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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2011年3月

2011年3月12日 (土)

地震で開催中止

地震に見舞われた仕事部屋に入ると、まるで爆撃されたかような惨状。部屋の三方の壁に置かれた本棚から、書籍、雑誌、CD類があらかた落下し、膝丈まで埋まっていました。ここで調べ物をしていたら危なかったかもしれません。片付けをしながら数メートル先のパソコンのある場所にたどりつくまで1時間余りを要しました。幸い、パソコン本体と、電気・ガス・水道などのインフラは問題なく、物的被害は本棚の開き戸が壊れた程度で済みました。

3月11日の大井競馬は第9Rが終了した時点で開催取り止め。中止に至る経緯を大井競馬のサイトより転載します。

>【経緯】
>3月11日(金)
>14:45 地震発生
>15:05 第8競走を5分遅れで発走
>15:10 岩手地区の発売を中止
>15:20 オープス磐梯、ニュートラックかみのやま・松山・いいたて、
>    オフト大郷、道営地区の発売を中止
>15:25 大井競馬場正門・北門を開放
>15:35 浦和・船橋競馬場、オフトひたちなかの発売を中止
>15:47 開催執務委員長が第9競走の確定をもって第10競走以降の開催
>    中止を決定
>15:55 第9競走を20分遅れで発走
>16:02 第9競走確定、以降の競走を中止
http://www.tokyocitykeiba.com/news/news.php?id=2123

「大井競馬場内での怪我人、建物の損壊、競走馬等に大きな被害はありません」とのこと。

心配なのは船橋競馬場です。3月14日(月)~18日(金)に行われる予定だった開催は中止。船橋競馬のサイトによると「馬場が使用不能」になったとのこと。詳細は不明ですが、地割れや液状化現象などの可能性が考えられます。

夜7時過ぎにはJRAも土日の開催中止を発表。95年の阪神・淡路大震災の際は、震源に近い京都開催だけが中止され、中山開催は行われたのですが、今回は三場すべて中止となりました。いまは競馬どころではないと思います。被害に遭われた方々には心からお見舞い申しあげます。そして、犠牲になった方々のご冥福をお祈りいたします。

2011年3月11日 (金)

アポインホープ重賞初制覇

3月10日、名古屋競馬場で行われた3歳重賞スプリングC(ダ1800m)は、2番手追走のアポインホープ(6番人気)が抜け出して優勝しました。逃げ馬を競り潰しに行っての勝利なので着差(1馬身)以上に強かったと思います。

この馬は2月26日のエントリー「ボールドスマッシュ2勝目」で触れたことがあります。各地区の3歳有望馬、として取り上げた5頭のうち、唯一重賞を勝っていない格下馬でした。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2011/02/post-cfc1.html

なぜこの馬に注目をしたかというと、配合がおもしろかったからです。前記のエントリーにはこう記しました。「母に Capote≒Some de Lys 2×2がある。まだ格下だがこれから頭角を現しそうな馬」。今回は6番人気と低評価でしたが、素質の高さを見せつけました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103810/

母マルターズガールの配合は以下のとおり。Capote≒Some de Lys 2×2です。

              ┌ Seattle Slew
            ┌○┤
          ┌○┘ └ Too Bald
マルターズガール ―┤     ┌ Seattle Slew
          └○┐ ┌○┘
            └○┤
              └○┐
                └ Too Bald

そして、アポインホープ自身は、父アポインテッドデイの3代母 Qui Royalty が Too Bald と相似な血の関係にあるので、Qui Royalty≒Too Bald 4×4・5でもあります。
http://www.pedigreequery.com/qui+blink
http://www.pedigreequery.com/too+bald

        ┌ Royal Charger(≒Nasrullah)
      ┌○┘
Qui Blink ―┤ ┌ Dark Star
      └○┤ ┌ Nasrullah
        └○┘

        ┌ Nasrullah(≒Royal Charger)
      ┌○┘
Too Bald ―┤ ┌ Dark Star
      └○┤ ┌ Nasrullah
        └○┘

よく出来た配合ですね。La Troienne 血脈がしっかりサポートしているのでダート向きのパワーも十分です。春の大レースへ向けて順調に成長してほしいものです。

2011年3月10日 (木)

日本のダートに向く Speightstown 産駒

3月といえば調教セールの季節。アメリカのフロリダ州やカリフォルニア州で、OBS、ファシグティプトン、バレッツなどが主催する大規模なセールが行われます。これに赴く日本人ホースマンも多いことでしょう。

アメリカに繋養されいている種牡馬のなかで、日本の馬場に向いた種牡馬は何頭かいますが、“コンスタントに走るダート向きの種牡馬”として個人的に注目しているのは Speightstown。
http://www.pedigreequery.com/speightstown

現役時代にブリーダーズCスプリント(米G1・ダ1200m)など重賞を4勝した一流馬で、04年に米最優秀スプリンターに選出されました。父 Gone West、母の父 Storm Cat という血統です。

日本では過去3頭が走っています。

グリフィンゲート(OP)
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006110141/
ドスライス(準OP)
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006110106/
エーシンジェイワン(OP)
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008110077/

2頭がOP馬、1頭が準OP馬ですから“歩留まり”は最高。ダートの連対率は43.8%で、1走あたりの賞金額は358万円。これも素晴らしいですね。グリフィンゲートは490キロ前後の馬体重ですが、ドスライスとエーシンジェイワンは520~530キロの大型馬。雄大な馬格から繰り出すパワー型のスピードが日本のダートにジャストフィットするのでしょう。

2011年3月 9日 (水)

トーセンレーヴ2戦目も突破

■日曜阪神5Rの新馬戦(芝1600m)は好位追走のサトノフォワード(1番人気)が難なく抜け出しました。予想は◎○で馬単980円的中。予想を転載します。

「◎サトノフォワードは『ネオユニヴァース×クリスエス』という組み合わせ。半兄プロフェッショナル、半姉ヴィヴィッドカラーはいずれも準OP馬。母アドマイヤライトはスリープレスナイト(スプリンターズS)の半姉にあたる良血で、アドマイヤムーン、ヒシアマゾンなどが近親にいる名牝系に属している。母方にヌレイエフを持つネオユニヴァース産駒はロジユニヴァース、ゴールスキー、アイアムネオなどがおり成功している。このメンバー相手に連は外さないだろう。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103081/

本馬にはこのほか、Doubly Sure≒Mortefontaine 4×4があります。

        ┌○┐
Doubly Sure  ―┤ └ Relance(=ポリック)
        └○┐ ┌ Honeyway
          └○┘

        ┌ ポリック(=Relance)
Mortefontaine ―┤ ┌ Honeyway
        └○┘

アドマイヤムーンの2代母ケイティーズファーストにも見られるクロスです(2×2)。非主流の血で構成されたちょっとおもしろい関係ですね。芝向きの軽快さに一抹の不安があったのですが、まったくの杞憂に終わりました。3歳世代のネオユニヴァース産駒は先週も4勝と好調です。

■日曜阪神9Rのアルメリア賞(3歳500万下・芝1800m)はトーセンレーヴ(1番人気)が快勝。上がり3ハロンは33秒3でした。
http://www.youtube.com/watch?v=j7XkEsTmEUs

配合については2月13日のエントリー「トーセンレーヴ初戦突破」をご覧ください。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2011/02/post-5216.html

パドックではやや神経質そうなところを見せていましたが、デビュー戦に比べると多少力強さは出てきたような印象です。馬体に威圧感はなく、まるで少年のよう。出走メンバーで喧嘩をしたら一番弱いんじゃないでしょうか(笑)。ただ、半姉ブエナビスタも決して筋骨隆々ではなく、走らせてみるといいタイプ。よっぽど筋肉の質がいいんでしょうね。

5ハロン通過は63秒0ですから、デビュー戦に続いて今回も超スローペース。ラスト3ハロンは11秒7-10秒4-11秒5。いかにペースが遅いとはいえ「10秒4」というラップは優秀です。阪神外回りの芝は、残り600mから200mまでゆるい下り坂で、残り400mからは直線に入ります。したがって、ラスト2ハロン目は速いラップが出やすいのですが、スローペースでも10秒台後半のラップがせいぜいで、10秒台前半は稀にしか出ません。

まるで早回しの映像を見ているかのような回転の速いフットワーク。これが瞬発力の秘密です。お父さんのディープインパクトはしなやかで円みのあるフットワークだったのでそれほど似ている感じはしません。姉のブエナビスタはもう少しトビが大きいですね。血統的には距離が延びてもまったく問題ありませんが、このフットワークでは2400mはギリギリ、現状では1800m前後がベストでしょうか。もう少し成長すればおのずとフットワークも変わってくるでしょう。

問題がなければ次走は毎日杯(3月27日・G3・阪神芝1800m)に向かうようです。2戦続けて少頭数の上がり勝負、揉まれた経験なし、押せ押せのローテーション。並の馬なら十中八九消えるパターンです。トーセンレーヴが“本物”かどうかの試金石ですね。

2011年3月 8日 (火)

サンデーと Redoute's Choice は好相性

■土曜阪神3Rの未勝利戦(芝2000m)はマルカプレジオ(2番人気)が直線で抜け出しました。

このレース、デビュー戦から5戦連続2着のアドマイヤカーリンが単勝1.4倍の圧倒的1番人気に推されましたが、出遅れもあり3着。ついに指定席から滑り落ちました。勝ったマルカプレジオは初戦でトーセンレーヴの2着だった馬。この結果を見てトーセンレーヴの実力をあらためて評価し、日曜日のアルメリア賞での馬券勝負を決意された方もいらっしゃったはずです(1着でした)。

マルカプレジオの父ゴールドアリュールは、エスポワールシチー、スマートファルコン、オーロマイスターの活躍により、すっかりダート種牡馬のイメージが定着していますが、以前はタケミカヅチのような芝の重賞勝ち馬も出していました。マルカプレジオの配合はハーツクライとそっくりです。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008102938/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2001103038/

           ┌ サンデーサイレンス
         ┌○┘
マルカプレジオ ―┤ ┌ トニービン
         └○┤
           └○┐
             └ ビューパーダンス

         ┌ サンデーサイレンス
ハーツクライ ――┤ ┌ トニービン
         └○┤
           └ ビューパーダンス

芝向きのしなやかさはこの配合構成によるものでしょう。

■土曜阪神5Rの新馬戦(ダ1800m)は◎スラストライン(3番人気)が好位追走から直線で抜け出しました。
http://www.youtube.com/watch?v=Wb-8Kra_YJ4

予想は◎▲○で馬単3820円、3連単20280円的中。予想文を転載します。

「◎スラストラインは『リダウツチョイス×サンデーサイレンス』という組み合わせ。母レースパイロットはフローラS(G2)2着馬でキングカメハメハの半妹にあたる良血。父リダウツチョイスはオーストラリアのリーディングサイアー。日本にやってきた産駒はダート戦で意外に悪くない成績を残している。ダンシングショウ≒トライマイベスト3×4は力強さを感じるクロス。リダウツチョイス産駒はスピードを武器としているが、母レースパイロットはそこそこスタミナがあったので1800mはこなせそう。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103377/

血統背景は予想文に書いたとおり。そして、もうひとつ付け加えたいのはサンデーサイレンスと Redoute's Choice の意外な好相性について。日本における Redoute's Choice 産駒の出世頭ランリョウオー(準OP)、Redoute's Choice 系種牡馬スニッツェルの代表産駒ミッキーマスカット(黄菊賞)は、いずれも母方にサンデーサイレンスを持っています。Halo と Sir Ivor のニックスの効果でしょうか。ただ、あまり試みられる機会がないのが残念です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007110121/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103157/

■土曜中山9Rの黄梅賞(3歳500万下・芝1600m)はオメガブレインがしぶとく抜け出しました。
http://www.youtube.com/watch?v=YPievG_1RMk

キングカメハメハ産駒は中山芝1600mで連対率28.0%。このコースを非常に得意としており、ローズキングダムが朝日杯フューチュリティS(G1)を、カウアイレーンがターコイズ(OP)を、コスモセンサーがニューイヤーS(OP)を勝っています。

母オメガグレイスは準OP馬で、その母エリンバードは伊1000ギニー(G2)の勝ち馬。母方に Riverman または Mill Reef(両者は相似な血の関係)を持つキングカメハメハ産駒は、ローズキングダム、フィフスペトル、コスモセンサー、アドマイヤテンクウなど活躍馬が目立ちます。配合的には文句なし。戦績どおりマイル前後がいいタイプでしょう。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008102810/

2011年3月 7日 (月)

弥生賞はサダムパテック

弥生賞は過去6年、1番人気馬が〔5・1・0・0〕という成績。実力馬がしっかり力を示すレースです。今回は何が1番人気になるのか週始めには分からないくらいの混戦でしたが、最終的に最も多くの支持を集めた◎ピサノパテックが快勝。実力が一枚上でした。
http://www.youtube.com/watch?v=evo3LekIo3Q

『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』『ウマニティ』に提供した予想は◎△で馬単3130円、◎△▲で3連単18840円的中。予想文を転載します。

「◎サダムパテックは『フジキセキ×エリシオ』という組み合わせ。父がフジキセキで母方にミスタープロスペクターが入るパターンは成功方程式のひとつ。カネヒキリ、エイジアンウインズ、コイウタをはじめ多くの活躍馬が出ている。この基本ラインに、重厚なエリシオとホイストザフラッグが入って底力が添えられている。フジキセキ産駒でクラシックを狙うとしたらこういうタイプだろう、と思わされる好配合馬。脚長の体型なので基本的にはコーナーが緩く直線の長いコースに向いているが、前走の朝日杯フューチュリティSよりも距離が2ハロン延び、流れが落ち着きそうなので条件は大幅に好転する。溜めて切れるこの馬の出番だ。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008102652/

前走の朝日杯フューチュリティS(G1・芝1600m)は4着。コース設定、スタートの出遅れ、その後のレース運びに持ち味が殺され、力を出し切れなかった敗戦でした。予想文にも書いたとおり今回は大幅に条件が好転するので順当な勝利だったと思います。本番を見据えての仕上げで身体には余裕がありました。上積みもあるはずです。

ただ、予想文にも書いたとおり、脚を溜めて発揮する瞬発力が最大の持ち味なので、トライアルタイプ、という可能性も若干ながらあります。一般的な傾向として、少頭数のトライアルはペースが緩く、多頭数の本番はペースが上がります。スローペースの今回は上がり34秒2という切れ味でねじ伏せましたが、脚を溜められなかった朝日杯で脆さを見せたように、ペースが上がった本番で案外……というシーンも多少は想定しておくべきかもしれません。エリシオと Hoist the Flag の底力に期待です。

2着△プレイ(7番人気)は先団でうまく立ち回りました。強いメンバー相手に善戦してきており弱い馬ではありません。混戦の年は先に行ける馬を軽視してはならない、というのは鉄則です。

3着▲デボネア(5番人気)は距離ロスなくインを回った佐藤哲三騎手が上手かったですね。アグネスタキオン産駒ですが、母ヴェルヴェットクイーンは「Singspiel×シャーディー×Relkino」という持続型の血統。ハイペースへの耐久力はあると思います。大穴候補として本番でもちょっとおもしろい存在です。

しんがり11着に沈んだ○ターゲットマシン(2番人気)は、ゲート入りをさんざん渋り、レースでもハミを噛んで行ってしまいました。明らかに平常心を欠いていましたね。参考外の一戦でしょう。ホープフルSのディープサウンド、シンザン記念のドナウブルー、フェアリーSのイングリッドなど、ディープインパクト産駒は気性面の自爆によって人気を裏切るシーンをたびたび目にします。優等生が突然キレるようなもので、兆候が探りづらいだけに難しいところです。

2011年3月 6日 (日)

チューリップ賞はレーヴディソール

どう考えても負ける要素が見当たらないレースでしたが、勝ちっぷりは想像以上。最後までムチを使うことなく、最後の1ハロンは軽く流していました。それでいて上がり33秒6。ダイワスカーレット、ウオッカ、ブエナビスタの列に加わる存在でしょう。ゾクッとしました。
http://www.youtube.com/watch?v=rJgZ9TXZv5M

「自分がいままで乗ってきた馬のなかでも、これほどのインパクトのある走りを見せてくれる馬というのはいなかったんで、ホントにどこまで強くなっていくのか、楽しみしかないです」と、福永祐一騎手。「ボク自身もこれほど楽に重賞を勝てたことっていままでないです」。

遠回しに“シーザリオよりも上”といっているわけで、これは破格の評価です。脚もとのトラブルさえなければ、いずれ海外の大レースに打って出る馬なのでしょう。1月22日に放送されたテレビ東京『ウイニング競馬』のインタビューで、福永騎手はレーヴディソールについて次のように評しました。

「これまでも切れ味のある牝馬に乗ってきましたけど、レーヴディソールは重厚感もありパワーもある。いままでにいなかったタイプ」

このコメントを聞くと、海外の深い芝への適性も十分ではないかと思います。

数多い芦毛の名牝のなかで、世界的に最も有名なのは“白面の魔女”の異名をとった Petite Etoile(プティトエトワール)ではないでしょうか。アガ・カーン四世殿下の父アリ・カーン王子の所有馬で、通算成績19戦14勝。その牝系から約半世紀を経て Zarkava(凱旋門賞など7戦全勝)が誕生したことでも話題になりました。
http://www.pedigreequery.com/petite+etoile
http://www.pedigreequery.com/zarkava

以下の映像は、Petite Etoile が逃げ馬をとらえ損ねて2着に敗れた60年のキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(芝12f)。
http://www.youtube.com/watch?v=Ddcl5fj2rwI

意識して見るからそう思うのかもしれませんが、Petite Etoile とレーヴディソールはなんとなく身のこなしなどが似ているような……。

いずれヨーロッパの大レースの主役を務めることもあるのでは? “21世紀の Petite Etoile”になるのでは? ……などと、とめどなく妄想が広がるくらい、今回のレーヴディソールの勝ちっぷりは鮮やかでした。予想は◎▲△で3連単2930円的中。予想文は省略します。

2011年3月 5日 (土)

サニーブライアン逝く

いうまでもなくサラブレッドは成長する生き物です。デビューから引退まで能力がずっと一定ということはありません。充実期に入ると周囲の人々でさえ驚くような変貌を遂げることがあります。サニーブライアンはそれを劇的な形でファンに示した馬でした。

97年にクラシックを戦った世代は個性派ぞろいで強く印象に残っています。なかでもサニーブライアンは皐月賞、日本ダービーの二冠をいずれも逃げ切り、個性派でありながらチャンピオン、という魅力的なキャラクターでした。好きな馬だったのでいくつかの媒体で原稿にしたことがあります。『競馬王』にも数年前、400字詰め原稿用紙15枚ほどの文章を書きました。そこから抜粋します。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 のちに大西直宏騎手にお会いしたときに、97年の皐月賞からダービーまでの状況について伺う機会があった。
「たしかに、皐月賞の直線のバテ方は酷かったですし、有力馬が馬場に泣いたという評価もありました。馬場が良くて広い東京に移れば、直線も長いし、有力馬が差し切れるんじゃないかとは誰もが思ったでしょうね。皐月賞を勝った時点では僕も評価は一緒で、あんだけバテちゃえば東京ではもたないな、という気はしてましたよ」
 手綱を取った大西騎手自身も、われわれ一般ファンとほぼ同じ見方をしていたというのは驚きだ。だがしかし、と彼はいう。
「皐月賞が終わってからダービーまでの7週間、馬がすごく成長して、それこそ1日1日変わっていくんですよ。他の馬に蹴られてプリンシパルSを使えなかったというアクシデントはあったんですが、稽古を休ませたのは1日だけでしたし、影響はなかったですね。本当に状態のいい馬というのは皮膚の表面に“銭型”が出るというじゃないですか。あの馬の場合、それこそ全身、首のほうまで出ていて、ああ凄いんだなぁと思いましたよ。乗っていても皐月賞前とは全然違う感じがしましたし、競走馬というのは短期間でこれだけ変わるんだなという感じがしましたね。調子の上がる馬というのは何頭も見てきましたけど、あれだけ変わったというのはあの馬だけです」
 皐月賞からダービーまでの短い期間に、サニーブライアンは別馬のように変化していたというのだ。さらに直前には、勝利を予感させる奇妙な出来事が立て続けに起きる。
「ダービーの枠順抽選では大外の18番が出るんじゃないかと予感していて、自分で抽選を引いたら18番。『やっぱり出たな』と思いましたよ。ダービーの前日には南井さん(現調教師)たちと調整ルームでマージャンをやったんですが、緑一色四暗刻というダブル役満をあがったんです。その瞬間、ああ、明日は勝てるなと確信しました」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

当時をご存じない方のために補足しますと、サニーブライアンの皐月賞制覇は、11番人気とノーマークの存在で、しかも逃げ切りだったため「フロック」という評価が大勢を占めていました。ダービーは6番人気。皐月賞の勝ち馬としてはダービー史上最低の人気でした。レースの模様は以下の映像をご参照ください。
http://www.youtube.com/watch?v=FOdVYsByiyo

春のクラシックが近づいてくると、毎年必ずサニーブライアンの教訓が脳裏をかすめます。デビュー当時に足踏みをした馬は、それ以降あまり人気にはなりません。弱かったころのイメージはなかなか払拭できないものです。3歳春はサラブレッドが大きく成長し、それまでの序列がレースごとに入れ替わる時季でもあるので、この見極めが馬券の勝敗に直結します。

今週は土曜日にチューリップ賞、日曜日に弥生賞というクラシックに向けての重要ステップレースが行われます。サニーブライアンの訃報を耳にして「サラブレッドの成長」についてあらためて考えさせられました。短期間にびっくりするような成長を見せる馬が、今年もまた現れないとも限りません。

ちなみに、大西騎手が語ったマージャンのエピソードですが、これは通常の四人マージャンではなくサンマです。念のため。

2011年3月 4日 (金)

ハブルバブルとブサック血統(後)

ブリーダーズCターフ(米G1・芝12f)2連覇、キングジョージ六世&クイーンエリザベスS(英G1・芝12f)など4つのG1を制したコンデュイット(ビッグレッドファームで繋養中)は、昨日のエントリーで触れた Sadler's Wells と Darshaan のニックスを持つ近年の代表馬といえるでしょう。ハブルバブルの母ラヴアンドバブルズはこれと配合構成がよく似ています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a0106a6/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2005190006/

             ┌ Riverman
           ┌○┤ ┌ Nureyev(≒Sadler's Wells)
           │ └○┘
ラヴアンドバブルズ ―┤ ┌○┐ ┌ Abdos
           └○┤ └○┘
             │ ┌ Miswaki
             └○┘

             ┌○┐ ┌ Abdos
           ┌○┤ └○┘
           │ │ ┌ Miswaki
コンデュイット ―――┤ └○┘
           │ ┌ Sadler's Wells(≒Nureyev)
           └○┤   ┌ Riverman
             │ ┌○┘
             └○┘

要するに、欧州芝2000~2400mあたりに適性が感じられる底力とスタミナに優れた血統ですね。これとディープインパクトが掛け合わされて誕生したのがハブルバブルです。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008104879/

母方に Riverman を持つディープインパクト産駒は、シーズン開幕前から高く評価してきました。Pocahontas≒River Lady が生じ、それらに含まれる Roman がディープインパクトの構成要素のひとつの核なので、好結果が期待できるのではないかと考えたからです。

また、一昨日のエントリーに記したとおり、Lyphard、Mr.Prospector、 “Northern Dancer & Special”を併せ持つディープインパクト産駒なので、トーセンラー、パッションダンスと配合構成が似ています。

Busted 4×5はあまり見かけないクロスです。Busted 自身は古馬になってキングジョージ六世&クイーンエリザベスS(芝12f)を制した晩成型のステイヤー。底力とスタミナの供給源として近年のイギリスでは有数のもので、長くいい脚を使うのが特長です。先週の中山記念を快勝したヴィクトワールピサにも Busted は含まれています。
http://www.pedigreequery.com/busted

ハブルバブル自身は、Busted に加えそれと構成が近い Alcoa という血が入るので、Busted≒Alcoa 4×5・5。昨日の Akarad の解説で同馬が Delleana≒Carissima 5・4×5を持つと記しましたが、要するにこれは Donatello の母と Pharis の母の関係です。それぞれが Donatello の孫にあたる Busted≒Alcoa のクロスはこれを強化することになるので好ましいですね。

予想ではハブルバブルを○としましたが、これは同じディープインパクト産駒のペルレンケッテが◎だったからです。坂路50秒5という時計には逆らえません。イレ込みやすい気性のようですが、こちらも母方にドイツ血統を持つ魅力的な配合馬なので、いずれ出てくるでしょう。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103309/

ディープインパクト産駒はアメリカ血統と相性が良く、そうした配合はコンスタントに走ります。ただ、リベルタス、トーセンラーといったクラシックディスタンス向きのトップクラスは、ヨーロッパの重厚なスタミナ血脈を兼備しています。ハブルバブルもこれに連なるパターンです。レースぶりを見るかぎり将来性豊かな逸材であることは間違いないでしょう。本質的には3歳夏を越してからのタイプかもしれませんが、長い直線が合っていると思われるので、オークスには向くはずです。次走は3月19日のフラワーC(G3・芝1800m)。アッサリ勝つようなら3歳牝馬の勢力図が大きく変動します。

2011年3月 3日 (木)

ハブルバブルとブサック血統(前)

日曜阪神5Rの新馬戦(芝1800m)は、ディープインパクト産駒の○ハブルバブル(2番人気)が後続を5馬身ちぎって快勝しました。
http://www.youtube.com/watch?v=3UZVnUZ4NQk

牝馬限定戦ではありましたが強かったですね~。勝ちタイムは1分48秒0。上がり3ハロン34秒1はメンバー中1位で、2位を1秒2上回っています。同日、同コースで行われた3歳未勝利戦(3R)は、ほとんど同じようなラップを刻んで1分48秒6。個人的にこの未勝利戦はそこそこレベルが高いと考えているので、これを上回ったのですから価値はあると思います。リスポリ騎手によれば、レース中に落鉄し、ステッキは使っていないとのこと。

母ラヴアンドバブルズはバブルガムフェロー(天皇賞・秋、朝日杯3歳S)と同じ一族で、現役時代にクロエ賞(仏G3・芝1800m)を勝っています。母の父 Loup Sauvage はイスパーン賞(仏G1・芝1850m)など3つの中距離重賞の勝ち馬。ドバイワールドC(首G1・ダ2000m)3着という成績もあるので、軟弱な芝馬ではありませんでした。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008104879/

母ラヴアンドバブルズは一見してアガ・カーン的な匂いを感じさせる配合ですね。Never Bend と Akarad がその象徴です。

アガ・カーン四世殿下はかつて「わたしは Never Bend の熱烈な信者である」と語ったくらい、Never Bend の血を高く評価しています。その母の父 Djeddah がフランスの伝説的な名生産者マルセル・ブサックの生産馬であることも大きな理由でしょう。Durban=Heldifann 3×2というブサックらしい全きょうだいクロスが施されています。こうした特殊な配合が代を経ても素晴らしい活力を伝えることを、アガ・カーンは理解していました。
http://www.pedigreequery.com/djeddah

マルセル・ブサックは78年に破産。20世紀半ばに栄華を誇ったブサック帝国の遺産はアガ・カーンに受け継がれました。Akarad はそのなかに含まれていた1頭です。凱旋門賞を勝った名牝 Akiyda の全兄、日本に輸入された仏ダービー馬アカマスの半弟にあたる良血で、現役時代にサンクルー大賞典(仏G1・芝2500m)を勝ちました。スタミナと底力、道悪適性は抜群ですが、スピードに欠けるところがあります。その産駒のナトルーンが種牡馬として日本に入りましたが成功しませんでした。

配合にはブサックらしい意匠が凝らされています。Cordova≒Arbar 3×3(あるいは Caravelle≒Arbar 4×3)で、Cordovilla≒Gloriana 2×3でもあります。Delleana≒Carissima 5・4×5も見逃せません。ブサック血脈はそれぞれ互いに近い関係にあるので、自然にこのようなクロスが生じるという側面もあるでしょう。ブサック流の特殊な凝縮は主流血統に対して異系の活力をもたらす働きがあります。昨今のドイツ血統の流行はこれと同じ理屈ですし、アガ・カーンが主流から外れた血の導入を心がけて牝系を育てているのも、主流血統と出会った際のインパクトを期待してのものでしょう。
http://www.pedigreequery.com/akarad

Never Bend と Akarad を併せ持つ母ラヴアンドバブルズには、Djeddah≒Tourzima 5×6という4分の3同血クロスがあります。アガ・カーンが愛してやまない Darshaan にはこのクロス(5×5)があり、また、世界的によく知られた Sadler's Wells と Darshaan のニックスは、これを継続していることが成功要因でしょう。前述のナトルーン産駒で最も賞金を稼いだエスジーフラット(中山金杯-3着)は、ラヴアンドバブルズと同じく Never Bend と Akarad を併せ持っています。(続く)
http://www.pedigreequery.com/darshaan
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1990106875/

競馬王 2011年11月号
『競馬王11月号』の特集は「この秋、WIN5を複数回当てる」。開始から既にWIN5を3回的中させている松代和也氏の「少点数に絞る極意」、Mr. WIN5の伊吹雅也氏が、気になる疑問を最強データとともに解析する「WIN5 今秋の狙い方」、穴馬選定に困った時のリーサルウェポン、棟広良隆氏&六本木一彦氏の「WIN5は『穴馬名鑑』に乗れ!」、オッズから勝ち馬を導き出す柏手重宝氏の「1億の波動(ワオ!)」、亀谷敬正氏&藤代三郎氏が上位人気の取捨を極める「迷い続ける馬券術」、夏競馬期間中WIN5を6戦3勝している秘訣を探る「赤木一騎の次なる作戦」など、この秋、一度ならず二度、三度とWIN5を的中させるための術が凝縮されています!! また「大穴の騎手心理」では、世界を股にかけるトップジョッキー・蛯名正義騎手をゲストにお迎えしました。その他、今井雅宏氏の「新指数・ハイラップ指数大解剖」や、久保和功氏の「京大式・推定3ハロン」など、盛り沢山の内容となっています!!