2024年3月

          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            
くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

« Hyperion 没後50年(前) | メイン | 中央競馬ワイド中継、年内で終了 »

2010年12月10日 (金)

Hyperion 没後50年(後)

Hyperion を生産したのは第17代ダービー伯爵のエドワード・スタンリー。しかし、実際に配合をデザインしたのは、彼の血統アドバイザーであるウォルター・オルストンです。

サラブレッドの器は配合(つまりDNA)によって決定されます。器が小さければいくらトレーニングしようが大きなレースには勝てません。ですから、優れたサラブレッドを生み出すためには、“繁殖牝馬にどの種牡馬を交配するか”という部分にこそ、最も多くの関心と知的労力を注がなければならないと思います。聡明なダービー伯爵はそのことを理解していました。血統研究家として名高いウォルター・オルストンを招聘し、彼の手腕に牧場の将来を委ねたのです。

オルストンが Hyperion をどのようにして作ったか、という具体的なプロセスについては、書き始めると長くなるので、来週あたりに概要を記したいと思います。感嘆すべきテクニックがそこには込められています。
http://www.pedigreequery.com/hyperion

Hyperion のサイアーラインは、60~70年代にかけて日本でも一定の勢力を誇り、メイズイ、カブトシロー、タケシバオー、タイテエム、ハイセイコー、グリーングラスといったビッグレースの勝ち馬が出ました。この系統の最後の名馬は98年に皐月賞と菊花賞の二冠を制したセイウンスカイ。これ以降、Hyperion 系のクラシック勝ち馬は出ていません。日本だけでなく世界的に見ても Hyperion 系は役割を終えた感があり、これから発展しそうなラインは見当たりません。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1995107393/

ただ、サイアーラインが衰退したからといって、血脈の価値が下がるわけではありません。昨日のエントリーでトニービンを例に挙げたように、Hyperion の影響力は現代においても非常に大きいものがあります。とくに Northern Dancer に含まれている点は見逃せません。Northern Dancer が小柄だったのは、同じく小柄だった Hyperion の影響もあるのでは……とも思います。
http://www.pedigreequery.com/northern+dancer

ここ20年間のヨーロッパで最も成功した種牡馬である Sadler's Wells とデインヒルは、いずれも Northern Dancer 系で、Hyperion クロスを持っています。クラシック向きのスタミナと底力、そして成長力を補おうとするとき、Hyperion ほど頼りになる血はありません。
http://www.pedigreequery.com/sadlers+wells
http://www.pedigreequery.com/danehill

Hyperion は偶然の産物ではなく、ウォルター・オルストンの深い血統研究から誕生した傑作です。育種とは何か、サラブレッドを改良するにはどうすればよいかという大きな命題に対し、当時のイギリス生産界が出した回答です。世界ナンバーワンだったイギリス競馬は、実践的な配合研究においても世界をリードする存在でした。Hyperion の血統表を眺めて得られる感動は、そうした豊かさに触れる感動でもあります。

トラックバック

このページのトラックバックURL:
http://bb.lekumo.jp/t/trackback/427673/25564873

Hyperion 没後50年(後)を参照しているブログ:

コメント

コメントを投稿

コメントは記事の投稿者が承認するまで表示されません。

競馬王 2011年11月号
『競馬王11月号』の特集は「この秋、WIN5を複数回当てる」。開始から既にWIN5を3回的中させている松代和也氏の「少点数に絞る極意」、Mr. WIN5の伊吹雅也氏が、気になる疑問を最強データとともに解析する「WIN5 今秋の狙い方」、穴馬選定に困った時のリーサルウェポン、棟広良隆氏&六本木一彦氏の「WIN5は『穴馬名鑑』に乗れ!」、オッズから勝ち馬を導き出す柏手重宝氏の「1億の波動(ワオ!)」、亀谷敬正氏&藤代三郎氏が上位人気の取捨を極める「迷い続ける馬券術」、夏競馬期間中WIN5を6戦3勝している秘訣を探る「赤木一騎の次なる作戦」など、この秋、一度ならず二度、三度とWIN5を的中させるための術が凝縮されています!! また「大穴の騎手心理」では、世界を股にかけるトップジョッキー・蛯名正義騎手をゲストにお迎えしました。その他、今井雅宏氏の「新指数・ハイラップ指数大解剖」や、久保和功氏の「京大式・推定3ハロン」など、盛り沢山の内容となっています!!