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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2010年5月

2010年5月31日 (月)

日本ダービーはエイシンフラッシュ

大相撲の優勝決定戦が立ち会いのはたき込みで終わってしまったような、そんな虚無感を覚えました。もちろん、ダービー勝利の価値が減ずるものではありません。レースを観戦する側として「う~ん……」という割り切れなさを感じたということです。

馬群が欅の向こうにさしかかり、1600mの通過が目視で1分41秒ぐらい。何かの間違いではないかと思いました。不良馬場だった昨年よりもさらに遅い極端なスローペースです。

優勝した△エイシンフラッシュ、2着ローズキングダムは、こういうレースに適性があったということです。スローペースでスムーズに折り合い、脚をためて最後に爆発させるという能力が問われたレースでした。スタミナはあまり関係ありませんでしたね。ちなみに1、2着馬は Kingmambo の直系の孫です。

エイシンフラッシュは「King's Best×Platini」という組み合わせ。父 King's Best は英2000ギニー(G1・芝8f)の勝ち馬で、歴史的名牝 Urban Sea(現役時代に凱旋門賞を勝ち、繁殖牝馬として Galileo や Sea the Stars を送り出す)の半弟です。母ムーンレディは牝馬ながら独セントレジャー(G2・芝2800m)を勝ちました。その父 Platini は93年のジャパンCで4着となっています。父母双方にドイツ血統が色濃く流れているのが特徴。皐月賞の差し脚は迫力十分ながら、良馬場の切れ味勝負ではサンデー系に対して分が悪いだろうと感じていたので、このメンバー相手に上がり32秒7で突き抜けたのは驚きです。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007102951/

4月22日のエントリー「勢力を拡大するドイツ血統」から一部を抜粋します。

「主要競馬国の血統は、昔の時代に比べてクロスオーバー化が進み、国ごとの個性といったものが消失しつつあります。そうした時代にあって、ドイツ型馬産によって育まれた血統が、貴重な異系――つまりは活力源――として引っ張りだこになるのは自然な成り行きです。サドラーズウェルズと結びつけばその味を引き立て、サンデーサイレンスと結びつけばその味を引き立てます。そうした万能調味料のような役割を果たしてるからこそ、ドイツ血統は世界的な成功を収めているのではないかと思います。

現代における最も重要なドイツ血統は、1974年に誕生した Surumu でしょう。『スタミナはあるが重く、道悪が上手でスピードに乏しい』といった旧来のイメージから脱した、現代性を帯びたドイツ血統です。スピードがあり、堅い馬場も苦にしません。Surumu の2代母 Suncourt はテスコボーイの母でもあります。Monsun は、母の父に Surumu があってこそ世界的な成功を収めることができたのだと思います。」
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/04/post-5cf1.html

エイシンフラッシュの母の父は Platini、その父は Surumu です。このあたりの血は、引用箇所で触れたように素軽さがあり、堅い馬場にも対応します。母ムーンレディはひょっとしたら名牝かもしれませんね。1歳下の半弟はアグネスタキオン産駒。「栗山ノート」のアグネスタキオン産駒部門で1位に挙げています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103023/

◎ヴィクトワールピサはこのペースで好発から徐々に位置取りを下げるという不可解な競馬をし、向正面では若干折り合いを欠いていました。○ペルーサは見てのとおりスタートから誤算の連続で力を出しきっていません。今回のレースは不可抗力に近い事故のようなものととらえています。個人的にこの2頭の評価は下げません。

レースが終わり、検量室のなかで11R富嶽賞の騎乗馬を待つ岩田騎手は、重圧からの解放感からなのか思いのほか晴れやかな表情でした。騎手仲間と屈託無く笑い合う姿が印象的でした。ただ、検量室を出たあと、面識のある女性記者とのやりとりでは「悔しいけど、しゃあないもん」と絞り出すように答えていました。

もうひとり、検量室から四位洋文騎手が出てきたので記者が取り囲みました。いくつかの質問に丁寧に答えたあと、ほかの騎手の心理を代弁して最後にこう締めました。

「今日はみんな悔しいんじゃない? 勝った騎手以外は」

最終レースまで馬券を楽しんだあと、京王線で新宿へ出ました。望田潤さんなど競馬通信社の元同僚数名と飲み会。誰ひとりダービーを当てた人はいませんでした。《馬鹿話9:競馬論1》ぐらいの割合で夜遅くまで楽しいひとときを過ごすことができました。

2010年5月30日 (日)

ダービー前の雑感

ダノンシャンティの骨折は残念でしたが、幸い軽度なものだったので秋には復活してほしいですね。うまくいけば毎日王冠→天皇賞・秋→香港マイル→ドバイデューティーフリーの路線でしょうか。世界の舞台で十分戦えるレベルにある馬なので、夏のあいだはじっくり体を癒してほしいものです。

さて、日曜日のダービー。30日(日)の0時10分現在、東京競馬場に雨は降っていません。東京アメッシュというサイトで観察していると、奥多摩町や青梅市あたりがときどき雨の通り道になっているほか、23区の南部から東部にかけても雨が降り始めています。ただ、その中間の府中市近辺はうまく雨雲が避けられています。降ったとしても霧雨程度でしょうか。
http://tokyo-ame.jwa.or.jp/

もしこのままいけばグッドコンディションでレースは行われそうです。土曜日の東京芝は、ごくわずかながら内側を通った馬が伸びていた印象ですが、日曜日は本番までに4レース消化するので、どこを通っても有利不利はないでしょう。

仮に多少降ったとしても、ゼンノロブロイ産駒は総じて道悪が上手ですし、ヴィクトワールピサについてはあえていうまでもありません。両雄にとってマイナス材料にはならないと思います。30日(日)の0時10分現在、単勝オッズはペルーサ2.5倍、ヴィクトワールピサ2.6倍。大接戦です。

ちなみに、99年のダービーは、ナリタトップロードとアドマイヤベガが3.9倍で並び、票数の差で前者が1番人気となりました。結果は、アドマイヤベガが1着、ナリタトップロードが2着。のちの年度代表馬テイエムオペラオーは4.2倍の3番人気で僅差の3着でした。“三強”に祭り上げられた3頭がそれぞれ持ち味を発揮してワン・ツー・スリーでフィニッシュ。思い出深いレースです。
http://www.youtube.com/watch?v=CFObzEWWHZI

2010年5月29日 (土)

すでに始まっている地方競馬の2歳戦

ブログを始めて気がついたのですが、大レースの前は意外と書くことがありません。有力馬の血統については以前にあらかた書いており、それ以上のことを書くとなると限りなく予想に近くなってしまいます。予想めいたことを事前に書くと、私の予想を売っていただいている方々にご迷惑をかけてしまうので、どうしても自粛せざるをえません。

というわけで、無難にPOGの話題を……。

JRAに先駆けて、すでに4月28日から北海道(門別)で2歳戦が始まっています。5月25日には兵庫(姫路)でも始まりました。5月27日時点で勝ち星を挙げている新種牡馬は以下の3頭。

スニッツェル〔1・0・0・0〕
ソングオブウインド〔1・0・2・1〕
ルールオブロー〔1・1・0・3〕

スニッツェルは、オーストラリアのリーディングサイアー Redoute's Choice の子。赤本の企画で“ディープインパクト以外で注目してみたい新種牡馬”として挙げた馬です(139頁)。その一部を抜粋します。

「はっきりと距離の限界があるので、クラシック云々というタイプではない。サクラバクシンオーと同じカテゴリーの種牡馬と考えればいいだろう。脚の回転の速さを活かして夏のローカルからガンガン走ってくるはず。“スニッツェル旋風”を巻き起こす可能性もあるのではないか。」

5月26日、門別8RのJRA認定フレッシュチャレンジ2歳新馬(ダ1200m)に出走したフロレアルは、9頭立ての6番人気ながら2着を8馬身ちぎって勝ちました。
http://www.chihoukeiba.jp/hokkaido/meta/vod/36/2010/05/26/362010052608.asx

おそらく稽古では動かず実戦で変わり身を見せたのでしょう。このパターンは中央でも見られるかもしれないので要注意です。2歳戦ではかなりやれそうな雰囲気を感じさせる種牡馬です。フロレアルは、母フロレアーナが「ダンスインザダーク×ノーザンテースト」というスタミナ型。父のスピードを受け止めるには悪くないですね。Nijinsky≒Storm Bird 5・4×4です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008102555/

ソングオブウインドは現役時代に菊花賞を勝ちました。初勝利を挙げた産駒モルフェソングエルはサンデーサイレンス3×3です。このクロスはこれから先どんどん目にする機会が増えていくのでしょうね。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008102540/

ルールオブローは現役時代に英セントレジャーを勝ち、英ダービーでも2着となったスタミナタイプ。キングカメハメハやエルコンドルパサーと同じ Kingmambo 産駒です。初勝利を挙げたキングロッキーは、母の父がフォーティナイナーで Mr.Prospector 3×3。父はスピード面の懸念を抱えているのでこのクロスはいいでしょう。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103436/

このほかの主な新種牡馬の成績は以下の通り。

オンファイア〔0・1・1・3〕
スズカマンボ〔0・0・3・1〕
テレグノシス〔0・0・1・0〕
デビッドジュニア〔0・0・0・1〕
タイムパラドックス〔0・0・0・1〕
リンカーン〔0・0・0・5〕

ちなみに、去年のこの時期に勝ち上がっていた新種牡馬は、ウインデュエル、ウインラディウス、スパイキュールです。ゼンノロブロイ産駒はまだデビューしていませんでした。

2010年5月28日 (金)

桑島孝春騎手、本日ラストライド

71年のデビュー以来40年。本日の浦和競馬をもって桑島孝春騎手が騎手生活に別れを告げます。

第2R(13時20分発走):ウラヌス
第5R(14時50分発走):テラノセキト
第8R(16時35分発走):ハローオンザヒル

桑島騎手については1月16日のエントリー「桑島孝春騎手、地方競馬初の通算40000回騎乗達成」でも採り上げました。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/01/post-2e26.html

最終レース終了後、18時30分頃からゴール板前走路でセレモニーが行われるそうです。

2010年5月27日 (木)

ペルーサの“弱点”

昨年の赤本のクロスレビューで、デビュー前のペルーサについて「ダートに活路を見出す可能性も」と記しました。これを書いた当時、種牡馬ゼンノロブロイについてやや懐疑的な見方をしていました。母ローミンレイチェルが芝向きとはいえないアメリカ血統で構成されているので、産駒は案外ダートにフィットするのでは、と――。

しかし、ロブロイ産駒がデビューしてみると芝適性に関して問題はなく、ペルーサの新馬戦のレースぶりも大物としかいいようのないものでした。イメージしていた馬とはまったく異なり、力馬っぽさは欠片もありません。均整のとれた馬体と、そこから繰り出す弾むようなフットワーク。まさに“目から鱗”でした。血統背景については3月20日のエントリー「ダービーへ一歩前進、ペルーサ」で触れています。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/03/post-3d05.html

ペルーサがダービーで首位争いをすることは疑う余地がありません。どこからどう見ても名馬です。しかし、弱みがあるとすれば、ここまで一度も負けていないことでしょう。

今年2月4日付の『東京スポーツ』に「魔法のムチ 武邦彦の真実」という連載記事が掲載されました。そこに、往年の名騎手武邦彦さんが、5戦全勝のロングエースで72年の皐月賞に挑んだときの心理が記されています。

「『楽に勝てるやろ』が周囲のムードだった。当然1番人気。でも僕自身は迷いながらの出走だった。

ロングは負けていない弱さがあった。皐月賞までに一つでも黒星を喫していればそこで見えるものがある。課題が見つかる。でも無敗だったがゆえにどこに弱さがあるのかがわからなかった。負ける時のパターンを見いだせずに皐月賞を迎えた。

悪いことに、そんな迷いがレースで馬に伝わってしまった。スタートしてハミをガッチリかんでそのまま折り合いを欠いてしまった。結果はランドプリンスの3着――。

弱さを知ること。何かにチャレンジする際、自分の中にある弱い部分を把握する。それがいかに大事かを痛感した皐月賞だった。

だからダービーは逆に自信満々だった。課題は折り合い面。それさえ注意して乗れば勝てる確信があった。レースはタイテエム、ランドプリンスを見ながら、この2頭よりワンテンポ仕掛けを遅らせてスパートした。今でも当時のビデオを見る時があるんだけど、完璧な騎乗。会心の勝利だったね。」

ここまで楽勝続きのペルーサ。はたして横山典弘騎手はこの馬の“弱点”を把握しているのでしょうか? あるいは、そもそもそんなものは存在しないのでしょうか? ここを難なく勝つようならシンボリルドルフ、ディープインパクトのカテゴリーに含まれる馬でしょう。

2010年5月26日 (水)

ディープインパクトとアメリカ血統

先週の平場で注目したいのは、日曜東京2Rの3歳未勝利戦(ダ1600m)を勝ったカドデュソレイユです。初戦ということもあり、ゲートはのっそり。前半は後方に控え、直線で外に持ち出すと真一文字に伸びて差し切りました。

アグネスタキオン産駒でここまでデビューが遅れ、ダートを使ったことからも察しがつくように、脚もとが丈夫ではありません。しかし、走る才能はあります。ゴール前は飛んでいました。父アグネスタキオンと相性のいい Ribot 系(Alleged)が2代母の父に入り、全体のバランスも良好。昨年の「栗山ノート」でも上位に挙げた好配合馬です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007103228/

この馬の半妹シュプリームギフトは、ディープインパクト産駒のデビュー第1号かといわれている馬です。今年の「栗山ノート」で取り上げ、公開POGや赤本でも指名しました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103205/

ディープインパクト産駒は、アメリカ血統をどう入れるかが配合の鍵ではないかと思います。ディープの母系は上品なヨーロッパ血統が主体となっています。配合相手にもヨーロッパの血が強い場合、産駒にはスピード面の不安と、杞憂かもしれませんが馬体が柔らかくなりすぎる懸念が出てきます。ディープインパクト産駒は小柄でやや細身というタイプが目に付くので、アメリカ血統をしっかり入れることで筋力の強化と馬格の充実を図り、スピード面の不安を解消できるという効果が期待できます。ただし、そのサジ加減は、初年度だけに目分量とならざるを得ません。産駒がデビューしていない段階では、種牡馬が本来的に持っているスピードとスタミナに関して、正確に把握することが難しいからです。

シュプリームギフトはそのバランスが良好と感じています。Pocahontas 5×6、Attica≒Dunce 6×6は味がいいですね。
http://www.pedigreequery.com/attica
http://www.pedigreequery.com/dunce

       ┌ Mahmoud
     ┌○┤   ┌ Teddy
     │ │ ┌○┤
Attica ―┤ └○┘ └ Plucky Liege
     │ ┌ Pharamond
     └○┤
       └○┐
         └ Alcibiades

         ┌ Pharamond
       ┌○┤
     ┌○┤ └ Alcibiades
     │ │   ┌ Teddy
Dunce ――┤ │ ┌○┤
     │ └○┘ └ Plucky Liege
     │ ┌ Mahmoud
     └○┘

ディープ産駒の配合を考える際、父のどの部分を強化すればいいかというと、現段階では Alzao の母 Lady Rebecca ではないかと考えています。Pocahontas も Attica も、Lady Rebecca に含まれる血です。

もっとも、このパターンがイマイチだった場合、それに固執することはありません。現実に即して考えを変えていきます。ディープ産駒がデビューし、走っていくにつれ、日々新しい発見があり、認識の変更を迫られることでしょう。

2010年5月25日 (火)

アドマイヤプリンス復活

東海Sのあとに行われた白藤賞(3歳500万下・芝1800m)で、5ヵ月ぶりの出走となったアドマイヤプリンスが6馬身差で圧勝しました。思わず身を乗り出してしまうような強さでした。予想は◎△○で的中。3連単は11760円でした。『web競馬王』に提供した予想を転載します。

「◎アドマイヤプリンスは『アグネスタキオン×ヘクタープロテクター』という組み合わせ。母プロモーションはクイーンC(G3)の勝ち馬で、4分の3兄に青葉賞(G2)と毎日杯(G3)を勝ったアドマイヤメイン(父サンデーサイレンス)がいる良血。休養前の京都2歳Sではヴィクトワールピサと一騎打ちの死闘を繰り広げた実績もある(4着)。久々だがここでは一枚上だろう。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007103331/

昨年のPOGで最も注目を集めた馬の1頭で、去年11月、京都2歳Sでヴィクトワールピサとマッチレースを演じた際のラップは特筆すべきものでした。4ハロン地点から9ハロン地点までの5ハロンを、内アドマイヤ、外ヴィクトワールでビッシリと馬体を併せ、12秒5-12秒4-11秒4-11秒2-11秒2というラップ。尻上がりにペースアップする息の入らない流れです。先に音を上げたのはアドマイヤプリンスで、残り1ハロンで脱落。ヴィクトワールピサはそのままトップでゴールを駆け抜けました。
http://www.youtube.com/watch?v=ZSjgru-t0OQ

2歳戦でこのラップを刻み、しかも最後の1ハロンを11秒8でまとめたヴィクトワールピサは、この時点でまずクラシック級です。速い脚を長く使いました。後半5ハロン58秒0はきわめて優秀で、2歳の芝2000m戦においてこれより速いタイムを出して勝った馬は、過去にディープインパクトしかいません。

ラストで垂れてしまったアドマイヤプリンスも、ラップの厳しさを考えれば健闘といえるもので、重賞クラスではあるだろうと感じました。続くラジオNIKKEI杯2歳S(9着)の敗因は、激走の後遺症(心理的なものも含めて)も少なからずあったのではないかと推測します。

リフレッシュして帰ってきた今回、どんなレースになるのかと興味津々でしたが、予想をはるかに上回る強さを見せてくれました。母プロモーションは、その父ヘクタープロテクターにはさほど似ず、むしろ母の父 Assert に似た渋いタイプの中距離馬で、重馬場のオークスで4着という戦績もあります。したがって、2400mぐらいまでは守備範囲。小さくまとめてしまうというヘクターの欠点に関しても、それほど心配はいらないのではないかと思います。ヴィクトワールピサにリベンジを挑むためにも、さらなる快進撃を期待したいものです。

2010年5月24日 (月)

「A Wild Ride 競馬・血統Blog」

http://blog.goo.ne.jp/boldirish

作者の takuzo さんは、私が以前働いていた競馬通信社の元同僚。競馬通信社とは血統専門誌『週刊競馬通信』を発行していた会社です。彼は90年代のはじめに1年弱ほど勤務していました。ほぼ同時期に入社したのが血統評論家の望田潤さん。おふたりは会社近くの同じマンションに住んでいました。

血統専門誌の編集部といっても、新しく入ってくる方が血統に詳しいとは限りません。しかし、takuzo さんと望田潤さんは“ホンマもん”でした。takuzo さんは、日高の競走馬生産牧場で生まれ育った生粋のホースマン。ふだんは口数が少なくクールなのですが、気に入った血統表をひとたび眺めると、感に堪えぬ様子で「この配合なまらスゲーわ!」とつぶやき、その理由を滔々と語り始める熱い男でした。「なまら」という北海道弁(とても、かなり、といった意味)は彼から知りました。takuzo さんは北海道弁で、望田さんは京都弁で、私は東京弁で、毎日のように血統について語り合ったものです。私の目の前で takuzo さんと望田さんが殴り合いの大ゲンカを始めたこともあります。まるで青春ドラマですね。

配合論を語らせたらおそらく馬産地で右に出る者はいないでしょう。その知識と洞察の深さはブログをお読みいただければご理解いただけると思います。

東海Sはシルクメビウス

ラスト3ハロンは「11秒9-12秒0-12秒1」ですから、逃げたトランセンドは決してバテたわけではなく、藤田騎手がこれ以上ないという好騎乗を見せたと思います。これを中団追走から外をマクって35秒1の脚を繰り出し、キッチリ差し切るのですからモノが違いました。予想は◎○で的中。馬単は1640円でした。『web競馬王』に提供した予想を転載します。

「◎シルクメビウスは『ステイゴールド×ポリッシュネイビー』という組み合わせ。母チャンネルワンは『ポリッシュネイビー×マルゼンスキー』でブサンダ3×5、さらにそれと血統構成が近いレリックを持っているのでパワー十分。母方のパワーと父方の瞬発力が最良の形で融合し、ハイレベルなダートホースとなった。前走は休み明けのレースとしてはまずまずの内容。休養前の実績からして一度叩いた今回は軸不動。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006106156/

昨年暮れのジャパンCダートで、エスポワールシチーに次ぐ○評価としたように、器は相当大きいと判断しています。次は帝王賞でしょうか。エスポワールは回避するとのことなのでまず連を外すことはないでしょう。

2010年5月23日 (日)

オークスは1着同着

ビッグレースの1着同着といえば1992年の帝王賞。ラシアンゴールドとナリタハヤブサが勝利を分け合いました。このとき、前者に乗っていたのが蛯名正義騎手、後者に乗っていたのが横山典弘騎手でした。当時、現場で取材をしていたのですが、ゴール前で外から襲いかかったナリタハヤブサの鞍上の横山典弘騎手は、フィニッシュラインを通過したあとガッツポーズをしました。長い写真判定のあとに同着を告げられた彼は「負けないでよかったよ、ガッツポーズしちゃったし」とつぶやきました。優勝のレイを2頭順番に肩に掛け、関係者がそれぞれ記念撮影していたのを思い出します。
http://www.youtube.com/watch?v=G9z9VdY_efo

奇しくも今回、まったく同じ蛯名正義騎手と横山典弘騎手が1着同着。何という偶然でしょうか。

サンテミリオンは「外枠」を、アパパネは「外枠」と「距離」を嫌い、どちらも△しか打てませんでした。外枠に関しては、雨でインコースが荒れてきていたことで相殺されますが、その分スタミナの要る馬場だったわけで、とくにアパパネの頑張りには脱帽しました。

ゼンノロブロイ産駒は1、3、4着と、3頭が掲示板を占めました。ここまで素晴らしい種牡馬だとは昨年のいまごろは夢にも思いませんでした。欧州血脈が主体の非サンデー系牝馬は、ゼンノロブロイと交配すればたいていうまくいきそうです。

◎アプリコットフィズは6着。現状では勝ち負けに持ち込むだけの力を持ち合わせていませんでした。騎乗した四位騎手は「枠順が出た時には、アパパネもサンテミリオンも外枠だったので、内枠が当たってしめしめと思っていましたが、今日のこの天気、馬場では結果的にアダになったと思います。道中、道悪でバランスを崩していましたから…。いい感じで抜けられましたけど、残り300mで脚が鈍ってしまいました」(ラジオNIKKEI競馬実況web)とコメントしています。体重が減り続けているので、夏の間に成長してほしいものです。

「POG公開ドラフト」無事終了しました

2時間あまりの楽しい時間を過ごすことができました。ご来場いただいた皆さまには深く感謝いたします。

1位候補のトーセンレーヴ(父ディープインパクト、母ビワハイジ)は、競合したグラサン師匠に抽選の末敗れ、獲得できませんでした。今年のドラフトの主役はグラサン師匠でしたね。井内利彰さんが思わず「まるで漫画やん」とつぶやいたほどの事態が発生しました。何が起こったかは次号『競馬王』の「グラサン師匠の鉄板競馬」に描かれる予定です。お楽しみに。

獲得馬は以下のとおりです。

母ビーフェアー(♂・父ディープインパクト)
シュプリームギフト(♀・父ディープインパクト、母スーヴェニアギフト)
レッドセインツ(♂・父ディープインパクト、母サセッティ)
母オネストリーダーリン(♀・父ディープインパクト)
テーオーアポロン(♂・父ハーツクライ、母フェアリーワルツ)
リヴォルバー(♂・父マンハッタンカフェ、母オーシャンドリーム)
アソルータ(♀・父ゼンノロブロイ、母フレンチバレリーナ)
ダノンハロー(♂・父ハーツクライ、母ペルヴィアンリリー)
キングジャズ(♂・父キングカメハメハ、母ポップコーンジャズ)
アドマイヤカーリン(♂・父ディープインパクト、母スプリットザナイト)

ディープインパクト産駒を5頭指名しましたが、どんな配合が成功するかは現状では手探り状態です。2歳戦が終わるころにはおおよその傾向が浮かび上がってくるでしょう。個々の馬の配合解説は『競馬王のPOG本 2010~2011』の「栗山ノート」に記してあります(テーオーアポロンとダノンハロー以外)。

打ち上げ会では、美野真一さん、横手礼一さん、伊吹雅也さん、山崎エリカさん、水野由加里さんと歓談。終電で帰宅すると「2ちゃんねるにスレが立ってるよ」と知り合いから連絡メールが……。

【中央競馬】血統評論家・栗山求が顕彰馬選定記者投票に異議
「エルコンドルパサーが落選を重ねるシステムはやはり問題」
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/mnewsplus/1274536459/

2010年5月22日 (土)

今年も顕彰馬選定なし

この問題に関心のある方なら誰もが「たぶんそうなるだろう」と考えていたと思います。案の定そうなりました。そして来年も、再来年も、たぶんそうなるでしょう。よほどのことがないかぎり、今後、顕彰馬は現れないと思います。投票結果は以下のとおり。
http://jra.jp/news/201005/052101.html

選定システムを簡単に説明すると、191人の投票者がそれぞれ2票ずつを投じ、144票以上(191人の4分の3以上)を獲得した馬が顕彰馬となります。問題は、有力候補が票を食い合ってしまうことです。

「選定のハードルが高いからこそ顕彰馬の価値は保たれるのだ」、というのもひとつの考え方でしょう。ただ、私個人は、エルコンドルパサーが落選を重ねるシステムはやはり問題だと思いますし、その上に成り立つ制度はやがて価値を失っていくのではないかと危惧します。

2001年に現行制度が発足してからしばらく、タケシバオーとテイエムオペラオーが票を食い合い、どちらも選定基準に届かないという事態が続きました。これは、2004年にJRA50周年事業という名目で、1人あたりの投票数を2頭から4頭に増やすという特例措置が講じられて解消しました。もし現行システムが適正なものであれば、そもそもそのような特例は不要のはずです。

過去の顕彰馬28頭を生まれた年代によって分類してみました。

30年代……2頭
40年代……4頭
50年代……4頭
60年代……4頭
70年代……4頭
80年代……6頭
90年代……3頭
00年代……1頭

平均すると10年あたり3.5頭、つまり3年に1頭程度の割合です。このぐらいの頻度で顕彰馬を誕生させるシステムを作らなければ、過去と比べてハードルが高いということなので不公平といえます。選ばれるべき馬が選ばれず、滞留馬の層がどんどん厚くなれば、本来選ばれるはずの馬がますます選ばれにくくなるという悪循環に陥り、制度そのものが危機に瀕すると思います。エルコンドルパサー、スペシャルウィーク、ダイワスカーレット、アグネスデジタルといった名馬がひしめくなかに、来年はウオッカが加わります。どの馬であろうと4分の3以上の得票は無理でしょう。

この問題を解決する手段はいくつか考えられます。たとえば、3分の2以上の票を3年連続、あるいは2分の1以上の票を5年連続で獲得したものを顕彰馬とする、というもの。

あるいは、予備投票をして候補馬を3~5頭に絞ってから、あらためて本投票を行うというもの。

システムは現実に即して変えていくものであろうと思います。何らかの改善策が講じられることを期待したいところです。

2010年5月21日 (金)

大井記念はセレン

19日に大井競馬場で行われた大井記念(ダ2600m)はセレンが1番人気に応えました。母の父がブライアンズタイムなので長い距離が合っています。
http://www.youtube.com/watch?v=kHDTnTA_f0M
http://www2.keiba.go.jp/KeibaWeb/TodayRaceInfo/RaceMarkTable?k_raceDate=2010%2f05%2f19&k_raceNo=11&k_babaCode=20

配合はシルクフェイマスと瓜ふたつ。いずれも父がマーベラスサンデーで、母方の近い世代に Roberto と Caerleon を持ちます。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2005105680/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1999104268/

         ┌ マーベラスサンデー
         │   ┌ Roberto
セレン ―――――┤ ┌○┘
         └○┤ ┌ Caerleon
           └○┘

         ┌ マーベラスサンデー
シルクフェイマス ┤ ┌ Caerleon
         └○┤ ┌ Roberto
           └○┘

マーベラスサンデーと Nijinsky(Caerleon の父)の相性は抜群です。シルクフェイマスとセレンのほかに、サイレンスボーイ、メイショウサライ、オーゴンサンデー、シゲルモトナリといった活躍馬が出ています。

母方に Nijinsky を持つマーベラスサンデー産駒は1走当たり196万円の稼ぎ。一方、非 Nijinsky のマーベラスサンデー産駒は115万円。約1.7倍の開きがあります。POGでマーベラスサンデー産駒を指名する方は少ないかと思いますが、仮に選ぶとしたらこの配合パターンがいいでしょう。基本はダート向きです。

なぜマーベラスクラウンと Nijinsky の相性がいいのかというと、父方にあるモミジ2と Nijinsky の配合構成が似ているからだと思います。

鞍上の石崎隆之騎手は54歳のベテラン。今月末をもって鞭を置くことになった桑島孝春騎手よりも1歳年下です。まだまだ元気いっぱいです。

2010年5月20日 (木)

「POG公開ドラフト」に出演します

『競馬王のPOG本2010-2011』はおかげさまで売れ行き好調とのことです。お買い上げいただいた皆さまには心から感謝いたします。その発売記念イベントとして、5月22日に白夜書房本社ビルで「POG公開ドラフト」が開催される運びとなりました。競馬王と競馬総合チャンネルのコラボレーション企画です。概要は以下のとおり。

【日時】
5月22日(土) 18:00~
※2時間程度を予定

【場所】
白夜書房本社ビル B1F BSホール
東京都豊島区高田3-10-12

【出演】
美野真一
栗山求
横手礼一
山崎エリカ
井内利彰
グラサン師匠

【司会】
水野由加里

【参加費】
無料

入場できるのは先着100名程度とのことです。参加資格として『競馬王のPOG本2010-2011』を持参、または、当日に会場でお買い求め頂ける方、という条件があるのでご注意いただければと思います。会場の地図、詳しい概要は以下のURLをご参照ください。ご来場を心よりお待ちしております。
http://www.netkeiba.com/news/?pid=news_view&no=45991&category=E

2010年5月19日 (水)

ウオッカ、2回目の交配も不受胎

アイルランドのギルタウンスタッドに繋養され、Sea the Stars との交配が試みられていたウオッカは、4月11日に続き28日の交配でも不受胎が確認されました。ちょっと気になるニュースです。

ウオッカの日本ダービー制覇は、牝馬としては64年ぶりのことでした。同じようにアメリカでは、1980年に牝馬の Genuine Risk が65年ぶりにケンタッキーダービーを勝ちました。同馬は現役を退いたあと、繁殖牝馬として苦難の途をたどり、不受胎や流産などで10年以上も産駒ができませんでした。そして、懸命の治療が続けられた結果、16歳にして初めての産駒が誕生。しかし結局、同馬は生涯に2頭の産駒しか得られませんでした。
http://www.pedigreequery.com/genuine+risk

似たような例として、1949年に凱旋門賞を勝った Coronation が挙げられます。世界的に広く知られたこの女傑はとうとう1頭の産駒も送り出すことができませんでした。子宝に恵まれなかった原因を Tourbillon 2×2のインブリードに求める向きもありますが、個人的には並外れた競走能力と何らかの関連があるように思います。Coronation の2頭の全妹は正常に子を送り出しました。
http://www.pedigreequery.com/coronation

秋華賞とエリザベス女王杯を制したファインモーションにも産駒がいません。発情もないため最近では種付けすら行われていないという話を耳にしたことがあります。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1999110187/

男勝りの活躍をした牝馬のなかには、稀にこういったタイプがいるような気がします。ウオッカの場合、まだ初年度であり、しかも3回目の種付けが残っているので、心配するのは気が早いかもしれません。朗報を待ちたいと思います。

2010年5月18日 (火)

Special Duty がまたもや繰り上がりで仏1000ギニー制覇

英1000ギニーを繰り上がりで制した Special Duty(5月6日のエントリーをご参照ください)が、今度は仏1000ギニー(G1・芝1600m)を繰り上がりで制しました。
http://www.pedigreequery.com/special+duty

1位入線も6着降着となった Liliside は、ゴール前の追い比べで内側に斜行しました。2位入線から繰り上がった Special Duty は、その外から伸びてきたので、前走の英1000ギニーとは違い、自身が不利を被ったわけではありません。相手が勝手に降着したので棚ぼたの勝利です。映像をよく見ると、クビ差2着の Baine(3位入線)は、直線に入ってまもなく内ラチ沿いで大きくバランスを崩す不利がありました。これがなければ勝っていたような気もします。
http://www.youtube.com/watch?v=sSfhFcHLfMc

これほどの強運馬はタケデンバード以来でしょうか。同馬は、72年のクモハタ記念で審判員の着順誤認により2位入線から1着となり、73年の高松宮杯では先頭を行くハマノパレードの骨折転倒により勝利をさらいました。

クラシックレースを繰り上がりによって2つ獲得するというのは考えられない確率です。“ラッキーホース”というよりも、タケデンバードがそういわれたように“魔性の馬”という形容がぴったりです。馬主のアブデュラ殿下は、06年の仏1000ギニーで、1位入線した所有馬 Price Tag が3着降着となったことがあります。今回は逆のケースなのでさぞや気分が良いことでしょう。

2010年5月17日 (月)

ヴィクトリアマイルはブエナビスタ

体調万全なら力が抜けている海外帰りの2頭が、七~八分のデキで格下馬とどう戦うのか? 結果は見てのとおりです。ブエナビスタに関しては、追い切りの映像を見るかぎり、過去最低のコンディションだろうと感じていたのですが、強かったですね。地力が違いすぎました。5月12日のエントリーで取り上げたように、切れ味に絶対の強みがある馬なので、本調子になくとも現在の府中では頑張れたということでしょう。2着のヒカルアマランサスも瞬発力勝負に強いアグネスタキオンの子です。

4着に敗れたレッドディザイアは、マイル向きではありませんし、ブエナビスタと同様、調子がイマイチだったので、今回の内容で十分でしょう。叩いて距離が延びる次走が狙い目です。

予想は完敗でした。ブエナビスタを○に下げて、代わりに◎を打ったラドラーダは13着。出負けして4コーナーで最後方にいるようではどうにもなりません。

2010年5月16日 (日)

京王杯スプリングCはサンクスノート

最初の800mが45秒9。今回を含めた直近10回のうち、良馬場で行われた8回のなかで5番目のタイム。今季の東京芝は異常ともいえる高速馬場なので、スローペースだったといっていいでしょう。これでは前が残ります。レースの上がりが33秒9ですから後方の馬は用なしです。勝ったサンクスノート(10番人気)はまるっきりノーマークでした。

◎エーシンフォワード(1番人気)は4着。追ってからが案外でした。岩田騎手は「少し元気がないですし、スタッフも一生懸命仕上げてくれてるんだけど、まだ本調子じゃない気がします。」(ラジオNIKKEI競馬実況web)とコメントしています。

日曜日のヴィクトリアマイルは、先に行った馬が有利という頭はどの騎手にもあるはずです。ただ、競り合って激烈に飛ばすという流れは想定しづらく、せいぜい58秒台の後半でしょうか。月並みな結論ですが“位置取り”と“切れる脚の有無”が重要となってきます。はっきり言えば好位につけて33秒前後で上がれる馬です。後方に控えて外を回すようでは苦しいでしょう。現在の馬場は道中の負荷が小さいので、距離適性が若干短めの馬でもスタミナ切れは起こしません。波乱の余地はあると思います。

2010年5月15日 (土)

ヘクタープロテクター死亡

5月12日、北海道日高郡新ひだか町のレックススタッドで死亡しました。22歳。現役時代は仏2000ギニー(G1)、ジャックルマロワ賞(仏G1)など5つのG1を含めて12戦9勝の成績を挙げた名馬でした。

早熟のスピードタイプでローカル向き、といったタイプの種牡馬でしたが、全妹に Bosra Sham(英チャンピオンS、仏1000ギニー)、半弟にシャンハイ(仏2000ギニー)が出たこと、そして初期の産駒から Limnos(日本産馬初の欧州Gレース制覇)と Shiva(同G1制覇)が現れたことにより、海外での評価は高い種牡馬でした。イギリスへレンタルされたり、オーストラリアへシャトルで渡ったりと、まさに席が温まる暇がなかったという印象です。

初年度産駒がデビューした夏は印象的でした。同期にはリズムとスキャンというミスタープロスペクター産駒の新種牡馬がおり、いずれも華々しい競走成績を持っていたので注目されていたのですが、スタートダッシュを決めたのはヘクタープロテクターでした。7月8日に産駒がデビューしてから9月3日にエイシンイットオーが小倉3歳S(G3)を勝つまで、約2ヵ月間に13戦7勝(!)。前年にデビューしたサンデーサイレンスは13戦した時点で3勝だったので、その凄まじさが分かると思います。

Mr.Prospector 系のスピードタイプなので、ローカルの2歳短距離戦では信頼できる種牡馬でした。JRAではセンターライジング(サンスポ賞4歳牝馬特別)、キタサンチャンネル(ニュージーランドT)、プロモーション(クイーンS)など8頭が重賞を勝ちました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1993109152/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1998104068/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/1994108627/

海外での種付けからは、Royal Purler(フライトS-豪G1)、Hec of a Party(AJCイマンシペイションS-豪G2)、Shanty Star(クイーンズヴァーズ-英G3)、Vanquished(GCTCザプライムミニスターズC-豪G3)などが誕生しています。
http://www.pedigreequery.com/royal+purler
http://www.pedigreequery.com/hec+of+a+party
http://www.pedigreequery.com/shanty+star
http://www.pedigreequery.com/vanquished2

代表産駒の Limnos と Shiva の兄妹は、Riverman≒Mill Reef 3×3に加え、父方のプレイメイトが持つ War Admiral と La Troienne の凝縮を、母方の Mr.Busher によって継続するという教科書のような配合でした。
http://www.pedigreequery.com/limnos

母の父としてはこれまでに、ブラックエンブレム、タイセイアトム、アドマイヤメインなどを出していますが、この3頭の母はそれぞれ「ヘクター×Vaguely Noble」、「ヘクター×ダイアトム」、「ヘクター×Assert」という配合。ヨーロッパのスタミナ血脈と結びついた牝馬が母となって良駒を送り出す傾向が見られます。

2010年5月14日 (金)

『競馬王のPOG本』『POGの達人』発売

POGドラフトまであと約1ヵ月。この時期になると関連本がどんどん発売されます。執筆させていただいた『競馬王のPOG本』(白夜書房)と『POGの達人』(光文社)がすでに店頭に並んでいるようです。

『競馬王のPOG本』の「栗山ノート」では、主要種牡馬7頭(ディープインパクト、マンハッタンカフェ、アグネスタキオン、キングカメハメハ、ゼンノロブロイ、スペシャルウィーク)の注目配合馬を大公開しています。

『POGの達人(赤本)』では、恒例の「話題のドラフト有力馬クロスレビュー」と「私のオススメ10頭」、そして水上学さんとのコラボコラム「みんながディープインパクトに走るので、私、○○を独占させていただきます!」の3本立て。昨年のオススメ10頭コーナーの成績は13人中2位でした。皐月賞馬ヴィクトワールピサを指名したものの、トップの競馬総合チャンネルには及びませんでした。

どちらの本も読み応えのある内容です。お買い求めいただければ幸甚に存じます。

2010年5月13日 (木)

力のいるダートに向くコマンダーインチーフ系

12日に川崎競馬場で行われた重賞・川崎マイラーズ(ダ1600m)は、2番人気のイーグルショウが勝ちました。

父スエヒロコマンダーは、鳴尾記念(G2)と小倉大賞典(G3)の勝ち馬で、種牡馬としてはすでにイナズマアマリリス(ファンタジーS)を出しています。母ジェイドストリークは Number≒Nureyev 2×2という大胆な配合。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2004100519/

スエヒロコマンダーの父コマンダーインチーフは、英・愛ダービー馬という実績と、名種牡馬ウォーニングの半弟という良血を引っ提げて種牡馬入りしたのですが、当初かけられていた期待の大きさからすると全体的にはイマイチという成績でした。スピードに乏しく、速い脚がないという欠点があり、ダートに活路を見出す産駒も少なくありませんでした。

ただ、“種牡馬の父”としては意外に悪くなく、スエヒロコマンダーのほかにも、レギュラーメンバーが昨年の東京ダービー馬サイレントスタメン、東海ダービー馬ダイナマイトボディなどを出し、地味ながら成功を収めています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006104877/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006104820/

  コマンダーインチーフ(1990)
    スエヒロコマンダー(1995)
    │ イーグルショウ(2004)……川崎マイラーズ
    レギュラーメンバー(1997)
      サイレントスタメン(2006)……東京ダービー

力のいるダートに向いた血統といえるでしょう。

2010年5月12日 (水)

Sir Gaylord の瞬発力

ヴィクトリアマイルは、ブエナビスタとレッドディザイアの四度目の対決となります。ここまでの対戦成績はブエナ2勝、レッド1勝。それぞれの着差は1/2、ハナ、ハナですからほぼ互角です。この2頭の配合構成が似ていることはよく知られたところですが、ここであらためて振り返っておきたいと思います。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006103319/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006102929/

            ┌ サンデーサイレンス
          ┌○┘
ブエナビスタ ―――┤ ┌ Caerleon
          └○┤
            └○┐
              └ Santa Luciana

            ┌ サンデーサイレンス
          ┌○┤
レッドディザイア ―┤ └○┐
          │   └ Santa Luciana
          │ ┌ Caerleon
          └○┘

サンデーサイレンス、Caerleon、Santa Luciana の三血脈が近い世代にあります。似たような血統構成の2頭が、同じ世代にあってライバル関係にあり、しかも国際級の名馬であるというのは、あらためて凄いことだなぁと感じます。

今回の1番人気はブエナビスタになりそうです。上記の三血脈のコンビネーション以外にこの馬の配合で注目したいのは Sir Gaylord。母系にこの血を持つスペシャルウィーク産駒はよく走っており、シーザリオ、レーヴドリアン、トライアンフマーチなどがこのパターンに当てはまります。

Sir Gaylord の最大の長所は“切れ味”です。その代表産駒 Sir Ivor は、20世紀のイギリスを代表する名騎手レスター・ピゴットが「私が乗ったベストホース」といって憚らなかった名馬で、ゴール前で繰り出す瞬発力が最大の武器でした。68年の英ダービー、ワシントンDCインターナショナルは、いずれも素晴らしい切れ味を発揮して勝ちました。
http://www.youtube.com/watch?v=5ahW6RIfaqE
http://www.youtube.com/watch?v=vtCzut8FyGM

80年代のヨーロッパ最強馬ダンシングブレーヴにも、Sir Gaylord が含まれています。
http://www.pedigreequery.com/dancing+brave

母の父 Drone は Sir Gaylord の息子で、Sir Ivor と血統構成がきわめてよく似ています。
http://www.pedigreequery.com/drone
http://www.pedigreequery.com/sir+ivor

      ┌ Sir Gaylord
      │     ┌ Pharamond
Drone ―――┤   ┌○┤
      │ ┌○┘ └ Alcibiades
      └○┤ ┌ Mahmoud
        └○┘

      ┌ Sir Gaylord
      │   ┌ Mahmoud
Sir Ivor ―┤ ┌○┘
      └○┤ ┌ Pharamond
        └○┤
          └○┐
            └ Alcibiades

ダンシングブレーヴの瞬発力は凄まじいものでした。この能力の多くは Sir Gaylord-Drone から受け継いだものではないかと思います。大外一気で突き抜けた86年の凱旋門賞は衝撃的でした。
http://www.youtube.com/watch?v=hCucJx2vL-k

スペシャルウィークはピリッと切れるタイプの種牡馬ではないので、Sir Gaylord のような血が入ると弱点を補うという作用もあると思います。

ブエナビスタの配合は、08年のマイルCSを制した“上がり33秒台の女王”ブルーメンブラット(父アドマイヤベガ)とも似ています。いずれもサンデー系で、母方に Sir Gaylord、Round Table、Northern Dancer が入ります。アドマイヤベガの2代母アンティックヴァリューは、Nijinsky とよく似ている(Northern Dancer+Menow+Bull Lea)ので、さらに配合は近いですね。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2003102993/

今回のレースは、出走予定馬のプレレーティングを見ても、ブエナビスタとレッドディザイアの実力が抜けていることは明らかです。ただ、それで決まらないのが競馬。体調が整わなければ一昨年のウオッカのように負けてしまいます。帰国緒戦だけに追い切りを見ないことには印は決められません。

2010年5月11日 (火)

トライマイベスト=El Gran Senor

昨年秋に誘拐されたイタリアの種牡馬 Martino Alonso が無事発見されたそうです。事件発生から半年以上が経過していたので、関係者も最悪の事態を想定していたことは想像に難くありません。種牡馬誘拐→無事発見、という流れを目にすると、つい Shergar 生存のエイプリルフールネタを思い出してしまうのですが、今回は本当のようです。

Martino Alonso は、現役時代にイタリアのG1で2着、3着という成績。至って平凡です。種牡馬としても大きな期待は掛けられず、初年度の産駒数はわずか一桁でした。しかし、そのなかからいきなり Ramonti という国際級の大物が出現しました。通算20戦12勝(2着5回)。レコード勝ちしたクイーンアンS(英G1・芝8f)のほか、サセックスS(英G1・芝8f)、クイーンエリザベスS(英G1・芝8f)、香港C(港G1・芝2000m)、ヴィットリオディカプア賞(伊G1・芝1600m)など数多くのGレースを制しています。いまのところ Martino Alonso 産駒の大物は Ramonti だけで、ほかの産駒とはレベルが違いすぎるので鬼っ子というべき存在です。

Ramonti は、トライマイベスト=El Gran Senor 4×2という大胆な全きょうだいクロスを持っています。伝えるものが弱い血は、これぐらい思い切った配合をしないと大物を出せないということでしょう。
http://www.pedigreequery.com/ramonti

トライマイベストを持つ日本の代表的な種牡馬といえばキングカメハメハ。初年度産駒のナサニエルは、フサイチホウオー、トールポピーの半弟にあたる良血で、全日本2歳優駿(G1)で2着となりました。この馬はトライマイベスト=El Gran Senor 4×3です。今年の2歳では、ツルマルグラマーの2008がトライマイベスト=El Gran Senor 4×3。インディゴワルツの2008がトライマイベスト≒ロッタレース4×2です。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008101894/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103089/

2010年5月10日 (月)

NHKマイルCはダノンシャンティ

いくら馬場がよかったとはいえ、1000mを57秒9で通過しながら上がりを33秒5でまとめるのですから、展開に恵まれた勝利というわけではありません。

同日の古馬準OP(芝1600m)を勝ったカウアイレーンは、1000mを60秒9で通過(ダノンシャンティより3秒遅い)し、上がりは33秒3(わずか0秒2差)でした。ダノンシャンティの能力の高さがうかがい知れます。どんな流れでも33秒台で上がれる能力は他陣営からすれば脅威でしょう。

『web競馬王』の予想は◎△○で馬単2680円、3連単17180円的中。ただ、ウマニティでは欲を掻いて点数を絞ったため失敗しました。予想文を転載します。

「◎ダノンシャンティは『フジキセキ×マークオブエスティーム』という組み合わせ。母シャンソネットはシングスピールやラーイの半妹にあたる良血。2代母グローリアスソングはカナダ年度代表馬、米最優秀古馬牝馬。『ヘイロー3×3』だけが目立つ単純な配合に見えがちだが、じつはそうではなく、アンガール≒エルバジェ4×4、ミランミル5×6など、重厚な血が全体をしっかり支えている。それ以外にもダンスインザダークなどに見られるブルースウォーズ=ブルーヘイズの全兄妹クロスを持つなど、底力を感じさせる緻密な配合構成で見どころがある。母の父マークオブエスティームから受け継いだ切れ味は非凡。前々走の共同通信杯は展開のアヤで2着に敗れたが、前走の毎日杯は上がり33秒4、左ムチ一発で楽々と差し切った。レース前半は掛かり気味だったのでペースが速くなるのはプラスだろう。東京芝マイルはほぼベスト条件なのでしっかり結果を出すはず。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007105709/

英気に満ちた末脚は爽快の一語。フジキセキがついに傑作を送り出したという感が強いですね。共同通信杯、毎日杯、NHKマイルCと◎を打ち続けたのは、それだけ配合を高く評価していたからです。ちなみに『競馬王』誌上では、毎日杯の前からNHKマイルCの本命馬として挙げていました(5月号の亀谷敬正氏との巻頭対談をご参照ください)。

ダノンシャンティと人気を分け合ったサンライズプリンス(4着)は、強さは認めても▲しか打てませんでした。そのフットワークは、よくいえば力強く、悪くいえば緩慢です。スローから平均ペースの切れ味勝負になればダノンシャンティに歯が立たず、ハイペースでもマークされたら苦しいだろうという見立てでした。したがって、同じく切れ味に特長のあるリルダヴァルを○とし、サンライズは▲にとどめました。レース後、横山典弘騎手はいみじくも「タメて切れるタイプでもない」(ラジオNIKKEI競馬実況web)と語っています。もっとも、今回はあまりにもハイペースだったので、潰れたのは仕方のないところでしょう。

それにしても、今年の3歳牡馬はレベルが高いですね。ヴィクトワールピサ、ペルーサ、ダノンシャンティの3頭は世界のどこへ出てもトップを争える逸材でしょう。今年のダービーは空前絶後の大決戦となりそうです。

2010年5月 9日 (日)

プリンシパルSはルーラーシップ

デビュー以来、さまざまなアクシデントに遭遇し、回り道をしながら、それでもしっかりとダービーへのパスポートを手にしたのですから大したものです。『web競馬王』の予想では◎を打ったものの、2着のクォークスターが抜けてしまい不的中。予想を転載します。

「◎ルーラーシップは『キングカメハメハ×トニービン』という組み合わせ。母エアグルーヴは現役時代に年度代表馬に輝いた女傑で、繁殖牝馬としてもアドマイヤグルーヴ(エリザベス女王杯2回)、フォゲッタブル(ステイヤーズS、ダイヤモンドS)を出しておりきわめて優秀。父母ともにサンデーを持たない配合としてはこれ以上望めないレベルにある。キングカメハメハ産駒は東京コースを得意としており、本馬もトビの大きいダイナミックなフットワークなので、十中八九、東京コースは合うはず。出遅れて後方インに押し込められた前走は力を出し切れなかった。条件が変わった今回はいいだろう。」

手綱をとった横山典弘騎手は「フットワークが現状無駄に大きい」(ラジオNIKKEI競馬実況web)とコメント。角居勝彦調教師は「まだ体も緩いし、もう少し待ってあげたらと横山騎手から言われました」(同)。

要するにまだ未完成ということなので、ダービーではやや足りないかもしれません。しかし、今回のパフォーマンスを見てのとおり、器の大きさは歴然としています。荒削りなレースぶりで勝つ馬は得てして過大評価されがちですが、この馬はその種のハッタリ屋ではなく、やはり何物かを持っていると思います。ダイナミックなフットワークはサッカーボーイを思い出します。
http://www.youtube.com/watch?v=7nfXGPxiKBw

2010年5月 8日 (土)

京都新聞杯はゲシュタルト

08年のメイショウクオリア、09年のベストメンバー、そして今年のゲシュタルトと、3年連続でマンハッタンカフェ産駒が優勝しました。この条件がよっぽど合っているのでしょう。『web競馬王』の予想は○▲で馬連1060円を的中しました。

何度か記しているように、ゲシュタルトについては昨年の春からその配合に注目していました。『競馬王のPOG本 2009~2010』の「栗山ノート」で、“マンハッタンカフェのA級配合馬”としてピックアップした5頭(131頭から選抜)に含まれています。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007104975/

母系に Sadler's Wells を持つマンハッタンカフェ産駒には、レッドディザイア、ジョーカプチーノ、ヤマニンウイスカーといった活躍馬がいます。ドイツ血統と Sadler's Wells の相性の良さについては、4月30日のエントリーで論じていますのでご参照ください。ちなみに、今年の2歳世代には、母系に Sadler's Wells が入る配合パターンでゲシュタルトを上回るものは残念ながら見当たりません。
http://blog.keibaoh.com/kuriyama/2010/04/sadlers-wells-a.html

◎レーヴドリアンは3着。33秒9というメンバー中最速の上がりをマークしたものの及びませんでした。こういう競馬しかできない馬なので仕方ないですね。今回はペースが速くなるので届くという読みでしたが、向正面で思ったよりもペースが落ち着いてしまいました。気性が成長しないことには同じような競馬の繰り返しでしょう。

2010年5月 7日 (金)

ギリシャのサラブレッド

ギリシャ危機が世界を揺るがしています。昨晩、94円だったドル円の為替レートは、今朝起きてみると91円。未明には一時87円台をつけました。アメリカで100万ドルの馬を買うとすると、昨晩は9400万円必要でしたが、今朝は9100万円で買えるわけです。そういう意味ではお得感があるとはいえ、日本経済への悪影響が深刻なので喜んでいる場合ではありませんね。

ギリシャの競馬については何一つ知りません。ただ、昨年のちょうどいまごろ、ギリシャ出身の Ialysos というスプリンターがイギリスに遠征したことは覚えています。

Ialysos は2004年にギリシャで誕生。父 So Factual、母 Vallota は Polish Precedent の娘ですから、いわゆる持込馬です。
http://www.pedigreequery.com/ialysos

ギリシャのオールウェザーコースで7戦全勝のあとイギリスへ渡り、ヘイドックで行われた移籍緒戦(芝5ハロンのリステッドレース)を勝ったときにはニュースになりました。続くロイヤルアスコットのゴールデンジュビリーS(英G1・芝6f)はさすがに相手が強く、道悪にも脚をとられ14頭立ての12着と惨敗。しかし、続くサンダウンのスプリントS(英G3・芝5f)では巻き返して優勝しました。ギリシャ出身馬がイギリスのGレースを勝つのは史上初ではないでしょうか。Ialysos はその後、シーズン終了までに2戦し、13着、10着という成績を残しています。

Ialysos の半妹 Irida は、地元ギリシャの Filandros という種牡馬を父としています。この父系は見たことがありませんでした。
http://www.pedigreequery.com/irida2

  Teddy(1913)
   Brumeux(1925)
    Borealis(1941)
     Atromitos(1949)
      Nilefs(1966)
       Stavraetos(1971)
        Evippos(1981)
         Filandros(1994)

Borealis はディープインパクトの4代母の父でもあります。こんなラインが残っていたとは驚きです。月並みな感想ですが世界は広いですね。

2010年5月 6日 (木)

英1000ギニーは Special Duty

5月2日に行われた英1000ギニー(G1・芝8f)は、単勝67倍の Jacqueline Quest がハナ差で先頭ゴールインしたものの、進路妨害のため2着降着。1番人気のフランス調教馬 Special Duty が繰り上がって優勝しました。ゴール前の競り合いで、Jacqueline Quest は Special Duty をかなり押圧していたので、この判定は仕方がないかなという気がします。
http://www.youtube.com/watch?v=LwvParJLCdo

イギリスのクラシックレースにおいて1位入線馬が降着または失格したのは、Nureyev(80年の英2000ギニー)、Aliysa(89年の英オークス)に次いで3頭目だったと思います。Special Duty の馬主アブデュラ殿下は、ちょうど30年前に Nureyev の失格で英2000ギニーをものにした Known Fact の馬主でもありました。つまり繰り上がりによる英クラシック制覇は二度目です。ただ、06年の仏1000ギニー(G1・芝1600m)では、逆に1位入線の Price Tag が3着に降着するという憂き目にあっています。

「ヘネシー×Distant View」という組み合わせなので、いかにも一本調子のスピード馬という感じです。昨年秋にチェヴァリーパークS(英G1・芝6f)を勝ったときは、たしかに強かったものの2歳戦向きのタイプと感じたので、クラシックでは楽な戦いにはならないだろうと考えていました。今回のレースは、ニアサイドとファーサイドに馬群が二分し、ファーサイド組が全滅するという馬場コンディションのアドバンテージがあったのも事実です。
http://www.pedigreequery.com/special+duty

1位入線も2着降着となった Jacqueline Quest は、ノエル・マーティン氏の持ち馬。彼は14年前の96年に、滞在中のドイツでネオナチに襲撃され負傷。以来、手足が動かなくなり車椅子生活を余儀なくされています。降着を告げられると目に涙を浮かべていたそうです。人情としては勝たせてあげたかったですね。
http://www.youtube.com/watch?v=ygMuXQdqZT0

2010年5月 5日 (水)

英2000ギニーは Makfi

5月1日に行われた英2000ギニー(G1・芝8f)は、中団待機のフランス馬 Makfi が後半鋭く伸びて快勝しました。通算成績は3戦全勝。
http://www.youtube.com/watch?v=1UTQ3yg0HsU

父 Dubawi は、わずか1世代を残して急逝した Dubawi Millennium の忘れ形見。現役時代にジャックルマロワ賞、愛2000ギニーなどG1を3勝した名馬で、初年度産駒となる今年の3歳世代から、この Makfi と伊2000ギニー(G3)を勝った Worthadd を出しています。出足好調ですね。

Makfi は、父 Dubawi(愛2000ギニー)、母の父 Green Desert(英2000ギニー2着)、2代母の父 Irish River(仏2000ギニー)ですから、ギニーレースに向いた血統です。父が持つ Sir Ivor≒Drone のクロスを継続している(6・6×4)ほか、Mill Reef≒Riverman 5×4などもあるので、配合的にはよくできていると思います。スローペースの切れ味勝負をズバッと突き抜けたので日本向きかもしれません。
http://www.pedigreequery.com/makfi

騎乗したクリストフ・ルメール騎手は、いまや世界を代表する名手のひとりですね。今年からアガ・カーン四世殿下の主戦ジョッキーとなったので、これからさらにビッグタイトルを手にするでしょう。ただ、Makfi は殿下の所有馬ではありません。

2010年5月 4日 (火)

ケンタッキーダービーは Super Saver

まず印象に残ったのはカルヴィン・ボレル騎手の巧みな手綱捌き。ラチ沿いを通って鮮やかに抜け出しました。白い帽子、白い勝負服のゼッケン4番が Super Saver です。
http://www.youtube.com/watch?v=1HIX4SX07m8

彼はここ4年間のダービーで1、3、1、1着という成績。チャーチルダウンズは地元コースなので特性を知り尽くしています。まさに“ダービーマスター”です。07年の Street Sense、09年の Mine That Bird、今年の Super Saver に共通するのは、道中インぴったりを回り、コースロスなくポジションを上げていったこと。

Street Sense で勝った際は、3コーナーから前詰まりすることなく最内をスイスイ上昇するという、カッパーフィールド顔負けのイリュージョン騎乗でした。上空からの映像でそのコース取りの妙を堪能することができます。
http://www.youtube.com/watch?v=sS6q36Xqcps

振り返れば、チャーチルダウンズで行われた91年のブリーダーズCジュヴェナイルで、パット・バレンズエラ騎乗のアラジがああいう競馬をして勝ちましました。
http://www.youtube.com/watch?v=mYIQttbYOOs

チャーチルダウンズでは、前半飛ばしすぎると3コーナーあたりから全体のラップが落ちるので、ああいうマクリが可能になるわけですが、多頭数の競馬でインを突くというのは捨て身の覚悟が必要です。ボレル騎手は狭いスペースを突く技術と度胸がズバ抜けているのでしょう。

父 Maria's Mon にとっては、01年の Monarchos に続く2頭目のケンタッキーダービー馬。ここ半世紀で複数の優勝馬を出した種牡馬は、Bold Bidder(74年 Cannonade、79年 Spectacular Bid)、Exclusive Native(78年 Affirmed、80年 Genuine Risk)、Halo(83年 Sunny's Halo、89年サンデーサイレンス)、Alydar(87年 Alysheba、91年 Strike the Gold)に次いで5頭目となります。

Maria's Mon は Seattle Slew と相性がよく、これまでにG1を勝った7頭の産駒のうち、3頭(Wait a While、Super Saver、Latent Heat)がこのパターンから誕生しています。とくに Wait a While と Super Saver は、いずれも母の父に A.P.Indy を持っています。この2頭は、Maria's Mon 産駒の賞金獲得順で1、2位を占めており、偶然とは思えません。
http://www.pedigreequery.com/wait+a+while
http://www.pedigreequery.com/super+saver3

Maria's Mon の父の母 Uncommitted と、Seattle Slew の母 My Charmer には、いずれも War Admiral と La Troienne の強い凝縮があります。これが脈絡することで好結果を生んでいると考えられます。
http://www.pedigreequery.com/uncommitted
http://www.pedigreequery.com/my+charmer

       ┌○┐ ┌ War Admiral
       │ └○┤
Uncommitted ―┤   └○┐
       │     └ La Troienne
       │   ┌○┐
       │ ┌○┤ └ La Troienne
       └○┘ │ ┌ War Admiral
           └○┘

       ┌○┐
       │ └○┐ ┌ War Admiral
       │   └○┤
My Charmer ―┤     └ Baby League(その母 La Troienne)
       │
       │ ┌○┐ ┌ War Admiral
       └○┘ └○┤
             └ Baby League(その母 La Troienne)

Seattle Slew 産駒の A.P.Indy は、「War Admiral+La Troienne」を抱える Buckpasser を母系に持つので、上記の特長をさらに強化した形となっています。
http://www.pedigreequery.com/ap+indy

       ┌○
Buckpasser ―┤ ┌ War Admiral
       └○┤
         └○┐
           └ La Troienne

Super Saver の母系は優秀で、母 Supercharger の全妹の子には、06年のケンタッキーダービーとベルモントSで2着となった Bluegrass Cat がいます。
http://www.pedigreequery.com/bluegrass+cat2

また、2代母は本邦輸入種牡馬リズムの全妹。4代母はこれまた War Admiral と La Troienne の強い凝縮を持つ Numbered Account です。

         ┌○┐ ┌ War Admiral
         │ └○┤
Numbered Account ┤   └○┐
         │     └ La Troienne
         └○┐
           └○┐ ┌ War Admiral
             └○┤
               └○┐
                 └ La Troienne

ここまでやるか、というぐらい「War Admiral+La Troienne」の血を重ねています。しかし、アイドルアワーファームから生まれたこの血統が、現代アメリカ血統の中核を形成していることを考えれば、別段奇異なこととは思いません。むしろ保守本流、といえるでしょう。

2010年5月 3日 (月)

天皇賞・春はジャガーメイル

以前からジャガーメイルのレースぶりには疑問を抱いていました。なぜあれほど抑えるのだろうか、と。たしかに母の父はサンデーサイレンスですし、溜めればそれなりの脚は使います。ですが、やはりジャングルポケット産駒です。トップレベルを相手にディープインパクトのような追い込みは無理でしょう。

ただ、これはジャガーメイル自身にも問題がありました。右回りではときおりコーナーでモタれる癖を出し、位置取りを上げようにも上げづらいところがあったのです。前走の京都記念で初めてブリンカーを装着すると行きっぷりが良化。ブエナビスタをマークして早めに進出し、僅差の2着に食い込みました。これは大きなターニングポイントだったと思います。

ですから今回は、中団でピタリと折り合った時点で“勝負あり”でした。『web競馬王』に提供した予想は◎△で馬単4190円的中。以下に転載します。

「◎ジャガーメイルは『ジャングルポケット×サンデーサイレンス』という組み合わせ。これはフサイチホウオーとトールポピーの兄妹、トーセンキャプテン、アプリコットフィズなどが出ているニックス。父ジャングルポケットは中長距離で圧倒的に強く、芝2500m以上では連対率27.5%。これは2000年以降、産駒が当該距離で50走以上している種牡馬のなかで第2位にあたる優秀な成績。右回りで走る場合、コーナーでモタれる悪癖によってロスが生じ、左回りに比べてもうひとつの成績だったが、前走の京都記念では初ブリンカー効果によって悪癖を出すことなく、ブエナビスタと僅差の勝負に持ち込んだ。昨年の当レースは、久々の上に位置取りが後ろ過ぎたにもかかわらず5着。今年は、昨年に比べて格段に体調が良く、さらにはブリンカー効果も望める。上がりの速い競馬にも対応可能。首位争いに加わってくるだろう。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2004107116/

鞍上のクレイグ・ウィリアムズ騎手は、今回騎乗するにあたって、ジャガーメイルの全レースをビデオで研究し、以前手綱をとったことのあるマイケル・キネーン騎手にアドバイスを請うたとのこと。ここまでできる騎手はそういません。中団で折り合い、勝負どころで自然に位置取りを上げ、直線で差し切るというパーフェクトな騎乗でした。

今回の勝利はフロックではありません。3200mのスペシャリストというわけでもありません。宝塚記念も勝ち負けでしょう。

2010年5月 2日 (日)

八重桜賞はシャイニンアーサー

土曜日の東京9R・八重桜賞(3歳500万下・芝1600m)は、青葉賞と同じ藤沢和雄厩舎&横山典弘騎手のコンビのシャイニンアーサー(4番人気)が快勝しました。スタートで出遅れたときにはどうなることかと思いましたが、直線で力強く抜け出しました。予想は◎○▲で完全的中。3連単は12580円でした。『web競馬王』の予想を転載します。

「◎シャイニンアーサーは『シンボリクリスエス×サンデーサイレンス』という組み合わせ。母シャイニンルビーはクイーンC(G3)の勝ち馬で、桜花賞(G1)3着などの成績がある。前走の3馬身差圧勝は、道悪に恵まれたというよりも、初めて装着したブリンカーの効果が大きかった。シンボリクリスエス産駒は東京芝1600mで連対率36.2%と圧倒的な成績。ここでも勝ち負けに持ち込める。」

配合的にはアリゼオ(スプリングS)にそっくりです。アリゼオは「シンボリクリスエス×フジキセキ」。シャイニンアーサーは同じシンボリクリスエス産駒で、母シャイニンルビーがフジキセキの4分の3同血。さらに両者にはノーザンテーストが絡みます。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007103034/
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007102783/

          ┌ シンボリクリスエス
アリゼオ ―――――┤   ┌ サンデーサイレンス
          │ ┌○┤
          └○┤ └ ミルレーサー
            └○┐ ┌ ノーザンテースト
              └○┘

          ┌ シンボリクリスエス
シャイニンアーサー ┤ ┌ サンデーサイレンス
          └○┤ ┌ ノーザンテースト
            └○┤
              └ ミルレーサー

重心が低く、なかなかいいフットワークをする馬です。4コーナーを回って馬群から出す際、外から蓋をしてきたソールデスタンを吹っ飛ばしてびくともしませんでした。これから出世しそうな雰囲気を感じます。

2010年5月 1日 (土)

青葉賞はペルーサ

かつて七冠を制したシンボリルドルフは、まるで人間の頭脳を持っているかのようなレースぶりが印象的でした。ペルーサの走りを見ていると、なぜかその姿がオーバーラップします。知的かつスマート。欠点らしい欠点が見当たりません。青葉賞は絵に描いたような完勝でした。予想は◎△で的中。『web競馬王』の予想を転載します。

「◎ペルーサは『ゼンノロブロイ×キャンディストライプス』という組み合わせで、母アルゼンチンスターはその名のとおりアルゼンチンからの輸入馬。その全姉にアルゼンチンのチャンピオン牝馬でアメリカでもG1を制したディフェレントがいる良血。父ゼンノロブロイはアメリカ血統過多といった特徴が見られるので、ヨーロッパ血統の強い繁殖牝馬と相性がよく、それがハイペリオンをベースとしているならなおいい。本馬はこのパターン。重賞初挑戦だが素質はG1級。ここは負ける要素が見当たらない。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007102705/

青葉賞がグレードレースに昇格した94年以降、2分26秒0を切る時計で勝った馬はハイアーゲーム、アドマイヤメインの2頭。これらはダービーで3、2着という成績です。

また、2馬身以上の差をつけて勝った馬はシンボリクリスエス、ハイアーゲーム、アドマイヤメインの3頭。これらはダービーで2、3、2着です。

2分24秒3で駆け抜け、なおかつ後続に4馬身差をつけたペルーサは、ダービーで馬券に絡むことはほぼ間違いなさそうです。

ただ、勝ち時計が速いといっても、馬場状態がきわめて良かったことを考慮に入れる必要があります。青葉賞歴代1位の時計で勝ったのは04年のハイアーゲーム。2分24秒1でした。当時と今年の馬場を、他のレースの勝ち時計を含めて比べてみましょう。

                  04年     10年
未勝利戦(芝1400m)    1分23秒0  1分23秒0
八重桜賞(芝1600m)    1分34秒2  1分33秒4
500万下(芝1800m)     ――    1分46秒5
1000万特別(芝1800m) 1分46秒5    ――
1000万下平場( 〃 )   1分46秒3    ――
青葉賞(芝2400m)     2分24秒1  2分24秒3
〔勝ち馬の上がり3ハロン〕     33秒7    33秒8

馬のレベルやペースは考慮に入れていないので、本当にザックリとした比較なのですが、6年前と今年はほとんど差がありません。八重桜賞と芝1800m戦の条件別タイムを見ると、今年のほうが若干速いかな、という気もします。

04年のハイアーゲームは、1コーナーで挟まれて立ち上がる不利がありました。それをはね除けての勝利だったので、内容的にはペルーサに劣らないと思います。本番のダービーでは、1番人気のキングカメハメハ相手に果敢に勝ちに行く競馬をし、最後は垂れて3着に敗れましたが、勝負どころで無理をしなければ2着はあったでしょう。

過去、青葉賞からダービー馬が出ていないのは、馬のレベルは別として、勝ち馬がそれまでぬるい競馬しか経験していないからです。青葉賞とダービーは、同距離、同コースであってもレースの激しさがまったく違います。のちに年度代表馬となるような名馬(シンボリクリスエス、ゼンノロブロイ)でも、だからダービーでは勝てませんでした。経験不足を素質で補うことはできなかったのです。

今年のペルーサはどうでしょうか。ヴィクトワールピサの軍門に下るのか、あるいは軽やかに頂点に駆け上るのか――。これほど心が躍るダービーも久しぶりです。

競馬王 2011年11月号
『競馬王11月号』の特集は「この秋、WIN5を複数回当てる」。開始から既にWIN5を3回的中させている松代和也氏の「少点数に絞る極意」、Mr. WIN5の伊吹雅也氏が、気になる疑問を最強データとともに解析する「WIN5 今秋の狙い方」、穴馬選定に困った時のリーサルウェポン、棟広良隆氏&六本木一彦氏の「WIN5は『穴馬名鑑』に乗れ!」、オッズから勝ち馬を導き出す柏手重宝氏の「1億の波動(ワオ!)」、亀谷敬正氏&藤代三郎氏が上位人気の取捨を極める「迷い続ける馬券術」、夏競馬期間中WIN5を6戦3勝している秘訣を探る「赤木一騎の次なる作戦」など、この秋、一度ならず二度、三度とWIN5を的中させるための術が凝縮されています!! また「大穴の騎手心理」では、世界を股にかけるトップジョッキー・蛯名正義騎手をゲストにお迎えしました。その他、今井雅宏氏の「新指数・ハイラップ指数大解剖」や、久保和功氏の「京大式・推定3ハロン」など、盛り沢山の内容となっています!!