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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2010年9月20日 (月)

Spectacular Bid のウォークオーヴァーからちょうど30年

アメリカ競馬史における名勝負は数多いのですが、なかには“勝負”にならなかったレースもあります。

1980年9月20日、米ニューヨーク州ベルモントパーク。メインレースとして組まれたウッドワードS(G1・ダ9f)の出走馬はたった1頭、Spectacular Bid のみでした。強すぎるチャンピオンに恐れをなして他馬が出走してこなかったのです。
http://www.youtube.com/watch?v=NcbHpy61bTk

ウォークオーヴァーとは単走競馬のこと。これ以降、G1レースの単走はなく、おそらく今後もないでしょう。Spectacular Bid の通算成績は30戦26勝、G1を14勝しています。明らかに普通の馬ではありません。
http://ahonoora.web.fc2.com/spectacular_bid.html

ダート10ハロンのチャールズHストラブS(G1)では、1分57秒8という世界レコードを樹立しました。このタイムはいまだに更新されることなく残っています。
http://www.youtube.com/watch?v=wDbOyu5tTF4

70年代のアメリカ競馬は名馬の宝庫です。後半は2年連続で三冠馬が誕生し、その翌年に Spectacular Bid が二冠を達成しました。

77年 Seattle Slew(三冠)
78年 Affirmed(三冠)
79年 Spectacular Bid(二冠)

Spectacular Bid は79年のベルモントS(G1)で3着に敗れ、三冠を逸しました。しかし、だからといって Seattle Slew や Affirmed よりも評価が劣っているわけではありません。ブラッドホースパブリケーションズ社が刊行した『Thoroughbred Champions:Top 100 U.S. Racehorses of the 20th Century』という本では、20世紀のアメリカ馬のなかで10位にランクされ、9位の Seattle Slew、12位の Affirmed とほぼ同格という扱いです。

Spectacular Bid は Bold Ruler 系に属し、To Market 3×3という強いクロスを持ちます。
http://www.pedigreequery.com/spectacular+bid

父 Bold Bidder はすでに Cannonade というケンタッキーダービー馬を出していました。Bold Bidder の子で日本に入ったワイルドウインター、オランテ、レックスレンジャーといった種牡馬はすべて失敗。むしろ Bold Bidder の全妹ディープディーンの牝系からギャロップダイナ(天皇賞・秋、安田記念)が出たことのほうが重要です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1980101941/

伝説のウォークオーヴァーを最後に現役を退いた Spectacular Bid は、巨額のシンジケートが組まれて種牡馬入りしました。しかし、残念ながら大失敗に終わります。

サンデーサイレンスの種牡馬シンジケートを当初アメリカで組もうとしたとき、生産者のあいだでまったく不人気だったのは、先に種牡馬入りしていた Sunny's Halo と Devil's Bag(いずれも Halo 産駒)が不振だったから、という話があります。私はもうひとつ、Spectacular Bid の母の父 Promised Land がサンデーサイレンスの母の父の父であることも理由だったのではないかと睨んでいます。サンデーサイレンスの血統表のなかにある Promised Land を見て、Spectacular Bid の大失敗を連想した生産者も少なくなかったのではないか――と。

もし仮に Spectacular Bid が成功していたら、サンデーサイレンスは日本に入っていなかったかもしれません。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a00033a/

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Spectacular Bid のウォークオーヴァーからちょうど30年を参照しているブログ:

コメント

こういうのあるんですね。かっこよすぎ。出走馬が1頭しかいないってディープインパクトが勝ったジャパンカップが頭数少ないなあという印象がありました。そんな馬が種牡馬として成功しないからわからないですな競馬は。ちょっと話はずれるかもしれないですがサンデーサイレンスの話が出たので私の素朴な疑問なんですが初期のサンデーサイレンスの仔が種牡馬としてあまり成功しなかった(タヤスツヨシ,ジェニュイン,バブルガムフェローなど)のが最近ではネオユニヴァース,マンハッタンカフェ,ゼンノロブロイなどサンデーサイレンスがいかなくなったとはいえそれだけではないような活躍ぶりでサンデー以外ではウイニングチケットがイマイチでジャングルポケットが成功しエルコンドルパサーよりキングカメハメハが成功しているのはどのような理由があるのかなあと思っています。長々と失礼しました。

種牡馬が成功するかどうかを事前に当てるのは難しいことです。これを百発百中でできる人がいればゴドルフィンあたりが巨額マネーで雇いにくるでしょうね。したがって、なぜ成功したか、なぜ失敗したかという話はどうしても後付けになりがちです。それは重々承知の上で二点ほど。

サンデーサイレンスの子についてひとつ考えられる理由は、初期と後期では繁殖牝馬のレベルに多少違いがあるかもしれない、ということです。初期のトニービン、サンデーの成功で得た資金を繁殖牝馬に投資して、海外からより優れた牝馬をどんどん買ってきたので、後期のサンデー産駒のレベルは初期に比べて高い可能性があると考えます。もっとも、これは統計を取ったわけではないので単なる推理にすぎません。

ウイニングチケットとジャングルポケットについては、繁殖牝馬の質に違いがあったと思います。社台グループがバックについているジャングルポケットと、そうではないウイニングチケットでは、やはり環境的に差があったのは事実でしょう。トニービン系は総じてサンデー牝馬と好相性なのですが、ウイニングチケットはサンデー牝馬との間に2頭しか産駒を出していません。その1頭が重賞で活躍したサンヴァレーですから、もしジャングルポケットのように大量のサンデー牝馬と交配できたら、もっといい成績を残せたのではないかと思います。ただ、サンデー牝馬が増えてきた時期にウイニングチケットはすでに下降線をたどっていたので難しかったとは思いますが。

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