2024年3月

          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            
くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

« 消えた種牡馬ボアドグラース | メイン | ディープインパクトとハーツクライの中間決算(前) »

2010年9月15日 (水)

『吉田善哉 倖せなる巨人』

昨日のエントリーで吉田善哉について記しました。『血と知と地』を取り上げたのですが、もう一冊、忘れてならないのが『吉田善哉 倖せなる巨人』(木村幸治著・徳間書店)です。善哉だけでなく3人の息子たち(照哉、勝己、晴哉)の姿も丹念に描かれており、また血統に関する話題も豊富です。いいお仕事をされているなぁと感心させられる傑作です。

病魔に冒され、自らの死期を悟った吉田善哉は、部下に命令を出します。その部分を引用します。

~~~~~~~~~~~

少しずつ善哉はロッジでの生活に慣れていき、七月も終わりが近づいた。
「おばさん、獣医の角田に来いと伝えろや」
角田が来た。
「おい、シンボリの和田(共弘)と連絡を取れ」
「で、どうするんですか?」
「おまえ、ぼんくらか?」
「はい?」
「シンボリの和田と、この俺が一緒だとほかにすることがあるのか?」
「すると?」
「一緒に、和田と馬が見てえんだよ、和田さんとじっくり馬が見たいんだ。来いと、お前から伝えろ」
角田は心の震えを覚えた。
吉田善哉が、長い馬産家人生のなかで、同じ世界で馬づくりをし、いちばん何かを感じてきた日本人が、和田共弘であったということを、いま知らされた気がしたからだ。(304頁)

~~~~~~~~~~~

和田共弘は吉田善哉の1歳年下で、スピードシンボリ、メジロアサマ、サクラショウリ、シンボリルドルフ、シリウスシンボリの生産者です。

両者とも妥協知らずの強烈な個性の持ち主ですから、その関係は必ずしも良好とはいえなかったと聞きます。対抗心もあったでしょう。しかしながら、死期が迫ったとき、吉田善哉が一番会いたいと願った人物は、ほかならぬ和田共弘だったのです。このエピソードは心を打ちますね。

残念ながら吉田善哉の希望は叶いませんでした。和田と会うことなく半月後の93年8月13日に死去。72年の生涯でした。

Amazon で検索してクリックすれば、こんな良書が安価で手に入るのですからいい時代になったものです。中古品が193円より出品されています。

トラックバック

このページのトラックバックURL:
http://bb.lekumo.jp/t/trackback/427673/25057065

『吉田善哉 倖せなる巨人』を参照しているブログ:

コメント

毎日興味深い話題を取り上げておられて、読まないと損するなぁと思っております。
昨日の話題もそうですが、吉田善哉さんが残されたものは日本競馬会にとって計り知れないものがあるんだなぁと再認識させられました。和田さんとのくだりには本当に感動いたしました。是非上記の2冊購入して読んでみたいと思っております。ご紹介ありがとうございました。
それと今年フェザーレイの仔を一口持たせていただいたので、社台の魂が入った血統と繋がりが持てた事で一層の愛着が湧いてきました。

いつもお読みいただきありがとうございます。吉田善哉の生涯を描いた2冊はおもしろすぎるので、引用したいところだらけで困ります。

ダイナガリバーがダービーを勝った86年に、NHK特集『ダービー・北の大地の戦い ~ダービー優勝馬誕生の秘密~』というドキュメンタリーが放送されたのですが、ご本人が出まくりだったという記憶があります。その後浦河町長になられた谷川牧場の谷川弘一郎さんや、杵臼斉藤牧場の斉藤繁喜さんなども出ていました。NHKアーカイブスで調べたのですが観ることができないようです。とてもいい作品なのですが……。
http://archives.nhk.or.jp/chronicle/B10001200998606010130074/

フェザーレイのパロクサイド系は60年代から根付いているので、社台の保守本流ともいえますね。重ねられた種牡馬を見ると社台の歴史そのものだなぁ~と。

コメントを投稿

コメントは記事の投稿者が承認するまで表示されません。

競馬王 2011年11月号
『競馬王11月号』の特集は「この秋、WIN5を複数回当てる」。開始から既にWIN5を3回的中させている松代和也氏の「少点数に絞る極意」、Mr. WIN5の伊吹雅也氏が、気になる疑問を最強データとともに解析する「WIN5 今秋の狙い方」、穴馬選定に困った時のリーサルウェポン、棟広良隆氏&六本木一彦氏の「WIN5は『穴馬名鑑』に乗れ!」、オッズから勝ち馬を導き出す柏手重宝氏の「1億の波動(ワオ!)」、亀谷敬正氏&藤代三郎氏が上位人気の取捨を極める「迷い続ける馬券術」、夏競馬期間中WIN5を6戦3勝している秘訣を探る「赤木一騎の次なる作戦」など、この秋、一度ならず二度、三度とWIN5を的中させるための術が凝縮されています!! また「大穴の騎手心理」では、世界を股にかけるトップジョッキー・蛯名正義騎手をゲストにお迎えしました。その他、今井雅宏氏の「新指数・ハイラップ指数大解剖」や、久保和功氏の「京大式・推定3ハロン」など、盛り沢山の内容となっています!!