ジェッタ牝系とヒンドスタン
土曜福島11Rの松島特別(1000万下・芝2000m)は、7番人気のアサヒバロン(父テンビー)が差し切って勝ちました。同馬はアサヒライジング(クイーンS、アメリカンオークス-2着、秋華賞-2着、ヴィクトリアマイル-2着)の半弟です。
その母アサヒマーキュリーはあまりにも美しい反時代的配合なので惚れずにはいられません。父ミナガワマンナはシンザン産駒の菊花賞馬。母の父ボンモーはフランス産のウルトラステイヤー血統。これほど徹底した異系配合はきわめて珍しいですね。全兄アサヒジュピターはアルゼンチン共和国杯(G2)の3着馬でした。
http://premium.netkeiba.com/db/horse/ped/1991101226/
では、血脈の物珍しさだけで惚れたのかと問われれば、答えは「NO」です。この馬が属するジェッタ牝系は、ヒンドスタンと抜群の相性を示しています。
まず、“父ヒンドスタン、母ジェッタ”という直接交配から皐月賞馬ワイルドモアが誕生しました。そして、ジェッタの娘とヒンドスタンの息子(シンザン)との交配からアサヒダイオー(カブトヤマ記念)とアサヒテイオー(日経賞)の兄弟が生まれました。これらの姪にあたるのがアサヒマーキュリーで、その父ミナガワマンナはヒンドスタンの孫です。
ジェッタ(f.1960.Nearula)
ワイルドモア(c.1966.ヒンドスタン)
アサヒタマナー(f.1968.タマナー)
アサヒダイオー(c.1975.シンザン)
タニワーデン(f.1978.ボンモー)
│ アサヒジュピター(c.1990.ミナガワマンナ)
│ アサヒマーキュリー(f.1991.ミナガワマンナ)
│ アサヒライジング(f.2003.ロイヤルタッチ)
│ アサヒバロン(c.2004.テンビー)
アサヒテイオー(c.1979.シンザン)
アサヒエンペラー(c.1983.コインドシルバー)
ジェッタの牝系には、代々、ヒンドスタン→シンザン→ミナガワマンナという親子孫が交配され、それぞれ一流馬を送り出しています。ジェッタとヒンドスタンの相性のよさは、おそらくジェッタの母 Jet Plane と、ヒンドスタンの母 Sonibai がよく似た血統構成だからでしょう。
http://www.pedigreequery.com/sonibai
http://www.pedigreequery.com/jet+plane
┌ Solario
Sonibai ―――┤ ┌ Blandford
└○┤
└ Uganda
┌ Blandford
┌○┤
Jet Plane ――┤ └ Uganda
└○┐ ┌ Solario
└○┘
代が下っても効果が維持されたのですから、両者の結びつきは強固です。一流馬がつねに一流血統から生まれるわけではありません。たとえ主流とは無縁の血統であっても、意匠を凝らした配合には、しばしば勝利の女神が微笑むのです。この一族の活躍ぶりはそれを証明しています。
非主流血脈を極限まで蓄えた上で、Sonibai≒Jet Plane という相似な血のクロスを施し、そこへ「サンデーサイレンス系×Northern Dancer 系」という主流血脈(ロイヤルタッチ)をぶつけて誕生したのがアサヒライジングです。昨今、非主流のドイツ血統が欧米の主流血統と掛け合わされて次々とハイクラスな馬を誕生させていますが、基本的にはそれと同じパターンと考えていいでしょう。
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