伊達秀和氏死去

血統派のオーナーとしても知られた伊達秀和氏が亡くなりました。81歳。昭和20年代に馬主となり、以来50年以上の長きにわたって第一線で活躍されました。主な所有馬は、アローエクスプレス、ファンタスト、ブロケード、パーシャンボーイ、プリモディーネなど。

中長距離が競馬の主役だった時代から「私はマイラー指向です」と公言し、スパニッシュイクスプレス、イエローゴッド、テュデナムといったスピード豊かな種牡馬や、名牝系の祖となったソーダストリームを輸入しました。

『競馬四季報』(77年秋号)に「アローエクスプレスとそのファミリー」という特集があるのですが、そのなかで伊達さんはご自身の血統観を語っています。いくつか抜粋してみます。

「私はよくいうんだけど、競走馬の場合、スタミナとスピードのうち、どちらを重視するかといったら、それは絶対スピードだと。スピードこそが競馬の基本だという考えを持ってますからね。」

「ファミリーというのは自らつくり出すものでね。どんな名血だってこつ然としてできるんではなくて、つくられるものである。最初から名血というのはないんだと。」

「種馬の選択っていうのも難しくてね、外国で走ったからといって日本で走るとは限らんし。やはりその国に合ったものを探さなきゃいかん訳ですよ。いい例がネヴァーセイダイでしょ。欧米じゃ、あの程度の種馬ならたいしたことないですが、だけど日本は別。ネヴァーセイダイの子というだけで走る。なにしろ、コントライト級の種馬から、テンポイントが出るんだから。みんな同じ系統の馬をワッと入れる割には、この系統的な相性というのに、意外に無関心なんだな。だから私は、外国の成績が良くても、日本に向かない系統は避けますね。」

伊達さんが輸入した馬の配合を見てまず感じるのは、その質の高さと品の良さです。そして、アガ・カーン血脈への傾倒の跡がうかがえます。ソーダストリームはアガ・カーンの牝系から出た馬ですし、その母 Pangani は Lady Josephine 3×5です。スパニッシュイクスプレスやイエローゴッドを購入したのは Nasrullah への信頼でしょう。馬選びの視線に、スピードを重んじる哲学が感じられます。
http://www.pedigreequery.com/pangani
http://www.pedigreequery.com/spanish+express
http://www.pedigreequery.com/yellow+god

スパニッシュイクスプレスとソーダストリームの間に誕生したアローエクスプレスは、伊達さんの血統理論の結晶といえるもので、現役時代に朝日杯3歳Sなど4つの重賞を制したほか、1980、81年にリーディングサイアー(中央+地方)となりました。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a000afe/

もし伊達さんが馬と関わっていなかったら、日本の競馬は現在と違ったものになっていたでしょう。ご冥福をお祈りします。

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