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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2010年12月29日 (水)

Hyperion とウォルター・オルストン(1)

12月10日のエントリー「Hyperion 没後50年(後)」で、以下のように記しました。

「オルストンが Hyperion をどのようにして作ったか、という具体的なプロセスについては、書き始めると長くなるので、来週あたりに概要を記したいと思います。感嘆すべきテクニックがそこには込められています。」
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/12/hyperion-4e5d.html

重要なレースが目白押しの師走は、先に書くべきことが山ほどあるため、それを優先しているうちに気がつけば年末になってしまいました。ちょっと遅れましたが、年末のエアポケットのような時間を利用して、約束どおり Hyperiion の配合について書きたいと思います。

こみ入った話になってしまうかと思いますが、時間とやる気のある方は血統表をプリントアウトし、チェック用のカラーサインペンを用意するなどして、読み進めてみてはいかがでしょうか。こみ入ってはいますが決して難しくはありません。特殊な公式も指数も出てきません。やる気さえあれば誰にでも読めるものです。そのように書いたつもりです。

                *

第17代ダービー伯爵のエドワード・スタンリーは、当時名の知れた血統研究家だったウォルター・オルストンを血統アドバイザーとして雇いました。Hyperion を作ったのは彼です。

オルストンがまず着目した血統は Pilgrimage。現役時代にクラシックレースの英1000ギニーを勝っただけでなく、牡馬相手に英2000ギニーも制した女傑です。繁殖牝馬としても英ダービーを勝った Jeddah を産み、孫の代には Swynford(英セントレジャー馬で Blandford の父)と Chaucer(ジムクラックS)を出しました。

特別な能力を備えた繁殖牝馬をインブリードによって強化する、という配合パターンは、サラブレッドの黎明期から繰り返し成功を収めてきたものです。種牡馬と違い、繁殖牝馬が一生のあいだに産む子はごくわずか。その子孫から高い確率で名馬が出現するとすれば、その繁殖牝馬は遺伝的に特別な何かを持っていると考えるべきです。

Pilgrimage のインブリードからオルストンは、Sansovino(英ダービー)、Ferry(英1000ギニー)、Selene(英3歳牝馬チャンピオン)などを生産しました。
http://www.pedigreequery.com/sansovino
http://www.pedigreequery.com/ferry
http://www.pedigreequery.com/selene

なぜオルストンが Pilgrimage のインブリードを考えたかというと、Selene の2代母 Gondolette(Ferry と Sansovino の母でもある)が、「The Palmer=Rosicrucian 3×3」という全きょうだいクロスを持っていたからでしょう。The Palmer は Pilgrimage の父なので、Pilgrimage のインブリードを作ると、自動的にこの全きょうだいクロスが継続されます。オルストンは、Gondolette の特殊な配合パターンを活かすために Pilgrimage のインブリード(The Palmer=Rosicrucian の継続)を試みたというわけです。
http://www.pedigreequery.com/gondolette

Selene は Pilgrimage 3×4のほかにも、Tristan≒Friar's Balsam 3×4を持っています。
http://www.pedigreequery.com/tristan
http://www.pedigreequery.com/friars+balsam

     ┌ Hermit
Tristan ―┤ ┌ Stockwell
     └○┤
       └○┐
         └ Queen Mary

         ┌ Hermit
         │   ┌ Stockwell
Friar's Balsam ―┤ ┌○┤
         └○┘ └○┐
               └ Queen Mary

これも Pilgrimage のクロスと同じ考えに基づくものです。というのも、Friar's Balsam の娘 Mother Siegel(Minoru の母)は、Hermit=Chanoinesse 2×3という特殊な全きょうだいクロスを持っており、Tristan≒Friar's Balsam という相似な血のクロスを作ると、自動的にこの全きょうだいクロスが継続されます。オルストンは、 Mother Siegel の特殊な配合パターンを活かすために Tristan≒Friar's Balsam という相似な血のクロス(Hermit=Chanoinesse の継続)を試みたのだと思われます。
http://www.pedigreequery.com/mother+siegel

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