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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2011年2月14日 (月)

共同通信杯はナカヤマナイト

今年の3歳牡馬戦線は、抜けた馬が存在せず、トップクラスの力が拮抗しているのでおもしろいですね。こういう年にしっかり馬券を取れる人が上手いのでしょう。今回私はまったくダメでしたが……^^

△ナカヤマナイト(3番人気)は終始インにこだわった柴田善臣騎手のファインプレーですね。外に出していたら届かなかったでしょう。パドックではやや太めに見えたのですが関係ありませんでした。平均よりやや遅めのペースで、先に行った馬、インを突いた馬同士での決着。外側は伸びない馬場です。
http://www.youtube.com/watch?v=MPtuFZlNTZU

ナカヤマナイトは「ステイゴールド×カコイーシーズ×マルゼンスキー」という配合。鍵となる血はマルゼンスキーの父 Nijinsky です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008105362/

父ステイゴールドはメジロマックイーン牝馬とのニックスが有名ですが、じつは Nijinsky とも好相性。シルクメビウス、アルコセニョーラ、マイネレーツェル、フェイトフルウォー、エムエスワールドなどがこのパターンに当てはまります。このうち、シルクメビウス、マイネレーツェル、エムエスワールドは Nijinsky の息子マルゼンスキーを持っています。ナカヤマナイトはこれらと配合構成の一部が似ていることになります。詳しく調べたわけではないのですが、社台系の繁殖牝馬よりも日高の繁殖牝馬のほうが Nijinsky を持つ割合が高いような気がするので、社台系の繁殖牝馬と交配する機会が少ないステイゴールドの、これは数少ないメリットといえるかもしれません。

母の父カコイーシーズは、「Alydar×Jester」というアメリカ血統ながらヨーロッパでデビューし、名馬 Nashwan(英2000ギニー、英ダービー、キングジョージ)のライバルとして活躍しました。89年のキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(英G1・芝12f)は、75年のグランディ対 Bustino を思い起こさせる素晴らしい一騎打ちでした。のちにジャパンCにも出走して3着となっています。
http://www.youtube.com/watch?v=wWIwL0rNV8w#t=6m43s
http://www.youtube.com/watch?v=CkJ31MSXtSw

種牡馬としては、競走成績で示した芝の中長距離タイプという特徴は伝えず、「Alydar×Jester」という血統どおりダート戦が活躍の舞台となっています。コンサートボーイ(帝王賞)やエスプリシーズ(川崎記念)など地方競馬における強さには定評があります。

母フィジーガールの「カコイーシーズ×マルゼンスキー」は相性がよく、ほかにラヴァリージェニオ(福島記念-3着)、ヘイアンショウグン(セントライト記念-5着)などが出ています。連対率と1走あたりの賞金額は、それ以外のカコイーシーズ産駒を大きく上回ります。ニックスと呼んでもいいでしょう。

カコイーシーズ×マルゼンスキー………………………連対率21.8%
                      1走あたり202万円
母の父マルゼンスキー以外のカコイーシーズ産駒……連対率14.2%
                      1走あたり112万円

マルゼンスキーは Flaming Page≒Buckpasser 2×2という強烈な父母相似配合の産物です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a0003bd/

            ┌ Bull Dog
          ┌○┘
        ┌○┤ ┌ Blue Larkspur
Flaming Page ―┤ └○┘
        │ ┌ Menow
        └○┤
          └○┐ ┌ Man o'War
            └○┘

          ┌ Menow
        ┌○┤ ┌ Bull Dog
        │ └○┘
Buckpasser ――┤   ┌ Man o'War
        │ ┌○┘
        └○┤ ┌ Blue Larkspur
          └○┘

「カコイーシーズ×マルゼンスキー」は Tom Fool のクロスが生じます。Tom Fool はマルゼンスキーの父母相似配合の中心的な役割(Menow と Bull Dog を併せ持つ)を担っているので、そのあたりが好結果を生む秘密ではないかと思います。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1996102218/

前述のとおり、ステイゴールドは Nijinsky 系と相性がよく、マルゼンスキーとの組み合わせでも好結果を生んでいます。母フィジーガールが持つカコイーシーズとマルゼンスキーはニックスは、マルゼンスキーの配合的エッセンスを継続するものなので、ステイゴールドとの相性の良さがさらに引き立つということなのかもしれません。カコイーシーズは大柄な馬で、産駒も総じて大きなサイズに出てきます。小柄なステイゴールドとのバランスが取れるのもいいのでしょう。

ナカヤマナイトは、前走のホープフルS(OP)で他馬よりも1キロ重い斤量を背負いながらベルシャザールのハナ差2着ですから、能力の高さは間違いないところ。ただ、カコイーシーズの血が引っ掛かって積極的に推せませんでした。こうして腰を据えて配合を眺めてみると、案外悪くないのかなという気がしてきます。勉強になりました。

◎ベルシャザール(2番人気)は4着。スタートで出負けしたのが痛かったですね。ペースが遅い序盤にジワッと位置取りを上げていったのは正解だったと思いますが、スパッと切れる脚がないので、上がり勝負となった今回は流れが不向きでした。

冒頭にも記したように、今年の3歳牡馬は実力拮抗の大混戦。同じメンバーで走っても、そのときどきの条件によってガラッと着順が入れ替わるでしょう。ですから、今回負けたメンバーを安易に評価下げするのは危険だと思います。その馬に合う条件が巡ってくれば上位争いをするはずです。

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共同通信杯はナカヤマナイトを参照しているブログ:

コメント

競馬のニュースを読んでいたら
ナカヤマナイトはセレクトセールで1050万円で取引されたとありました。
ここで質問なのですが、セレクトセールでよい評価を受ける馬というのはどういうタイプの馬なのでしょうか?
ナカヤマナイトの配合は栗山さんや笠さんのコラムを読んでいる限り結構いいと思うのですが、この価格は何故なのでしょうか?ステイゴールド産駒がまだデビューしたばっかりというのも影響しているのでしょうか?

セールで高い評価を受ける馬は、まず良血であることです。そして馬体に欠点がないこと。このふたつでしょうね。血統、馬体、どちらに力点を置くかは買い手によると思います。ナカヤマナイトはカコイーシーズの肌ですし、父ステイゴールドはコンスタントに産駒を走らすタイプではなく、ダートでツブシがきかないところがあるので、価格的には妥当なのかなという気がしますね。ナカヤマナイトがセレクトセールに出場したとき、私もたしかに見ているはずなのですが、正直記憶にありません^_^; こういう掘り出し物を見つけるところがセールの楽しさでしょう。

返信ありがとうございます。
それと、もうひとつ疑問に思っているのは「良血」とは何か、あるいはどういう馬を市場関係者は「良血」と見ているのかをお聞きしたいのですが。
 栗山さんのブログでよく新馬戦で両親は地味だが、配合がしっかりしている馬を狙って高配当をゲットしているのを見ると、まぁ私を含めて血統(特に配合)に詳しくない人には取れないのはわかります。
 しかしセレクトセールなるプロ中のプロが集まる場所では
配合の出来というのはどういう評価を受けているのですか?
両親の血統ばかりが見られて配合というのは軽視までは行かなくてもあまり重要視されていないのですか?
 少し長くなりましたが、お答えくだされば幸いです。

セリに参加される方は、それぞれ馬の判断基準をお持ちだと思います。血統に絞っていえば、兄弟や近親に活躍馬がいて、なおかつ父が著名種牡馬であるものに高値が付きます。これは誰にとってもわかりやすい基準ですね。そうした馬は、多くの方の購買意欲をそそり、競り値が高くなっていきます。

わたしの眼から見ると、配合というものはあまり考慮されていないように映ります。“走りそうもない配合なのになぜこんな高値が付くんだろう”とか、“こんな素晴らしい配合なのになぜ誰も手を挙げないんだろう”といった疑問は、セリ会場にいる間ずっと胸にあります。もちろん、馬の評価には馬体という観点も当然関わってきますし、同じ配合という観点でも、わたしと違った切り口ならば違った結論になるでしょう。

手前味噌ですが、その後の追跡調査をすると、私が高評価した馬はかなり走っています。これを読んでご興味のある方はお気軽にご連絡ください。お役に立てると思います。
http://www.miesque.com/shindan.html

負けたダノンバラードはスケールの大きさこそ感じましたが、体が固そうに見えました。むしろダートや道悪向きかも知れませんね。対してナカヤマナイトは余り目立ちませんが、欠点のない馬体をしてますね。
それにしても母の父がカコイシーズとは、(笑)言われるまで気がつきませんでした。自身は芝馬だったのに産駒はダートに強い馬が多かったですね。JCで観た覚えがありますが、首の位置こそ高いけど凡走がないのも頷ける馬だった印象があります。
兎にも角にもナイトは今後も安定した走りをみせてくれるのではないでしょうか。

カコイーシーズのジャパンCは仕掛けのタイミングが早くてもったいなかったですね。あと3秒ぐらい我慢していたら勝っていたのではないかと。もっとも、切れる脚があったわけではないので、ひょっとしたら早めスパートの粘り込み作戦だったのかもしれません。日高の雄、橋本善吉氏にゆかりの深い「カコイーシーズ×マルゼンスキー」という血統の母に、社台から出されたステイゴールドを掛けて誕生したナカヤマナイト。これに社台の良血馬たちが負かされる光景はドラマティックです。

度々おじゃまします。

カコイーシーズと言えば昔、栗山さんが書かれていた「惜敗遺伝子」の事を思い出しました。別冊宝島の記事では、コンサートボーイの東京王冠賞2着を予言されていたのが印象的です、まぁネタだったのかもしれませんが(笑)。

「惜敗遺伝子」といえばステイゴールドも現役時は勝ち味に遅い善戦マンでした。そんな「惜敗遺伝子」同士の結晶から強い馬が生まれるのもまた競馬のロマンだなぁと、感慨深いものがありました。

惜敗遺伝子! よくご存知で! たしかに書いた覚えがあります。言われてみて十数年ぶりに思い出しました。Alydar が米三冠すべて2着で、孫のコンサートボーイも南関東三冠すべて2着。ネタで書いたらそのまま決まったのでビックリしました(笑)。

ステイゴールドも確かに惜敗系でしたね。ひょっとしたらナカヤマナイトはいずれ凱旋門賞に出るかもしれません。二ノ宮厩舎も凱旋門賞では2着、2着と惜敗系。しかし、案外こういうタイプが……なんてことになったら楽しいのですが。

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