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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2011年4月28日 (木)

メジロ牧場解散

この成績ではたして牧場がやっていけるのだろうかと、失礼ながら以前から心配はしていました。80年後半から90年代にかけての黄金時代に比べ、見る影もなく低迷した00年代。なぜここまで落魄したのか、その原因はひとつではないでしょう。土壌と牧草、血統、育成、人材、馬場やレーススタイルへの適性、等々……。それを検証するメジロ牧場興亡記はいずれどなたかがお書きになると思います。

ただひとつはっきりしているのは“メジロ牧場が負けた”という事実。残念ながら現在の日本競馬のなかにメジロ牧場の居場所はなかったということです。実力社会においては、時代の移り変わりのなかで浮き沈みは避けられません。社台グループといえど、永久に成功が約束されているわけではなく、ちょっとした綻びをきっかけに転落していく可能性もないとはいえません。

わたしが競馬に興味を持ち始めた80年代、ホワイト&グリーンのメジロの勝負服は、大レースになくてはならない存在でした。時代錯誤ともいえるステイヤー血統。それをハードトレーニングで鍛え上げ、中長距離の重賞を席巻していました。その秘密を知りたくてメジロの血統はよく研究したものです。スノッブ、Djakao、Charlottesville、モンタヴァル、という馬名を目にすると、いまでも胸が疼きます。英仏の伝統的なステイヤー血統を重用し、ほかの牧場には見られない上品な血統を作り上げていました。それが意図的な選択の結果であったことは、たとえばメジロエニフの配合に端的に表れています。Sicambre=Senones 3×3、Barley Corn 4×3、Tourbillon 5×5という強烈な父母相似配合。これは偶然できるものではありません。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1979101600/

メジロ牧場の全盛期を支えた武田茂男氏が独立してから成績が振るわなくなった、という話を聞いたことがありますが、内情についてはよく分かりません。父として成功したモガミが母の父として不振だった、という事情もあるでしょう。メジロマックイーン、メジロパーマー、メジロアルダンといった種牡馬は、およそ能力的な見極めがついたあとでも粘り強く交配していましたが、残念ながら結果は出ませんでした。スピード不足に懲りたのか、時代に遅れまいとしたのか、徐々にスピード系の種牡馬に軸足を移して行きました。しかし、それも実りませんでした。最近の生産馬の血統には、かつてあった香気や配合的な意思といったものが消え失せていたように思います。

馬産の歴史を振り返れば、フランスのマルセル・ブサックはある時期から生産馬がまったく走らなくなり、晩年には本業も傾いて破産。競馬事業をすべて手放しました。北米では近年、カルメット、スペンドスリフト、オーヴァーブルック、ウインドフィールズといった名門牧場が撤退を余儀なくされました。こうして解体されていくものがある一方、新しく勃興するものもあります。サラブレッド生産の歴史はその繰り返しです。

マルセル・ブサックが破産したといっても、その生産馬が現代に及ぼす影響は不滅です。カルメット、スペンドスリフト、オーヴァーブルック、ウインドフィールズにおいてもそうです。“メジロ牧場が負けた”といっても、存在そのものが否定されるわけではありません。メジロ牧場の華々しい業績は競馬史に刻まれ、人々の記憶に残ります。ドリームジャーニーやオルフェーヴルを通じて血統は受け継がれていきます。

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コメント

度々お邪魔します。

サンケイスポーツのニュースで知って自分も驚きました。最近では重賞を賑わせる馬が皆無で、黛騎手の問題でメジロの冠を耳にするぐらいでしたので心配はしてましたが、まさか解散とは…。

思えば自分が競馬にのめり込み始めた時期にメジロドーベルやメジロブライトでG1を勝ちまくっていました。

更にドーベルの生い立ちを知るにつけて、寺山修司の本を読んだりして、曰く「走るお墓」とまで寺山に言われたメジロボサツの血統のドラマ性に惹きつけられて、益々競馬が好きになりました。

つくづく寂しい限りです。

メジロドーベル、メジロブライトの世代は、いま思えばメジロ最後の輝きでしたか。寺山修司のメジロボサツの話、たしかにありましたね~。もう手元にないので細かな内容は忘れてしまいましたが。

競馬観戦にはドラマ性というものが欠かせない味付けだと思うのですが、メジロ牧場ほど豊かなドラマ性に彩られた牧場はほかになかったと思います。単なるセンチメンタリズムとは承知しつつも、その喪失感は大きいですね。

メジロ牧場の閉鎖は悲しいですが現代競馬の流れにあえて背いたのか、ついて行けなかったのかどちらにせよ厳しい世界なんだなと感じずにはいられません。
とくに残念なのは現役時代は間違いなく名牝だったメジロドーベルの子がなかなか結果を残せずなんとかならなかったのかと思ってしまいます(今年の子は初戦を見て期待していたんですが)
栗山さんはドーベルの子として見ておきたい配合ってありますか?

メジロドーベルはまだ現役の繁殖牝馬なので具体的な馬名は控えさせてください。これまでの配合のなかではスペシャルウィーク(メジロオードリー)ですね。血統構成を活かしたいい配合だと思いました。なんとかやりようはあると思うのですが……。幸い娘がたくさんいるので孫の代に花を咲かせてほしいものです。

拙文ですが、思わず書き留めました。
残念ですがこれも時代なのでしょうね…

万物流転、諸行無常ですね。

社台グループにしても、ビッグレッドにしても、大手オーナーブリーダーは調教師を完全に配下において外厩と内厩を上手くやりとりして成績をあげているというのが最近の傾向です。エイシン、ノースヒルズ、あるいはシンボリとそれぞれ岡山、鳥取、千葉に大きな育成場を構えていますが、西山、メジロといった閉鎖を余儀なくされたオーナーブリーダーには、調教師を配下におき、さらにそういう競馬場近郊の育成場を上手く利用していたという話は聞いたことがありません。

血統どうこうとはいえ、メジロはそれなりに社台系の種馬をバンバン配合していました。母系の底力は日高以上だったとは思います。だから、血統はあまり関係ないような気もします。ぶっちゃけ、外厩や調教師との付き合い方といった時代の流れへの対応が、今回は響いていたのかも知れませんね。

メジロの失敗をあれこれさぐるよりも、カントリー成功の秘密を徹底的に探った方が、競馬界のためになるとは思います。

メジロ牧場とカントリー牧場は似ているところがありますね。ハードトレーニングが売り物で一時は一世を風靡しましたが、その後成績が急落。メジロ牧場は立ち直れませんでしたが、カントリー牧場は甦りました。内情はいろいろあるかと思いますが、改革への取り組み方の差が明暗を分けたということでしょうか。

はたから見ていると、残念ながら時代に置いて行かれたというか、旧態依然とした印象は免れませんでしたね。おっしゃるような牧場、外厩、内厩を一元化させたシステムを構築できなかったのもそのひとつでしょう。その必要性に気付いたときにはすでに台所事情が許さなかったのか、あるいは過去の成功体験が邪魔をして新しいものを受け入れられなかったのか、そのあたりはよく分かりません。

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