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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
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http://www.miesque.com/

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2011年6月 4日 (土)

Dr.Fager と In Reality のニックス(3)

Fappiano 的な遺伝子を受け継ぐ種牡馬は Fappiano 系だけではありません。Storm Cat 系の Forestry もそうです。プリークネスS(米G1・ダート9.5f)を勝った Shackleford の父です。日本ではエーシンエフダンズ(オーシャンS-2着)が代表格で、パワー型の短距離馬を多く出しています。

Forestry は産駒が出始めのころはきわめて評価が高く、つい5年前まで種付料は10万ドルを超えていました。このところ成績が停滞気味のため評価を落としており、今年は12500ドルでした。Shackleford の活躍が人気復活の契機となれば……といったところです。

Forestry が最も輝いていた時期は06年あたりでしょうか。米フロリダのファシグティプトンコールダーセールで、Forestry を父に持つ2歳牡馬がなんと1600万ドル(当時の邦貨で約18億円)で落札されました。クールモアとゴドルフィンの二大勢力が真っ向から競り合い、最終的にクールモアが手に入れました。公開調教で1ハロン9秒8という恐るべきタイムをマークしたことが直接的な材料でしたが、配合的な裏付けもバイヤーの心理に影響を与えたのではないかと思います。

この馬、のちに The Green Monkey と名付けられる2歳牡馬は、ニックスの関係にある Dr.Fager と In Reality を4・4×3という形で持っています。父 Forestry はこのニックスを Dr.Fager によって継続しているのですが、父の2代母 Surgery は Fappiano と血統構成がよく似ているので、Surgery≒Fappiano 3×3でもあります。
http://www.pedigreequery.com/the+green+monkey

      ┌ Dr.Fager
Surgery ――┤
      └ Bold Sequence(≒Gold Digger)

      ┌○┐
      │ └ Gold Digger(≒Bold Sequence)
Fappiano ―┤ ┌ Dr.Fager
      └○┘

            ┌ Nasrullah
          ┌○┘
※ Bold Sequence ―┤
  (≒Gold Digger) └ Sequence

            ┌ Nasrullah
          ┌○┘
※ Gold Digger ――┤
 (≒Bold Sequence) └ Sequence

このあたりの配合的妙味については、競り合ったクールモアとゴドルフィンは当然知っていたはずです。いかに資金力があろうと、ただ単に馬鹿っ速い時計を出した2歳馬に18億円も出すはずがありません。種牡馬としての価値が織り込まれていなければ採算がとれません。

このセールの直後、ドバイで行われたUAEダービー(首G2・ダート1800m)を、Forestry 産駒の Discreet Cat が6馬身差で圧勝し、世界的な注目を集めます。同馬はその後、アメリカへ移籍し、シガーマイルH(米G1・ダート8f)、ジェロームBCH(米G1・ダート8f)などを勝ち、通算9戦6勝の成績を残しました。こちらはゴドルフィンの所有馬です。母方に In Reality を持つので、Dr.Fager と In Reality のニックスを持っています。
http://www.pedigreequery.com/discreet+cat

プリークネスSを勝った Shackleford は「Forestry×Unbridled」ですから、セールで1600万ドル(約18億円)の値がついた The Green Monkey と同じ組み合わせ。母系の奥にはもう1本 In Reality が入るので、Dr.Fager と In Reality を4・4×4で持っています。この点も The Green Monkey と似ています。
http://www.pedigreequery.com/shackleford

The Green Monkey は3戦未勝利で引退し、とんでもなく無駄な買い物だったと嗤われましたが、少なくとも配合的な方向性は間違っていなかったような気がします。Forestry 産駒にはこのほか、Etched(米重賞3勝)、Forest Grove(米G3勝ち)、Congressionalhonor(米G3勝ち)などがニックスを継続する配合で走っています。
http://www.pedigreequery.com/etched3
http://www.pedigreequery.com/forest+grove2
http://www.pedigreequery.com/congressionalhonor

いまのところ Shackleford については、たまたまラッキーパンチが入った程度の評価ですが、半姉にアラバマS(米G1)を勝った Lady Joanne(父 Orientate)がおり、そしてニックスを刺激した好配合ですから、思った以上に奥の深い馬かもしれません。(この項終わり)

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      血 統 屋 http://www.miesque.com/
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コメント

ご指摘の通り、ShacklefordはDr.FagerとIn Reality関連のニアリークロスが特盛ですね。Bee Mac≒Iltisは、BelthazarとBusandaにも脈絡するから、UnbridledのDr.Fager≒Charediを大いに刺激して、さらにそこへSurgery≒Fappianoだから、ShacklefordはUnbridledのお化けかもしれない、と密かに思っています。夏はやや物足りないレースを続けてもらってBCクラシックで一発ドカン、と。
Forestry×Unbridledはもっと活躍馬が出ても不思議じゃないのに、あまり試されてないのか、それとも確率が低く一発屋タイプなんですかねえ。

ここ最近のプリークネスSの勝ち馬は、ケンタッキーダービー馬よりも出世する傾向があるので、なんとなく頼りなさそうに見えて意外と強いのではないか……? という気はします。BCクラシックでドカン!はありそうなシナリオですね。ウッドワードSとジョッキークラブGCは3着ぐらいで。

Forestry×Unbridled は丈夫さに欠けるところがあります。半分近くはデビューできません。ただ、当たれば大きいのでしょう。Shackleford は当たった産駒なのだと思います。

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