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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2011年5月30日 (月)

日本ダービーはオルフェーヴル

競馬を見ていて久しぶりに背中がゾクッと来ました。勝った○オルフェーヴル(1番人気)は兄も父も超えたと思います。強い馬→名馬→怪物とメタモルフォーゼしているように見えます。
http://www.youtube.com/watch?v=jkSrWqjvWuQ

同じく不良馬場だった2年前のダービーと比べ、馬場状態は今年のほうが幾分かマシでした。同じ芝2400mの青嵐賞(古馬1000万下)を含めて比較してみます。

       09年     11年
青嵐賞   2分35秒7  2分31秒8
ダービー  2分33秒7  2分30秒5

内から外までどうしようもないくらいグチャグチャだった2年前とは違い、今年は外が差せる馬場でした。第9Rの青嵐賞、第10Rのむらさき賞と、ここを通った馬が勝ちました。外が差せるといっても、たっぷり水分を含んでいることには変わりないわけで、1着オルフェーヴルの上がり34秒8、2着ウインバリアシオンの34秒7は驚異的です。結局、後ろに控えた馬のなかでも伸びてきたのはこの2頭だけ。力が抜けていたと思います。

土曜日のエントリーでご紹介した「予想のメキキ」の取材にも答えたように、オルフェーブルは配合的に道悪がマイナスになる馬ではありません。父ステイゴールドの初重賞制覇は雨中の目黒記念でしたし、産駒も総じて道悪は得意。母の父メジロマックイーンは重馬場の菊花賞を勝ち、不良馬場の天皇賞・秋では2着以下を6馬身ちぎって先頭でゴールを駆け抜けました(18着降着)。ちなみに、ステイゴールドもメジロマックイーンも池江泰郎調教師の管理馬なので、オルフェーヴルはまさに“池江血統”ですね。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008102636/

不安があるとすれば、体内に抱えた気性面の爆弾が暴発することだけ。この雨と馬場ですから道中なにがあるかわかりません。大量のキックバックを受けて平常心を失うことも考えられます。そのあたりの可能性を見越して◎デボネア(3番人気)の馬力に賭けたのですが、3コーナーで早々に手応えを失ってしまったのは意外でした。ちょっと無理筋でしたか。オルフェーヴルは直線でナカヤマナイトとぶつかり、そのあと前が狭くなるシーンもありましたが、ひるむことなく抜けてきました。このあたり、気性の強さがいいほうに出ています。

池江泰寿調教師によれば、秋は菊花賞(G1・芝3000m)を目指したいとのこと。折り合い面の懸念を払拭したいまなら距離面の不安はないでしょう。晴雨兼用、距離不問ですから、よほど強力なライバルが現れないかぎり三冠の確率は高いと思います(といいつつほかの馬に◎を打つと思いますが)。そのあとは古馬との対決。超強力4歳勢とどんな競馬をするのか興味が尽きません。ここでアッサリ負けるようでは怪物クラスとはいえないわけですが、果たして……。

そして、来年の春はぜひドバイへ遠征してほしいですね。モハメド殿下は、ダービー制覇をご自身の眼でご覧になったオルフェーヴルに対し、ほかの馬とは違う親近感を抱かれるのではないでしょうか。その父ステイゴールドがドバイシーマクラシックの勝ち馬であるならなおさらです。

ダービーを観戦された殿下のコメントは以下のとおり。JRAが発表したものを転載します。

「私は競馬を心から楽しんでいます。日本以外でもたくさんの国で馬を所有していますが、日本でも所有したいとずっと思っていました。その国で馬を持ち、日本ダービーに出る意義は大きいです。今回、愛馬が日本ダービーに出走することになり、ようやく来日することができました。日本ダービーを観戦し、東京競馬場の雰囲気、そしてダービーを応援するファンの大歓声に感銘を受けました。私はホースマンであり、競馬とは何かを知っています。レースの結果がどうなるのかは、誰にもわかりません。でも、勝つことを夢見るのが競馬なのです。今年ダメなら、また来年、そしてまた次の年へと夢が続くのです。いつも夢を持てるのが競馬です。来年もぜひ戻ってきたいと思います」

なんと素敵なコメントでしょうか。「勝つことを夢見るのが競馬なのです」「いつも夢を持てるのが競馬です」――この殺し文句は痺れます。

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      血 統 屋 http://www.miesque.com/
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日本ダービーはオルフェーヴルを参照しているブログ:

コメント

もう一頭の池江管理馬が真犯人でしたか!(昭和風)お恥ずかしい。
それにしても異常に迫力あるレースでしたね。青嵐賞で外国人騎手のワンツースリー、ジョッキー達の気合い乗りもいつも以上だったのかも知れません!

勝ち馬の強さには納得ですが、私も菊花賞は他に居ると想定してます。今年も大いに楽しめたダービーでした(笑)

オルフェーブルは強かったですね。
この馬に関しては、2歳時に京王杯でのパドックの馬体が素晴らしく、周りに吹きまくったところ、唯一の大敗ということで恥をかいた苦い記憶があります。
きさらぎ賞の頃でも非常に幼さを残した馬体で、同じステイゴールド産駒でも共同通信杯のナカヤマナイトの完成度の高い馬体とは対照的でした。そのオルフェーブルの馬体に身が入ってきたのは、皐月賞の頃からで、きさらぎ賞の馬体とは別馬のようです。
これからどこまで強くなるのか楽しみですし、ブエナビスタやルーラーシップとの対戦も今からわくわくしますね。
ちょっとあざとい提案なのですが、血統屋緊急企画として「ステイゴールド好配合馬リスト」というのは如何でしょうか。
ディープ産駒については、ダービーもオークスも雨に泣かされましたが、秋にはきっと巻き返してくれるものと期待しています。

一年間、ありがとうございました。お疲れ様でした。

素人の、下手の横好きの分際で、栗山さん、MJさん、Kuwaさんと出逢い、自分自身新たな競馬の楽しみ、奥深さに目覚めたこと。
本当に感謝してもしきれない感謝の気持ちが湧いてきます。

私自身、ベルシャザールに◎を打てたこと。

今までとは違うダービーへの想い。

関わるすべての人たちへの感謝。

そして最後の最後にモハメド殿下のコメント。

今までも、ダービーを見るときは正座してましたが、涙が流れたのは今年が初めてでした。

新たな一年、また勉強させてもらいます。

ありがとうございました。

携帯電話からで申し訳ございません。
いつも楽しく拝見しています。
皐月賞と昨日のダービーの、馬群から瞬く間に抜け出しそのままゴール。というオルフェーヴルのレースぶりには驚きとても強く感じました。
気が早いですが秋に対戦するであろう現4歳世代を筆頭とする古馬勢との対決が楽しみです。
その秋、またはそれ以降のオルフェーヴルの成長というのはやはり血統的に見ても期待してよいものなのでしょうか。
競馬を見始めて間もないのですが自分の持っている知識として、父ステイゴールド、母の父メジロマックイーン。この両馬を見ただけでも成長を期待できる傾向なのでしょうか。
ご回答よろしくお願いします。

>うまポーロ様

「真犯人」というのは懐かしい響きですね^^ 本番も外国人ジョッキーが来てくれれば個人的にはいい思いができたのですが……。でも本当にいい競馬でした。菊花賞馬を探すというテーマを忘れずにこれからの夏競馬を見ていきたいと思います。

>toku 様

皐月賞というと精神的にも安定してきたときですね。やはり心身ともにグンと成長したということなのでしょう。そうでなければ大舞台で主役を張れない厳しい道なのだと思います。

4歳馬の層の厚さはかなりのものなので、正直なところ3歳馬は分が悪いと思いますが、トップに関していえばどちらに軍配が上がるか分かりません。抜け出してからの身のこなしは惚れ惚れします。疑いなくステイゴールドの傑作ですね。好配合馬リストは、できるかぎり作ってみたい気持ちはあるのですが、1冊作るのにかなりの手間暇がかかるため、いまから取り掛かると物理的に間に合わない可能性大です。すみませんが今年は見送らせていただきます……。

>ダンディ“ゲッツ”さっさん様

こちらこそ1年間ありがとうございました。年末年始のあいさつのようですが、じっさいそんな気分です。1年が終わったー!という解放感と、その一方で祭りが終わったあとの虚脱感があります。月曜日は終日腑抜け状態でした(笑)。

当ブログはダービーデイにアクセス数の過去最高記録を更新しました。ダンディ“ゲッツ”さっさん様をはじめ、閲覧してくださった方々おひとりずつに感謝の言葉を述べたい気持ちです。ありがとうございました。

その世代について1年間どれだけ考えたか、その量と深さに比例してダービーの感動があるような気がします。来年もこの感動を味わうために頑張りたいと思います。

>ニンジン様

携帯電話でもまったく問題ありませんよ。いつもお読みいただきありがとうございます。

オルフェーヴルの成長力は十分期待できると思います。父ステイゴールドも母の父メジロマックイーンも晩成型です。ステイゴールドの年齢別連対率を調べてみると“2歳<3歳<4歳”です。メジロマックイーンも同じく“2歳<3歳<4歳”。

オルフェーヴルはノーザンテースト4×3というクロスを持っていますが、ノーザンテーストは種牡馬として現役だった当時、「ノーザンテースト産駒は二度変わる」と評されたほど成長力に富むタイプでした。全兄のドリームジャーニーは2歳時にG1を勝ちましたが、本格化したのは5歳時です。こうしたことから考えて、まだ成長の余地はあるのではないかと思います。楽しみな馬です。

ご回答ありがとうございます。
なるほど、「ノーザンテースト産駒は二度変わる」ですか。これからの成長面に期待をしていきたいと思います。
オルフェーヴルはサンデーサイレン、メジロマックイーンという日本競馬の一つの時代の移り変わりを表したかのような配合ですね。
オルフェーヴルのような血統(そこまで詳しくないですが)の競走馬が活躍するのは心が躍ります。
またノーザンテーストの4×3で多いに成長を期待できるとご教授いただき、より一層楽しみです。
成長や活躍はもちろんですが、怪我なく無事に走ってくれるのが何よりです。

オルフェーヴルだけでなくこれから活躍する馬も出てくるかもしれない。
そんなまだ見ぬ期待をできるのも競馬の楽しいところだと未熟ながら感じます。

栗山さんのブログを拝見していますと、血統の裏付けの強さというものにいつも感銘を受けます。血を引いているのだから当たり前といればそれまでですが(汗)
また血統の裏付けだけでは説明できないものもあり、こういった点でも競馬の面白さを感じます。

これからも栗山さんのブログを楽しみ拝見させていただきたいと思います。
長々と失礼しましたm(__)m

“血統”というアプローチは、一見迂遠にみえて本質をストレートに突いていることが多いと思います。血統表と馬を見比べて、あれこれ推理を働かせたり、仮説を立てたりするのは楽しいですね。馬券が当たってPOGでいい馬が取れればなお楽しいです(笑)。

「ステイゴールド×メジロマックイーン」の2歳馬は、ツーオブハートの09(牝)とポイントフラッグの09(牡)の2頭です。どちらも楽しみです。

今後ともご愛顧よろしくお願いいたします。

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