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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2011年3月 5日 (土)

サニーブライアン逝く

いうまでもなくサラブレッドは成長する生き物です。デビューから引退まで能力がずっと一定ということはありません。充実期に入ると周囲の人々でさえ驚くような変貌を遂げることがあります。サニーブライアンはそれを劇的な形でファンに示した馬でした。

97年にクラシックを戦った世代は個性派ぞろいで強く印象に残っています。なかでもサニーブライアンは皐月賞、日本ダービーの二冠をいずれも逃げ切り、個性派でありながらチャンピオン、という魅力的なキャラクターでした。好きな馬だったのでいくつかの媒体で原稿にしたことがあります。『競馬王』にも数年前、400字詰め原稿用紙15枚ほどの文章を書きました。そこから抜粋します。

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 のちに大西直宏騎手にお会いしたときに、97年の皐月賞からダービーまでの状況について伺う機会があった。
「たしかに、皐月賞の直線のバテ方は酷かったですし、有力馬が馬場に泣いたという評価もありました。馬場が良くて広い東京に移れば、直線も長いし、有力馬が差し切れるんじゃないかとは誰もが思ったでしょうね。皐月賞を勝った時点では僕も評価は一緒で、あんだけバテちゃえば東京ではもたないな、という気はしてましたよ」
 手綱を取った大西騎手自身も、われわれ一般ファンとほぼ同じ見方をしていたというのは驚きだ。だがしかし、と彼はいう。
「皐月賞が終わってからダービーまでの7週間、馬がすごく成長して、それこそ1日1日変わっていくんですよ。他の馬に蹴られてプリンシパルSを使えなかったというアクシデントはあったんですが、稽古を休ませたのは1日だけでしたし、影響はなかったですね。本当に状態のいい馬というのは皮膚の表面に“銭型”が出るというじゃないですか。あの馬の場合、それこそ全身、首のほうまで出ていて、ああ凄いんだなぁと思いましたよ。乗っていても皐月賞前とは全然違う感じがしましたし、競走馬というのは短期間でこれだけ変わるんだなという感じがしましたね。調子の上がる馬というのは何頭も見てきましたけど、あれだけ変わったというのはあの馬だけです」
 皐月賞からダービーまでの短い期間に、サニーブライアンは別馬のように変化していたというのだ。さらに直前には、勝利を予感させる奇妙な出来事が立て続けに起きる。
「ダービーの枠順抽選では大外の18番が出るんじゃないかと予感していて、自分で抽選を引いたら18番。『やっぱり出たな』と思いましたよ。ダービーの前日には南井さん(現調教師)たちと調整ルームでマージャンをやったんですが、緑一色四暗刻というダブル役満をあがったんです。その瞬間、ああ、明日は勝てるなと確信しました」

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当時をご存じない方のために補足しますと、サニーブライアンの皐月賞制覇は、11番人気とノーマークの存在で、しかも逃げ切りだったため「フロック」という評価が大勢を占めていました。ダービーは6番人気。皐月賞の勝ち馬としてはダービー史上最低の人気でした。レースの模様は以下の映像をご参照ください。
http://www.youtube.com/watch?v=FOdVYsByiyo

春のクラシックが近づいてくると、毎年必ずサニーブライアンの教訓が脳裏をかすめます。デビュー当時に足踏みをした馬は、それ以降あまり人気にはなりません。弱かったころのイメージはなかなか払拭できないものです。3歳春はサラブレッドが大きく成長し、それまでの序列がレースごとに入れ替わる時季でもあるので、この見極めが馬券の勝敗に直結します。

今週は土曜日にチューリップ賞、日曜日に弥生賞というクラシックに向けての重要ステップレースが行われます。サニーブライアンの訃報を耳にして「サラブレッドの成長」についてあらためて考えさせられました。短期間にびっくりするような成長を見せる馬が、今年もまた現れないとも限りません。

ちなみに、大西騎手が語ったマージャンのエピソードですが、これは通常の四人マージャンではなくサンマです。念のため。

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サニーブライアン逝くを参照しているブログ:

コメント

当時の仲間内のPOGで獲られたので、もちろん馬券も買うわけもなく、チョコ含めてやられまくった記憶が強烈に残ってます。今改めて見返すと、皐月賞もそこまで低評価にするような内容でもないと思いますし、ダービーは本当に強い内容で完勝ですね。ちなみに結局チョコはうやむやなままです(^_^;)

実況アナウンサーの「これはもうフロックでもなんでもない」というセリフが、この馬に対する当時の雰囲気を端的に表していますね。こういう馬を誰かが持っていたりするとたまりません(笑)。わたしの参加していたPOGでは誰も持っていなくてセーフだったような記憶が……。

ほんと大変なことになりますね(苦笑)。Mアナの当時の実況では前年の「音速の末脚が炸裂する」と並んで、なかなかの名ゼリフで印象に残ってますね。

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