます。
大昔のサラブレッドは、長距離戦が主流であったこともあり、概してスマートな馬体をしています。
ファラリスは、競走馬としては短距離馬でしたが、スマートで均整のとれた馬でした。当時の短距離界には、現代のスプリンターように筋肉のお化けみたいな馬は、存在しなかったでしょう。
しかし、徐々にスピードが重視されるようになり、馬の筋肉量も増えていく傾向が出てきます。ファラリスよりファロス、ファロスよりネアルコ、ネアルコよりナスルーラ・ロイヤルチャージャー・二アークティックと、より筋肉が増加していく傾向が見てとれます。
しかし、何かのきっかけで、ファラリスに限ったことではありませんが、大昔の馬の体型が顔を出すことがあるようです。そうした具合にファラリス的な体型が顔を出したのが、ミルリーフであり、ダラカニであり、ディープインパクトであると言えるのではないでしょうか。
さて、その「何かきっかけ」とは何なのかということですが、まだ漠然とした推測にすぎませんが、欧州血脈と米国血脈の掛け合わせで、低い確率ながらそのような現象が生じるように思います。
欧州血脈も米国血脈も、もとはといえば、その土地土地での競馬のあり方への適応の積み重ねによるものでしょう。したがって、欧州血脈と欧州血脈を掛け合わせても、欧州血脈らしい馬が出来るだけであり、米国血脈どうしの掛け合わせも同じことだと思います。
ところが、欧州血脈と米国血脈という、異質の文脈で発展した血を掛け合わせると、ごくまれに大昔の父祖の血が体型に現れる場合があるのではないでしょうか。
欧州血脈だ米国血脈だといっても、父系を遡れば、8割以上はファラリスに行き着き、9割以上はベンドアに行き着くのですから、ときにはファラリスの体型が隔世遺伝してもおかしくはないように思われるのです。
もちろん、欧州血脈と米国血脈を掛け合わせても、多くの場合には、両親の体型が遺伝するのが普通でしょう。
サンデー×ウインドインハーヘアの配合で生まれる確率が高いのは、ディープ的な体型ではなく、ブラックタイドのような馬だと思います。
同様に、ネヴァーベンド×プリンスキロの配合では、ミルリーフよりリヴァーマンでしょう。
ダルシャーン×ミスワキでも、ダラカニのような体型の馬は、滅多に生まれないと思われます。

ディープ産駒の馬体は、ディープ自身に似ていないと言われ、少なくとも馬体の面では自己主張に乏しい種牡馬だと考える向きもあるようです。
同じサンデー産駒でいうと、今年種牡馬デビューするダイワメジャーが、POG本を見るかぎり、自身の体型を強力に産駒へ遺伝させているのとは対照的です。
しかしながら、よくよく考え直してみると、ディープが、産駒に執拗なまでに遺伝させている特質があることに思いあたりました。
それは、薄手でスマートな体付きです。
今年の安田記念のビデオを見返すと、馬群を正面から映した場面では、リアルインパクトの馬体の幅の薄さが際だっています。3歳馬と古馬の違いもあるでしょうが、リアルインパクトは、ディープ産駒の中ではゴツイ部類の馬だけに、ちょっと驚かされました。
このことは、栗山さんが指摘されるように、スプリンター牝馬との配合でも、基本的にマイル以上に向いた馬が出ることにもつながっていそうです。母系に欧州の重厚な血が入ったサンデー産駒には、社台側は意図的にスプリンター牝馬との配合を多めにしているようですが、その中からジョーカプチーノのようなスプリンターも出すマンハッタンカフェと、スプリンターをほとんど出さないディープとは対照的です。
当初、こうしたディープの軽さは、サンデー(あるいはヘイロー)由来のものだと考えていましたが、もちろんサンデー的な要素も大きいとは思いますが、ディープの血統は、他のサンデー系種牡馬と較べて特に軽いわけではありません。
とすると、ディープの軽さは、サンデー的な要素だけでなく、欧州血脈と米国血脈の掛け合わせによるファラリス的な体型の要素も重要だと考えるようになりました。
今年の赤本および競馬王のPOG本において、栗山さんは、ディープの配合相手として、欧州血脈か米国血脈かのどちらかに偏るのは好ましくないと指摘されています。
ディープの体型が、欧州血脈と米国血脈の掛け合わせで得られたものだとすると、交配相手の牝馬も両方の血を持つのが望ましいと推測されます。
そのように考えていくと、ミルリーフやダラカニも、本来は欧州血脈や米国血脈に偏らない牝馬が適しているのではないでしょうか。ミルリーフは欧州で繋養されたため、種牡馬としてのポテンシャルを充分に発揮できなかったのかもしれません。ミルリーフ産駒の種牡馬が、欧米から様々な血の集まる日本で成功を収めたのも、偶然ではなさそうです。ダラカニも欧州で繋養されている以上、どうしても欧州血脈の強い牝馬と交配されることが多そうですが、そうなるとサドラーズウェルズとのニックス頼みになってしまうかもしれません。うまく米国血脈も活かすような配合がなされれば、もっと大きな成功を収めることも可能のような気もします。


Mill Reef
http://www.sporthorse-data.com/horse/741875/449/Horse_Mill_Reef-big.jpg
http://www.albatrozbloodstock.net/admin/library/Horses%20of%20the%20Century%20-%20Mill%20Reef.jpg

Shirly Heights
http://www.sporthorse-data.com/horse/663870/483/Horse_Shirley_Heights-_3big.jpg

Darshaan
http://www.sporthorse-data.com/horse/512818/406/Horse_Darshaan-big.jpg

Dalakhani
http://www.agakhanstuds.com/news/photos/dalakhani_conformation_large.jpg
http://www.sporthorse-data.com/horse/10450967/998/Horse_Dalakhani-_3big.jpg

Phalaris
http://www.sporthorse-data.com/horse/130321/333/Horse_Phalaris-_2big.jpg

Never Bend
http://www.sporthorse-data.com/horse/426493/353/Horse_Never_Bend-big.jpg

読み応えのある興味深い論考ありがとうございました。Mill Reef-Shirley Heights-Darshaan-Dalakhani のラインは、父系の主導権争いという面では取るに足らない存在ですが、今後ますますその重要性が高まってくるものと思われます。それはとりもなおさずアガ・カーン四世殿下の馬産哲学の勝利ではないか、という気がします。

日本における Mill Reef 系種牡馬といえば、わたしの場合はミルジョージの名が真っ先に思い浮かびます。20年以上前、『日本の種牡馬録』をめくるたびに、ミルジョージのページで手が止まったものです。ほれぼれするような好馬体でした。その後、何かの機会に Mill Reef の馬体写真を見たときに、「あっ、ミルジョージだ」と思いました。親子ですから似ていて当然なのですが、それにしても似ていました。

ミルジョージは母の父が Ragusa という重厚な血統でありながら日本で大成功しました。同じ Mill Reef 系で Dalakhani の血を受け継ぐコンデュイットにも、ぜひ成功してほしいという希望があります。かなり重厚な血統ではありますが、ご指摘のとおり、素軽いアメリカ血統を相手にすればおもしろそうです。そうした繁殖牝馬との交配チャンスを数多く得られるのは、日本に繋養されることのメリットです。

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